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2008年09月 アーカイブ


2008年09月27日

カイワリ入らず  | 一考   

 下田のカイワリは入手かなわず、本日は手ぶらです。カンパチ、かつを、平目、目鯛、ブリなどがあって、その順で活かっていたのですが、カンパチは食する気もなくやめました。


2008年09月26日

ですぺらモルト会解説  | 一考   

01 グレン・マレイ8年※
 43度の旧ディスティラリー・ボトル。2000本のリミテッド・エディション、80年代前半の蒸留という触れこみで出回った。
 1980年代ものと比してラベルに相違あり、イタリア市場向けのボトリングでないだろうか。いずれにせよ、「ワイン・メローイング・シリーズ」以前のストック商品。
 大麦の香り、フレッシュでソフトな風味。ライトな口当たりが印象的。ロングモーンがクラシックなら、グレン・マレイはモルト・ウィスキーの軽音楽。

02 グレン・マレイ・シャルドネ※
 40度のディスティラリー・ボトル。ノン・エイジだが7~8年熟成のモルト。
 フレッシュで軽く、ソフトで飲みやすいモルト。言い換えれば、個性に貧しく、パンチに欠ける。その個性を補うにワイン樽をフィニッシュに使用。本品はブルゴーニュの白ワイン主要品種シャルドネのリフィール・カスクを用う。
 ブレンダーの間では評価が高く、ほとんどがブレンド用に出荷されていたが、最近では12年物を中心にシングルモルトが数種類販売されている。
 カスク由来のシトラス、バナナ、蜂蜜、レモン風味があり、第一級の食前酒として人気がある。

03 グレン・マレイ・シュナンブラン12年※
 40度のディスティラリー・ボトル。
 上記と同様、シュナンブラン種のワイン樽をフィニッシュに用う。モルトの癖のなさが、逆に樽由来の果実味を際立たせている。他に16年ものもある。ウッドフィニッシュはグレンモーレンジ社のお家芸だが、本品はそのグレンマレイ版。
 なお、シェリー樽を用いたマネージャーズ・チョイスも頒されている。エド・ドットソンが特別に樽を選んだ限定シリーズで、サインとナンバリングが手書きで記載されている。高価だが美味なカスク・ストレングスである。

04 グレン・マレイ '89(シグナトリー)
 シェリー・バットの9年もの、59.5度のカスク・ストレングス。限定640本のシングル・カスク。
 インデペンデント・ボトラーのボトルでは加水タイプがイタリアのドナート社から、ケイデンヘッド社、シグナトリー社、ブラックアダー社、マキロップ社、マクダフ・インターナショナル社のザ・ゴールデン・カスク、SMWSからはカスク・ストレングスが頒布されている。グレン・モーレンジの姉妹会社だけあって、ボトラーには滅多に売らないようで、極端に少ない。
 上記マネージャーズ・チョイスと共に、本品は一押し。

05 グレンロセス '90(シグナトリー)
 アン・チルフィルタード・コレクションの一本。シェリー・バットの11年もの、46度。842本のシングル・カスク。
 シグナトリー社は1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」がある。ラベルにはカスク・ナンバーやボトル・ナンバー等、詳細が著されてい、樽がもたらす個々の性格の違いが愉しめる。
 なお、現在頒されているカスク・ストレングス・コレクションはノー・チル・フィルターのフルフレーバー・シリーズで、寸胴型丸瓶のシリーズに変わるコレクション。

06 グレンロセス '90(マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。シェリー・カスクの11年もの、43度。
 ダグラス・マクギボン社は1949年の創設。創業者は現在のオーナーの祖父にあたる。祖父はアイラで水没した蒸留所、ロッホインダールとポートシャーロットのマッシュハウスの責任者。現オーナーのスコッチウイスキーへの愛情とこだわりは、研修生としてブルイックラディ蒸留所で働いていた時代に育まれ、頑なにノーカラーリング、ノーチルフィルターリングを貫いている。ラベルの左側には彼らのシングルモルトウイスキーへのこだわり、そして右側にはテイスティングノートが著されている。春夏秋冬と蒸留したシーズンによって異なるラベルカラーと風景画を配している。

