ダルユーイン '89(マクダフ・インターナショナル)
ザ・ゴールデン・カスクの一本。14年もの、54.5度のカスク・ストレングス。312本のリミテッド・エディション。
ボウモアとラフロイグのディスティラリー・マネージャーを歴任したジョン・マックドゥーガルのセレクション。ノー・チル・フィルターのフルフレーバー・シリーズで、同時頒布はボウモア、ダルモア、バルブレアの四種類。
フランスのジャン・ボワイエ社、アデルフィ社、クライズデール社と共に傑出したボトラーで、稀少な蒸留所のボトルを陸続と頒している。とりわけ、コストパフォーマンスに傑れているのがマクダフ・インターナショナル社であろうか。
ダルユーイン '71(ゴードン&マクファイル)
コニッサーズ・チョイスの一本。40度。
マルティニック・ラムの香りを持つフル・ボディ。ホットな辛口でアフター・テイストに特徴あり。フィニッシュが長く、スモーキーからビターへと次第に変化していく。
辛口のモルト・ウィスキーの多くはブラック・ペッパー系の辛さだが、本品は蕃椒、それも一味唐辛子のぴりぴり感を持つ。タリスカー同様、ジョニー・ウォーカーの核となる原酒モルト。
ダルユーイン'80(マキロップ)
マキロップ・チョイスの一本。19年もの、55.2度のカスク・ストレングス。
マスター・オブ・ワインの称号を持つグラスゴーの瓶詰業者。アンガス・ダンディ社傘下のカンパニーであり、モンゴメリー社とは兄弟会社になる。「マキロップ・チョイス」の名でコレクションが頒されている。同コレクションには稀少なものが多く含まれる。例えば、リンリスゴウ '82は現在手に入る唯一のセント・マクデランである。
本品はダルユーインのボトルのなかではひときわ傑出する。
ダルユーイン '80(サマローリ)
18年もの、45度。390本のリミテッド・エディション。
サマローリ社は伊太利亜ブレシアの酒商。スプリングバンク蒸留所と親しく、ボトラーのケイデンヘッド社とその子会社ダッシーズ社と太いパイプを持ち、オリジナルのヴァテッド・モルトを頒している。
同じイタリアの酒商インター・トレード社同様、ボトルには檻が多く含まれる。樽の個性、ひいてはウィスキーの香味の神秘を識るに最適。本品はハイランド・パークやテナニャックと共にコンディションがすこぶる良く、美味。45度とのやや低いアルコール度数を感じさせない緊迫感あり。
ダルユーイン '80(アデルフィ)
21年もの、56.1度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。
アデルフィ蒸留所は1826年グラスゴーにて設立。1880年にはスコットランドでもっとも大きな蒸留所のひとつになった。しかし、20世紀に入り景気が後退、生産調整のために多くの蒸留所が閉鎖された。アデルフィ蒸留所も時局を免れること能わず、1902年に閉鎖。ボトリングラインと倉庫のみ使用されるという状態で1960年まで建物は残っていたが、その後取り壊された。
蒸留所の最後のオーナーであったアーチボールド・ウォーカー氏より数えて四代目にあたるジミー・ウォーカー氏はアデルフィ蒸留所の再興を願い、1993年にエディンバラでインデペンデント・ボトラーを設立。
アデルフィ社は低温濾過すなわちフィルターの無使用と無着色のカスク・ストレングスを専門とする。ラベルとボトルのデザインはスコットランドのグラハム・スコットの手になるもの。すべてが一樽のみのシングル・カスクのため、イギリスでは主にメール・オーダーで頒布。信頼できる瓶詰業者のひとつだが、わが邦での評価は異常なまでに高い。
ダルユーイン '79(シグナトリー)
カスク・ストレングス・コレクションの一本。シェリー・バットの25年もの、51.4度のカスク・ストレングス。509本のリミテッド・エディション。
シグナトリー社はゴードン&マクファイル社、ケイデンヘッド社についで三番目のボトラーとして1988年にリースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務を行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲まれない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」またドイツ向けに「ザ・シングル・シングル・モルト・コレクション」「ナチュラル・ハイ・ストレングス」をボトリングするなど、多彩なコレクションで識られる。ラベルにはカスク・ナンバーやボトル・ナンバー等、詳細が著されてい、樽がもたらす個々の性格の違いを楽しむことができる。同社のカスク・ストレングスにあって、寸胴型丸瓶のシリーズは逸品揃い、ぜひ味わって頂きたいモルト・ウィスキーである。
なお、カスク・ストレングス・コレクションはノー・チル・フィルターのフルフレーバー・シリーズで、寸胴型丸瓶のシリーズに変わるコレクション。
ピティヴェアック '86(イアン・マクロード)
チーフテンズの一本。バーボン・ホグスヘッドの14年もの、43度。4樽、1074本のリミテッド・エディション。
ディスティラリー・ボトルのオイリーな舌触りはなく、きれのよさがそのままホットなアフター・テイストへ繋がって行く。
スカイ島の豪族、マクロード家のイアン・マクロードがオーナー、エディンバラ近郊のブロックスバーンに本拠地を置く。同社はイングランドでの「グレンファークラス」の発売元。「タリスカー」をベースに用いたブレンデッド・ウィスキー「マリー・ボーン」「アイル・オブ・スカイ」や「クイーンズ・シール」で識られる。
同社が関与するボトルについて一言。蒸留所名を記載できるボトルはイアン・マクロード社、蒸留所名を記載できないボトルはスコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社というように区分している。
