免許を取得してホンダXL250を購入。四輪の方は金がなかったので丸一年はペーパードライバーだった。やがてトヨタの初代カリブ1500を購入。3年後の1992年、品川さんに運転を教えていて事故、カリブは廃車になり、代わりにトヨタのチェイサー2000GTを弁償していただく。
この間、94年にですぺら開店、99年に東京へ移転。11年間18万キロ乗り継いだチェイサーを廃車。2003年からインプレッサ、マスタング(追突されて廃車)、ボルボ850(追突して廃車)、ボルボS80等を乗り継ぐ。
このうち、カリブ、インプレッサ、ボルボ850の購入価格は5万円、マスタングは木村さんから頂戴したもの。わたしにとって車は北海道へ行くための足。よってカリブ、インプレッサ、ボルボ850はバンタイプ、かつ前の二者は四駆。
要するに足であって乗りたい車になんぞただの一度も乗っていない。と云うよりも車なんぞ走ればよいとしか思っていない。こだわりがあるのは自転車やオートバイの方かもしれない。北海道での長期にわたるキャンプ道具を積むために二輪にはさまざまな積載方法を試みた。CBX125にはBMWのキャリアを溶接し、二輪としては最大の積載量を持たせた。
四輪と比して二輪の走行距離は圧倒している。XL以外にもホンダCX400、BMW-R100RS、BMW-K100RSと乗り継いだが、なんと云っても前記CBX125カスタムは12万キロを、ヤマハジョグ49ccは15万キロを乗り回した。二輪の12万キロは四輪の24万キロに相応する。
このまま身体が落ち着けば、もう一度125ccの原付きバイクで北海道へ行きたいと思っている。夏であれば、10万円で1箇月以上過ごすことが可能である。原動機付き自転車だとフェリー代は半額で2000円ほどで済む。
北海道で舗装されているのは幹線道路だけである。にもかかわらず、皆さんはこぞって大型バイクでやってくる。従って、海沿いと富良野、美瑛を走って終わりである。昔、セローという225ccのバイクがあった。林道を走るにはあの大きさが上限である。大型はおろか、中型で林道を走る猛者がいれば拍手喝采したくなる。それほどに、北海道の林道は狭隘かつ線形不良な砂利道ばかりである。たまにジムニーが間違えて這入ってくるが、底がつかえて動かれなくなっている。身動きできなくなったジムニーを助けるのはわれわれライダーの仕事である。
「知らない街や自然を見聞きし、バイクで駈けめぐり、北海道の見知らぬ大地の匂いに噎せた日々を想い起こす。小水の魚となったいまも、雨とともに、風とともにあった幾多の野営場が頭のなかをよぎる。わたしはなんという贅沢を味わってきたのだろうかと。深夜の病院のラウンジで幹郎さんの真似をしてデミタス珈琲をゆっくり啜る。ささやかな自由、そしてささやかな苦味が激痛のように口のなかを刺す。なぜか涙が濫れだしてとまらない」とかつて掲示板へ書いた。古平町の「白鳥古丹」の碑の前で佇んだ折、免許を取得したことを、車に乗られることを感謝した。
ああ麗しい距離(デスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景・・・・・
悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ)。