07 グレンロセス8年(ゴードン&マクファイル)
 マクファイル・コレクションの一本、40度。
 ゴードン&マクファイル社は1895年、当初食料品店としてエルギンで創業。ウィスキー産業がまだブレンデッド中心の頃から同社は世界に向けてボトルを輸出、モルト愛好家を魅了してやまなかった。謂わば独立瓶詰業者のさきがけであり、今日のモルト・ウィスキー人気の蔭の立て役者。1992年、ベンローマック蒸留所をユナイテッド・ディスティラーズ社より買収。豊富な在庫を用い、「コニッサーズ・チョイス」「マクファイルズ・コレクション」「マクファイル・プライベート・コレクション」「スピリッツ・オブ・スコットランド」「スペイモルト」「レア・オールド」等、多くのコレクションを頒している。1995年にボトリングされた「100周年記念ボトル」は総じて樽の選択がよく、美味なものが多いのでお薦め。また、「コニッサーズ・チョイス」は各地の蒸留所のモルト・ウィスキーを網羅、ユナイテッド・ディスティラーズ社の「クラシック・モルト・シリーズ」と共に入門編として最適。

08 グレンロセス '89(ウイルソン&モーガン)
 バレル・セレクションの一本。シェリー・ウッドの10年もの、46度。
 ウイルソン&モーガン社は古くからエディンバラに拠点を置きさまざまな樽をリリースしてきたイタリア資本の会社。謂わば、イタリア系ボトラーズ・ブランドの「はしり」ともいえる老舗で、ムーン・インポートやサマローリよりも幅広い支持を受けている。バレル・セレクションの名でコレクションを頒し、イタリア国内の三ツ星レストランやバーなどではよく知られた瓶詰業者となっている。

09 グレンロセス '87(ベリー・ブロス&ラッド)※
 11年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
 1698年創業のベリー・ブロス&ラッド社は、カティーサークやブルーハンガーのプロデューサーとしても有名なロンドンの老舗酒商で、18世紀から現在までロイヤルファミリーにワインを供給している名門。マスターオブワインの資格者を常時雇用し、秀逸なワインやモルト・ウィスキーをベリーズ・オウン・セレクションとして販売。
 ロンドンのセントジェームスストリートにある本店は18世紀に建てられた古い建物で、香港のコーズウェイベイのリー・ガーデン(Lee Gardens)内に支店がある。セントジェームズストリートはホワイト・ブルックス、ブードルズといった古くからのジェントルマンズクラブが点在し、ジェントルマンの聖地(クラブランド)でとなっている。またセントジェームズパレスにも近く、同時にロンドンのクラフトマンシップの中心地でもある。通りの南側には8軒の老舗が集まっている。靴のジョン・ロブ、帽子のジェームズ・ロック、薬局のD・R・ハリス、銃砲のウイリアム・エバンス、世界最古の葉巻商ジェームズ・J・フォックスとロバート・ルイス、そしてワイン商のベリー・ブロス&ラッドとジャステリーニ&ブルックスである。

10 グレンロセス '87(ベリー・ブロス&ラッド)※
 15年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
 ローゼス地区を代表する食後酒。ブレンダーの間で夙に高い評価を受ける。カティサーク、フェイマス・グラウスの原酒モルトのひとつ。レーズンの香り、シェリー酒の風味。こくに奥行きがありオイリー、シルクのようにスムース。柔らかい甘味が残るフィニッシュ。

11 グレンロセス '82(ベリー・ブロス&ラッド)※
 15年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
 グレンダランと比してクリーム・ブリュレを思わせる香りが濃厚、プリンにつきもののカラメルを舐めるような甘さがある。本品は蒸留所元詰めのグレンロセスの定番。実に多くのヴィンテージが頒されている。72年以降は入手可能だったが、現在ではベリー・ブラザーズ&ラッド社の手を離れた。

12 クレンロセス '89(ジェームズ・マッカーサー)
 オールド・マスターズの一本。バーボン・カスクの11年もの、64.7度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。
 ジェームズ・マッカーサー社は1982年、エディンバラで創業したボトラー。主として、閉鎖された蒸留所のモルト・ウィスキーを取リ扱う。他に「ファイン・モルト・セレクション」等がある。