1999年に頒された「チーフテンズ・チョイス」は2001年に「チーフテンズ」と変更。ラベル、パッケージ共に一新、フルラインナップとなった、初入荷は14点。ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」と共に目の離せないシリーズとなった。
ピティヴェアック12年(UDV)※
花と動物シリーズの一本。43度のディスティラリー・ボトル。
ダフタウン蒸留所に隣接す。仕込用水からポット・スティル、熟成庫までを共にする、謂わば弟でありながら、兄とは異なりすこぶる個性的な酒を造っていた。蒸留所は93年に閉鎖。
自己主張が強く、ダルユーインのようなホットなアフター・テイストを持つ。ピリピリ感を伴うフィニッシュが比較的長く続く。同じ飲むなら、ダフタウンよりこちらがお薦め。
ただし、ディアジオ社のボトルはことごとくシェリー香が強い。美味いといえば美味いのだが、蒸留所独自の個性が歪められているように思う。従って、ホットなアフター・テイストを楽しむならコニッサーズ・チョイスがお薦め。
花と動物シリーズに続き、レア・モルトも廃止、ディアジオ社はどこへ行くのかと思っていたが、個々の蒸留所のディスティラリー・ボトルに力を入れていくとか。もともと、花と動物シリーズはディスティラリー・ボトルを持たない蒸留所の売店での看板商品として開発されたのでなかったのか。ならば、すべての蒸留所にディスティラリー・ボトルを持たせるのかしら。
ピティヴェアック '93(ゴードン&マクファイル)
コニッサーズ・チョイスの一本。14年もの、43度。
現在のところ、最も新しいピティヴェアックのボトル。レッド・ペッパーを思わせる強烈なフィニッシュを味わうには本品が最適。以前のボトルより、はるかに過激な香味を持つ。
ゴードン&マクファイル社は1895年、当初食料品店としてエルギンで創業。ウィスキー産業がまだブレンデッド中心の頃から同社は世界に向けてボトルを輸出、モルト愛好家を魅了してやまなかった。謂わば独立瓶詰業者のさきがけであり、今日のモルト・ウィスキー人気の蔭の立て役者。1992年、ベンローマック蒸留所をユナイテッド・ディスティラーズ社より買収。豊富な在庫を用い、「コニッサーズ・チョイス」「マクファイルズ・コレクション」「マクファイル・プライベート・コレクション」「スピリッツ・オブ・スコットランド」「スペイモルト」「レア・オールド」等、多くのコレクションを頒している。
ピティヴェアック・グレンリヴェット '85(ケイデンヘッド)
オーセンティック・コレクションの一本。バーボン・ホグスヘッドの16年もの、57.3度のカスク・ストレングス。限定192本のシングル・カスク。
本品以降、ケイデンヘッド社はピティヴェアックをボトリングしていない。スプリングバンク蒸留所のブレンド・ウィスキー開発に伴って、ケイデンヘッド社はボトラーとしての役目を終えつつある。残るボトラーはダグラス・レイン、シグナトリー、ゴードン&マクファイル、ダンカン・テイラー、イアン・マクロードの五社を中心に再編成されてゆく。
グレンキンチー10年(UDV)※
クラシック・モルト・シリーズの一本、43度のディスティラリー・ボトル。
ローランド・モルトの特色をよく備え、酒質は軽く、癖の尠ない辛口で飲みやすい。けだし香りが豊かで、入門編として格好。ヘイグのキー・モルト。
柔らかな燻香と微かな磯の香が持ち味。こぢんまり纏まった巧緻な味わい。
フィニッシュは最初はドライ、次第にスパイシーに変化する。蕃椒の辛さ。
グレンキンチー・アモンティリャード '86(UDV)※
ザ・ディスティラーズ・エディションの一本、43度。
ザ・ディスティラーズ・エディションにはオーバン、ラガヴーリン、クラガンモア、タリスカー、ダルウィニーの六種類のダブル・マチュアードがあり、各々異なる仕上げになっている。本品はフィニッシュにアモンティリャードのシェリー・カスクを用う。
アモンティリャードにしてはやや甘口に過ぎる気がする。モスカテル・シェリー樽をフィニッシュにもちいたカリラがその痕跡を抑えているのと比して、まるでポート樽のような甘味を持つ。いささかの抵抗感あり。
他にフレンド・オブ・クラシックも頒布されている。
グレンキンチー '82(スコッチ・モルト・セールス)
ディスティラリー・コレクションの一本。フィノ・シェリー・カスクの18年もの、62.5度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。
スコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ、すなわちイアン・マクロード社の樽をボトリング。リリースはスコッチ・モルト・セールス社。
爽やかな若草にシトラスの香り、オークの甘さを感じさせるミディアム・ボディ。ドライでスパイシーなフィニッシュの中にごく僅かなピート香。タリスカー、グレン・スコシアと共に、ディスティラリー・コレクションのなかでは秀逸。
そういえば、タリスカーもフィノ・シェリー樽を用いている。オロロソ・シェリー樽では避けられない渋味がフィノ・シェリー樽では抑制される。シェリー酒の持つデリカシーを味わうにはフィノ・シェリー樽に限られるようである。
グルーミング '73(ダグラス・レイン)
ディレクターズ・セレクションの一本。27年もの、50度のプリファード・ストレングス。318本のリミテッド・エディション。
グレンキンチーはディアジオ社の看板商品のため、グルーミングのブランドでボトリング、中身はグレンキンチー。前記スコッチ・モルト・セールスのボトルを含めてボトラーズ・ボトルはわずか二種類しか頒されていない。
アードベッグ、ポートエレン、オーバン、クラガンモア、オスロスク等、ダグラス・レイン社の長期熟成品と同様、香り、味、フィニッシュは共に絶品。一度は味わっておかなければならない一本である。