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2007年07月 アーカイブ


2007年07月11日

身勝手  | 一考   

 金曜日に比呂さん、日曜日にりきさんと土屋さんの訪いあり。比呂さんとは終電を乗り過ごしての酒盛りとなった。この日、比呂さんの来訪に間に合わせるべく彼の友人が早朝から拙宅の大掃除にチャレンジしてくださった。七年余にわたって敷きっぱなしの電気カーペットの除去にはじまり、夜の七時には拭き清められた畳のうえに薄縁が敷かれた。なにがどこへどのように片付けられたかは定かでなくなったが、藺草の匂いはその喪失感を補ってあまりある。明日のために生きているのではないと知りつつも、明日の身辺の急激な変化をひとは厭う。その保守性は一種の動脈硬化であり悪性腫瘍ですらある。生活習慣病なら油断大敵身の用心に如くはない。そのご友人にはいくら感謝しても言葉が追いつかない、いっそこのまま最期を看取っていただきたいような心持ちである。穏やかな死を指して畳の上で死ぬと言う、それを察してか、比呂さんが座しての第一声は「畳が見える」であった。
 りきさんと土屋さんに来ていただいたのは、五月初頭にはじまる深痛切実なる問題の解決をはからんとの考えからであった。余計な世話と知りつつも六月に入ってから掲示板で書きつづけてきた案件でもある。肝胆を披いての話し合いは難事を容易に解きほぐす。小一時間で要点は解明され、りきさんはお好み焼きを頬張り、土屋さんと私はシェリー酒を傾ける。昼過ぎから終電までの大層な長話となった。脳軟化症を患い、食欲の権化と化すのが厭がらせの年齢だが、私の場合は食のかわりの酒であろうか、いずれにせよ食らひ倒れの落花狼藉であるに違いはない。諄いはなしに相槌を打たれた両氏に感謝する。懊悩悔恨すべしと思い、月曜日は閉店後はじめて酒を断った。

 掲示板心得の一は、ひとを励ますのが目的のときは酷い書き込みをし、そうでないときは誰のことを書いているのか分からなくなるように修辞を施す、にある。いまから書くことがどちらに相当するのかは書きはじめてみないと分からない。
 個々のひとの厚志に縋って露命を繋いできた。従って、個々のひとに感謝こそすれ、恨みつらみはなにもない。それ故、店で文学のはなしだけは振らないでいただきたいと再三にわたって表明してきた。その理由は「謝意」で書いた「私には表向きと内向きとのあいだに垣根がない。常に基本的な方針や原則を擬えて生きてきた」にある。そしてその原理原則とは「閉店サービス」で書いた「書き物は個のはかなごと」であり、「断碑」で書いた「ひとは新陳代謝であり、存在することになんらの意味も意義もない」である。あとは悉くが重語法であって、「ひとを啓蒙する識見や智力を持ち合わせない」と書いたのは事実である。
 啓蒙を論争に置き換えても消息は同じである。早いはなしが持ち合わせは私にとっての率先事項のみで、他の事項にはなんの興味も抱かれないのである。要するに、意を違えるひと、旧慣温存を了とするひと、言い換えれば存在することや文章を著すことに意味や意義を見出そうとするひととは極力話したくないのである。
 繰り返すが、属性についてならともかく、現象や風俗としての文学にはいささかの興味もない。そしてなにが現象や風俗に相当するのかについては散々書き散らかしてきた。私のなかにあって文学は混看すべからざるものとして聳ってある。


2007年07月04日

夏休み  | 一考   

 「冷蔵庫に入れきれなかった日本酒を」飲み干し、もっか冷蔵庫に収納した日本酒を片端から片づけている。二十四日からの十日間でビール二ケースと五本の一升瓶が空になり、残りは二本、そのあとは焼酎が控えている。さらに無用になったウィスキーが数十本鎮座している。肴は冷凍庫二本分あって、こちらも到底食べ尽くせる量ではない。飲んでは寝、起きては酒を繰り返す夏休みに、うれしい悲鳴をあげている。「ご苦労だった」(?!)搬出組のみなさんをお誘いしようかと思っている。

 ですぺら掲示板を全部読んだという二人目の奇特なひとが現れた。乞われるがままに註釈を加えているが、すでに六日を数える。曖昧なものに対するはなし、目に見えないメタフィジックな話はとりわけ私の好むところである。酒を飲みながら、ひたすら喋りつづけている。
 一昨日はそのひとに車を西麻布まで回送していただき、久しぶりにスーパースタジオを訪ねた。過日ツール・ドゥ・フランスを上梓してくださった斎藤さんが営むデザイン会社で、読売時代からの付き合いである。ですぺら赤坂店をコーディネートしてくださった方でもあり、不本意な結果に終わったことを謝りに行ったのである。
 千駄ヶ谷で活鱧の湯引きと鰯、鮎などを馳走になりながら、営業方針の拙さを語り合った。モルト・ウィスキーを輝かせようと思うのなら食べ物は置くべきではなかった。なによりも食べながら飲めば、酒の香味はまったく分からなくなる。酒通は飲んでいる横で食されるのを一番嫌がる。二番目に嫌がるのが横でのお喋りである等々、痛いところをさんざん突かれた。モルト・ウィスキーは庶民が飲む酒ではない、コニャックのアーリーランテッド同様、超高級なものなのであって、しかるべき演出がなされなかったことが最大の敗因である。あれでは食堂かダイニングバーかショットバーかの判断がつかない。そもそも、モルト・ウィスキーを飲んでいる傍でチューハイを出したりお好み焼きを出すなど、なにを考えているのかと叱責された。
 言われるまでもなく、こころを傷めてきたことばかりである。それが理由でやる気をなくし、パソコンにしがみつくことになってしまった。相方が腹を立てたのも私の職場放棄に理由の過多があった。「みすじ通りの新規出店が間違いなく最後の機会になる、こころせよ」とのありがたいお言葉に返す言葉もなく悄悄と帰路についた。

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