2008年09月24日

カイワリ  | 一考   

 鯵はムロアジ、オニアジ、マアジ、メアジ、クボアジ、ヒシカイワリ、カイワリ、イトヒキアジの各属に属する四十を超える種が日本近海に分布し、そのうちカイワリ属だけで三十種を超える。ただし、多獲されるのはマアジとムロアジ、味がよく珍重されるのはカイワリ属のシマアジである。そのシマアジよりさらに体高があって、扁たいのが俗にカイワリと称される。当掲示板で何度か触れてきたが、アジ科でもっとも旨い魚である。
 新井白石の「東雅」に「アジとは味なり、その味の美をいふなりといへり」とある。そのカイワリが自宅の近所の魚屋に入っている、下田産である。今週の土曜日に入手可能かどうか分からないが、もし入ればモルト会で使いたく思う。グレン・ロセスやグレンマレイと合う。乞うご期待。


「とと」  | 一考   

 「ちょうど赤坂だし、赤坂見附『とと』にも顔を出したら・・・ 共同経営だった頃のオーナーがタイから帰国していてリクエスト頂いたので、『夜来香』と『何日君再来』を。 何年たっても私というと『夜来香』なんだなぁ〜 」
 と緒方美穂さんが書かれている。ですぺらの隣のライブスポット「とと」での話である。05年新宿ジャズ祭りに結成されたクラリネットの松平恒和&高橋三雄デュオが毎月演奏なさっていた。
 オーナーのギタリストととさんのことを私はなにも知らない。六本木で五年間「とと」を営業なさっていたが、再開発が理由で2007年7月に閉店、同年11月に第二クワムラビルへ引っ越していらした。年齢は六十代半ば、自宅は六本木、出身地は青森、それだけである。
 そのととさんの消息が17日から分からない。店は閉まったままである。心配なのだが、私にはどうすることもできない。「やあ、しばらく」と元気な顔を覗かせてほしい。

追記
 ととさんが亡くなられていたことを知った。ご冥福をお祈り申し上げます。(九月二十九日)


雨過天晴雲破処  | 一考   

 嬬恋村の山小屋へ行く。マスタングによる初の遠出、初の高速道路だった。赤い光に三度ほど照らされたが、オービスだったのか監視カメラだったのかは定かならず。小諸ICからは霧のなかを北上、なにも見えず、何度かセンターラインをはみ出す。カーナビに助けられてなんとか到着。かつて奥志賀へ出掛けた時も同じような霧に遇った。
 三時間ほど走って早朝の四時に到着、佐々木幹郎さんを叩き起こしてアードベッグで乾杯。余談だが、最近は時間を掛けてだらだら飲むことができなくなった。三、四時間が限界で、あとは夢うつつの世界へ潜り込む。
 爽快な目覚、さっそく幹郎さんの書斎の前を山小屋バーに見立てての酒盛り。どうやら、この長丁場の酒盛りが祟ったようで、深夜に悪酔い。幹郎さんと関さんに迷惑をお掛けしてしまった。
 新宿でたまに長時間飲むのだが、その後は自宅なので水、お茶、トイレと必要なものは身の回りに揃っている。よしんば宿酔になっても時間が解決してくれる。やはり、ひとの家では緊張するのかもしれない。嬬恋村があまりに素敵なところだけに、酒は控えた方がよさそうである。

 佐々木幹郎さんに「雨過ぎて雲破れるところ」との著書あり。彼の嬬恋村のコミューンを描いたエッセイ集であって、文学を生きる彼の懸命さが伝わってくる。
 カメムシの大群、成長する氷のオブジェ、杜父魚の骨酒、樽ランプ、長野・群馬の山地にだけ自生する酸塊で作ったアリス・ジャム、地蜂、ポンプ車を想わせるミズキ、大型バスの機動隊、風のブランコ、さまざまな事象が人々が、星座表のごとく「シジン」を経巡る。
 標高千三百メートルの六月の山はいっせいに芽吹きはじめる「生きなくっちゃ。夢なんか見ている暇はない。という息せき切った思いが、山のあちこちにみなぎっている」かかる息吹きをわれわれは忘れてはいないだろうか。
 巻末に村の少女がハープを欲しがるシーンがある。

 山奥の村の少女がハープを弾いている、というイメージは想像するだけでも楽しいし、素晴らしい。まるで日本じゃないみたいだ。実現させてやりたいが、手に入れるのは無理だろうと、わたしは自分自身の経験から考えた。セキさんに相談すると、なんとかしてユリカちゃんの夢を実現させるべきだ、という答えが返ってきた。「欲しがっているいまが絶好の機会。将来、ハープを途中で止めてもいいんじゃないの。大きくなったとき、少女の頃、ハープを弾いていた、という思い出を持つだけでもユリカちゃんの宝物になるでしょう」
 
 関陽子さんの意見に私は胸を熱くした。ひとは大人になると功利的になる。そして自分が子供だったころのことを忘れて子供たちに説教する、まるで自分が立派な子供であったかのように。
 山小屋のオーナーのひとり関さんもそうなのだが、幹郎さんが著す文章にはある種の観音力が漂う。それは自然の治癒力が乗り移ったようである。ひとを補い扶ける天賦の才があるように思う。まるで人生の編輯者のようである。


2008年09月22日

ですぺらモルト会  | 一考   

9月27日(土曜日)の19時から新装開店後、九度目のですぺらモルト会を催します。
会費は8000円。
ウィスキーのメニューは以下のごとし。詳しい解説は当日お渡しします。
今回はグレンロセスがメインで、加えるにグレン・マレイのボトルを楽しみます。
 
グレン・マレイ蒸留所はエルギンの郊外、ロッシー川畔にある。1815年に建てられたビール工場を改造して蒸溜所が建てられたのは1897年。白ワイン樽をはじめて熟成に用い、「ワイン・メローイング・シリーズ」をリリース。同シリーズはフレッシュでさわやかな食前酒として識られる。
マクダナルド・アンド・ミュアー社にグレンモーレンジ蒸留所と共に買収されたのは1920年代。改装後、長い閉鎖期間を経て創業を開始。ちなみに、グレンモーレンジが蒸留所名を冠したシングル・モルト・ウィスキーとして発売されたのも同じ頃である。
マクダナルド・アンド・ミュアー社は96年にグレンモーレンジ社と社名変更。翌97年にアードベッグ蒸留所を買収したが、2004年にLVMH(ルイヴィトン・モエ・ヘネシー)の傘下に入った。過去形で書くのはLVMHが必要としたのはグレンモーレンジとアードベッグのみ、グレン・マレイ蒸留所は売りに出されていたからである。
グレン・マレイを買収したのはフランスのラ・マルティニケーズ(La Martiniquaise)・グループで、グレン・ターナーとのモルト・ウィスキーを頒している。傘下にバルディネット社などを抱え、バーボン、カナディアン、ウオツカ、ジン、リキュール類にスティル・ワインやカバまで扱う酒類メーカー。本拠はパリにあったが、聞くところによると、スコットランドの西ロージアン(West Lothian)に移設し、スコッチ・ウィスキーメーカーに変身したようである。
グレン・マレイ蒸留所の年間の生産量は約185万リットル。発酵槽はステンレス製で合計五基、イースト菌は純粋培養酵母とビール酵母の二種類を用い、ボットスチールはグレンモーレンジのそれとは逆に背の低いストレートヘッド型で合計四基。仕込水はロッシー川の水を利用している。ブレンダーの間では評価が高く、大半がブレンド用に出荷、ハイランドクィーン、ジェームスマーティン、バリー・ニコル・ジャービー等のモルト原酒である。1999年から方向転換し、シャルドネとシュナン・ブランの樽でフィニッシュをかける。今後モルトスターとしての活躍も期待できる、わがサントリーの取引先のひとつでもある。

グレンロセス蒸留所は1879年創業。スペイサイドの中心部に位置する小さな町ローゼスにある。ポットスティルは十基、二回目に蒸留したスピリッツのミドルカットから僅か十四〜十八パーセントを抽出し熟成にまわす。 モルト・ウィスキーのアロマ、油分、フレーバーを活かすために、氷点下ではなく摂氏四度でフィルタリングを行う。
ブレンダーからトップ・ドレッシング(フレーバーとクオリティを高める原酒の意)として高く評価され、長きに渡って重宝されてきた。カティサークの核となるモルト原酒。
先頃発売されたノンエイジのセレクテッド・リザーヴを除き、蒸留所の製造能力の二パーセントだけがディスティラリーのヴィンテージ・モルトとしてボトリングされ、残りはすべてブレンド用に回される。パッケージは蒸留所のサンプルルームにあるボトルをモチーフに、透明でシンプルなデザイン。小さなラベルにはマスター・ブレンダーによる、キャラクターと蒸留年月日、ボトリング承認年月日が記載されている。
ウィスキーの製造過程において、熟成に使用される樽木のクオリティがもっとも重要と蒸留所は考えている。シェリーの熟成に用いたアメリカ産オークとスペイン産オークの樽を主として利用。シェリーのフレーバーがウィスキーの個性を消さないように、ヴィンテージによってはリフィル・バーボン樽がブレンドされる。マッカランのファイン・オークの先取りのようなもので、ドライフルーツやトフィーの甘味や香りを抑え、バニラやジャスミンの複雑な香りとほのかなスパイシーさが加味される。
扱いはバカルディ社へ変わり、2002年にビー・ビー・アール・ジャパンからイー・エス・ジャパンへと移った。

ですぺらモルト会(グレンロセスとグレン・マレイを飲む)

01 グレン・マレイ8年※
 43度の旧ディスティラリー・ボトル。2000本のリミテッド・エディション。80年代前半の蒸留とされる。
02 グレン・マレイ・シャルドネ※
 40度のディスティラリー・ボトル。ノン・エイジだが7〜8年熟成のモルト。
03 グレン・マレイ・シュナンブラン12年※
 40度のディスティラリー・ボトル。
04 グレン・マレイ '89(シグナトリー)
 シェリー・バットの9年もの、59.5度のカスク・ストレングス。限定640本のシングル・カスク。
05 グレンロセス '90(シグナトリー)
 アン・チルフィルタード・コレクションの一本。シェリー・バットの11年もの、46度。842本のシングル・カスク。
06 グレンロセス '90(マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。シェリー・カスクの11年もの、43度。
07 グレンロセス8年(ゴードン&マクファイル)
 マクファイル・コレクションの一本、40度。
08 グレンロセス '89(ウイルソン&モーガン)
 バレル・セレクションの一本。シェリー・ウッドの10年もの、46度。
09 グレンロセス '87(ベリー・ブロス&ラッド)※
 ベリー・ブラザーズ&ラッド社の手になる11年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
10 グレンロセス '87(ベリー・ブロス&ラッド)※
 ベリー・ブラザーズ&ラッド社の手になる15年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
11 グレンロセス '82(ベリー・ブロス&ラッド)※
 ベリー・ブラザーズ&ラッド社の手になる15年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
12 クレンロセス '89(ジェームズ・マッカーサー)
 オールド・マスターズの一本。バーボン・カスクの11年もの、64.7度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。

ですぺら
東京都港区赤坂3-9-15 第2クワムラビル3F
03-3584-4566


2008年09月21日

プロプライエタリ・ボトリング  | 一考   

 先日、木村さんからオフィシャル・ボトルとの云い方はないが、オフィシャル・ボトリングならあるのではと教わった。もっとも使用例はほとんどなく、通常はプロプライエタリ(proprietary)・ボトリングではないかとも聞かされた。プロプライエタリ・ボトリングはワインの世界では広く用いられている。意はオーナーズ・ボトルである。
 至近な例ではジム・ビーム・ブランド、バーン・スチュアート、ハイランド・ディスティラーズ、アライド・ディスティラーズ、ユナイテッド・ディスティラーズ等のボトルが充当する。前項で著したように花と動物シリーズやレア・モルト・セレクションはプロプライエタリ・ボトリングと云うことになる。一部はディスティラリー・ボトルと重なり、一部は重ならない。いずれにせよ、チョイスが多いのは良いことである。
 クレッグホーンの例を持ち出すまでもなく、ディスティラリー・ボトルだけではモルト・ウィスキーの香味は分からない。ブレンダーに供するために蒸留所はさまざまなモルト・ウィスキーを造る。これがと思われるような香味を持つ酒もなかにはある。タムドゥーやプルトニーなどは典型であろうか。違いを違いとして楽しむ、もしくは蒸留所の全貌を知るためにもボトラーズ・ボトルとプロプライエタリ・ボトリングは必須である。


鳥の羽と蝶の翅と隠翅虫  | 一考   

 子供のころ、昆虫の翅を毟って放置したことがある。蜥蜴の尻尾切り、蛇の皮むき、蛙の解剖等々、子供は残酷なことをする。そして幼なごころをそのままに大人になる人がいる。勝手、気儘、我が儘、傲慢、不遜がそのまま大人になるのだから始末に負えない。おそらく「人とは違う」といった選民意識を持つ人はこのカテゴリーに属する。なかには相対化が繰り返されて屈折した負の選民意識を持つ人もいるに違いないが。
 隠翅虫と書いたのはその虫の生態に理由がある。隠翅虫の体液にはペデリンという毒があって、触れると猛烈な皮膚炎を惹き起こす。間違えて目に入ると失明のおそれもある。身体にとまったときはそっと払いのけるのが無難である。人はこの種の危機に無防備である。無防備であればこそ、気付いたときには黙って立ち去らねばならない。しかし、世の中はさまざまである。好んで失明するひともい、それすらが選民意識のひとつの顕れになることもある。
 人間生活の二重の相貌の境界に生きる人々がいる。共同体にとって不可欠な存在でありながら、他面で危険なエレメントと深くかかわる存在である。そうした共同体を超えた世界と接する人は懼れと賤視の対象とされる。賤民の多くがそれであって、結果として鮮民あるいは棄民とも相通じる。そして賤民に紛れ込んでそしらぬ顔を決めこむ存在がたまにいる。そやつの名は詩人。二重の相貌の境界に生きると書いたが、糅てて加えて悪意という三重の領域を往き来する。
 世の中には傍へ寄るだけで火傷をおわされるような人がいる。ラルボーではないが、「二十一世紀初頭の忘れられた詩人になりたい」 そのような危うい詩人の誕生を私は待ち望んでいる。思うに、詩人とは言葉のテロリスト、太古の昔からもっとも危険なもっとも賤視すべき存在である。詩人は容赦しない、捨て置けば朽ち果てる伝統や文化を敢えて破潰してやまない。詩人は真喩であれ隠喩であれはたまた重語法であれ、さまざまな手立てを用いて言葉の苗床を大海原と化す。
 詩人は常に在野に在る。詩人の悪意は自分に向けられる。個に徹して自らの羽をもぐことに専心する。捻り取ろうが、千切り取ろうが、観念の羽がもがれ果てることはない。自らの羽をもぐ行為を加えれば領域は三重どころではなくなる。詩人にとっては迷想も冥想も、さらには迷走すらが伸縮自在なオブジェとなる。


2008年09月13日

トマス・ピンチョン「スロー・ラーナー」  | 一考   

 トマス・ピンチョンの「スロー・ラーナー」新装版 (ちくま文庫)が上梓された。訳者は志村正雄さん、あとがきに小生の名前が載っている。
 少々補足すれば、「海」へ掲載された「秘密のインテグレーション」に大いに啓発され、安原顕さんに相談を持ちかけたのが事の発端。当時、雪華社に在籍していた私は「海」以降、ピンチョンの翻訳が進まないのに業を煮やし、短篇集を拵えようと思ったのである。安原さんに関しては何やら訝しい噂も流れているが、私にとっては竹内書店時代に彼が編輯したパイデイア以来のお付き合い。パイデイアの創刊は確か1968年だったと記憶する。その後、彼が中央公論社へ潜り込んで、「海」の編輯に携ってからは繁くお会いするようになった。その頃のことは事情があって書かないが、彼は私にとって数少ない先達のひとりだった。
 ピンチョン短篇集には安原さんも殊の外乗り気で、ゲラまで出たのだが、雪華社が突如解散、志村さんに多大なご迷惑をお掛けするこになってしまった。
 志村さんには雪華社が解散に至った経緯もお話していない。にもかかわらず、今回の新装版へわざわざ名前をお書き込み下さって恐縮である。ここに記して深甚の謝意を表したく思う。


2008年09月11日

マック玉砕  | 一考   

 拙宅のマックが不調である。不調の理由は何時の間にかハードディスクにパーティーションがかけられている。つまり、影のようなシステムが誕生しているのである。日曜日一日かけて修復を試みるも起動しない。10.3のインストール用CDで起こし、ハードディスクを初期化、9.2.2を丸ごとコピーする。9.2.2はなんとか起動するようになった。10.3の方もインストールを済ませたものの、こちらはソフトが多いので一日では無理。
 4GBのUSBメモリもクラッシュ。ファイルのクロスが理由らしい。収録している12,925項目がおよそ25,000項目にもなっている。この歳になると最初からサルベージは考えない。それにしても、ノートンが役に立たなかったのは初めてである。このようなトラブルは纏めてやって来る。
 拙宅のマックが恢復した九日、店のiBookのハードディスクがクラッシュ。持ち帰ってハードディスクを交換する。iBookの分解は難儀である。こういうこともあろうかと、使用済みの図書カードを大量に書店からもらってきた。図書カードがなければiBookのパーツの交換はかなわない。こちらの理由は熱暴走、東芝のハードディスクはぴくりとも動かない。纏めて壊れるのなら、何のためにパーティーションを切ったのかと思う。本日から一部が機能するようになったが、データの過多は喪われ、清々しいマックに生まれ変わった。

 掲示板、mixi、ユーチューブ、なにもかもがOS.9には対応しない。ログインする時は10.3に切り換えなければならない。どうしようかと迷う。迷いながらも、どうでもよいと思う。携帯電話は電話帳の代用品としてしか使っていない。インターネットにも繋いでいない。一事が万事で、パソコンにもひとときの熱はなくした。
 最新のマックなど端から買う気もないが、櫻井さんに言わせると中国製だそうである。冷凍食品同様、しばしば腹痛に見舞われるらしい。中国製で良くないのは餃子とコンデンサーだそうである。私は日本が嫌いなので、日本製が良いと云われてもピンと来ない。でも日本製はすぐれているらしい。日本語も好きではないが、それしか教わらなかったので遣い続けている。ただし例外もあって、付き合う女性は日本人がよいと思う。要するに好悪に理由はいらない。勝手にそう思い込んでいるだけなのである。


キルケニー追記  | 一考   

 何処の酒屋も「大人気で当店にも取り寄せ先にも現在在庫がございません。入荷時期も未定です」となっている。ところが、前述のサンクス某店舗ではいくらでも入手可能である。六日に一ケース追加注文をして八日に入った。ですぺらへの行き帰りにもサンクスはあるのだが、そちらでは取り寄せできないとのこと。摩訶不思議な流通径路を辿っているようである。ちなみに、新規入荷の度に賞味期限は延びている。サッポロで働く知己に訊いても埒は明かない。要するに酒屋ルートは閉ざされたままである。


2008年09月08日

高級ブランド  | 一考   

 MHD(ディアジオモエへネシー)は、仏LVMHグループの洋酒部門であるモエ ヘネシー及び英ディアジオ両社の合弁会社。LVMH(エルブイエムエイチ・モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、フランスを本拠地とするコングロマリットで、1987年にルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーの両社が合併して誕生した。ルイ・ヴィトン、セリーヌ、クリスチャン・ディオール、ジバンシー、ゲラン、タグ・ホイヤー、ゼニス、デビアス等々五十近くの高級ブランドを持つ。
 ワイン・スピリッツの部門はモエ・エ・シャンドン、ヴ−ヴ・クリコ・ポンサルダン、クリュッグ、ルイナール等の企業と同時にブランドが含まれ、世界のシャンパン市場において、LVMHはゆるぎない地位を占めている。なお、日本で人気の高いドン ペリニヨンはモエ・エ・シャンドン社の製品。
 日本においてはモエ・エ・シャンドン社及びヘネシ−社の製品及びベルヴェデールは、MHD(ディアジオモエヘネシー)が、ヴ−ヴ・クリコ、クリュッグ、グレンモーレンジ、アードベッグはヴ−ヴ・クリコジャパンが、ルイナールはルイナールジャパンが販売に当たっている。
 さて、そのLVMHからグレンモーレンジ・シグネットとアードベッグ・ブラスダの案内が出た。ディアジオジャパンではなく、ディアジオモエヘネシーでもなく、ヴーヴ・クリコジャパンでもなく、LVMHの発売である。
 発売はシグネットが10月3日で、ブラスダは10月21日、扱いはエイコーン。宣伝では「濃い官能的なフレーバー、ヴェルヴェットのようなテクスチャー。複雑で卓越したプレミアム・シングルモルトを実現。これまでで最も革新的で、比類なき豊かなフレーバーが味わい深い、型破りなウイスキー。厳選された原料、ユニークな製造方法について、その詳細は明かされていませんが、一部ヒントが公開されています。
・グレンモーレンジの最も古く、希少なウイスキーをブレンド
・原料の一部に深焙りした「チョコレートモルト」を使用
・グレンモーレンジが所有する単一畑のモルトを使用
・グレンモーレンジが特注したデザイナーカスクで熟成」
となっている。46度の加水タイプで、香りはグレンモーレンジらしく上品かつ華やかなモルト・ウィスキーなのだが、腰が弱いように感じる。このところの値上がりを考慮しても、20,600円(エイコーン価格)の売価はちょいと高価にすぎる。デザイナーカスク、チョコレートモルトとの文言が繰り返し遣われているが、意味するところは不明。クリスチャン・ディオールやゲランのパフューム&コスメティックスと同じ感覚での販売のようである。そちらはボウモアの専売特許でなかったか。
 アードベッグ・ブラスダの方は、「ピーティなだけでない、アードベッグの魅力。アイラモルトの中でも、もっともピーティなことで知られるアードベッグから、ライトピート麦芽(フェノール値8ppm)を使用した軽やかな味わいの限定品。ブラスダとは、ゲール語で「甘くておいしい」という意味。他のアードベッグとの違いを強調するため、グリーンボトルではなくクリアボトルに冷却濾過を施し、40度でボトリング。ブランド・ディレクターのヘイミッシュ・トーリ氏は『食前酒としてお勧めします。午後八時には(8ppm)のアードベッグ・ブラスダのボトルを開けましょう』」となる。こちらの売価はは6,800円(エイコーン価格)。
 ブラスダは試飲していないが、8ppmのアードベッグなら午前八時の間違いではないのか。いくら値上がりしようが、不味いドン ペリニヨンは飲みたくない。同様に「甘くておいしい」アードベッグには興味が湧かない。いよいよアードベッグも高級ブランド化の道を歩むのか。


2008年09月04日

キルケニー在庫  | 一考   

 8月4日にも書いたことだが、5月21日発売のキルケニーの入手が難しくなっている。サッポロによると罐の原材料の調達がかなわず、次回の入荷はまた延びて10月末になるそうな。おそらく年内には無理ではないかと思う。
 ギネスは1997年末にグランド・メトロポリタン社と合併してディアジオ社を形成、今はディアジオ社のビール部門という扱いになっている。2007年8月現在、総資産267億ポンド(約6兆1800億円)の会社がアルミニウムの入手に事欠くとは不思議なはなしである。
 モルト・ウィスキーのファンにとってディアジオ社とその傘下のU.D.V(ユナイテッド・ディスティラーズ&ヴィントナーズ)ほど由縁の深い会社はない。スコットランド最大のブローカーにして、全蒸留所のほぼ半数を所有している。元はU.D(ユナイテッド・ディスティラーズ)と名乗り、ギネス社のスピリッツ部門を担う会社だった。それが合併でグランド・メトロポリタン社傘下のI.D.V(インターナショナル・ディスティラーズ&ヴィントナーズ)と一緒になって、さらに大きくなった。扱いはとにかく、私の頭のなかで親会社はギネスであって、世界最大の酒類販売メーカーであることに違いない。
 「年内には無理ではないかと思う」と書いたが、明年になっても相変わらず無理なのではなかろうか。サントリーがU.Dからすげなくされ、アライド社と手を組んだ。アライド社は、ラフロイグ、グレンドロナック、スキャパ等の蒸溜所を所有し、バランタインやティーチャーズを擁するが、モルトウィスキーのシェアは5パーセントに満たない。おそらく近い将来、サッポロもギネスから袖にされるに違いない、と思っているのは私だけなのであろうか。そのようにならないことを願っている。

 ところで、キルケニーはダイエーとサンクスでは一部の店で手に入るようである。私はサンクスから購入している。現在の在庫は3ケース、10月末までは持ちそうだが。

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