レイアウトが崩れる方・右メニューが表示されない方: >>シンプル・レイアウトへ

« 2009年07月 | メイン | 2009年09月 »

2009年08月 アーカイブ


2009年08月31日

颱風  | 一考   

颱風の影響は六時から七時がピークとか、従って本日の開店を七時半に遅らせます。


2009年08月28日

低タンパク米  | 一考   

 LGC米は低グルテリン米の一種で体内に吸収されるタンパク質量が約二分の一になる。タンパク質には易消化性タンパク質と難消化性タンパク質とがあって、前者にはグルテリンが、後者にはプロラミンが含まれる。従って、なにを基準に計算するかで、数値はまるで違ってくる。また、生産地域や栽培方法もさまざまなので、数値はなおさら一定しない。炊飯後のカロリーや総タンパク質量に関する質問が多いが、かんたんには応えられない。
 米180cc(150グラム)は炊飯すると約350グラム、2.3倍ほどの重さになる。従って180グラムの飯なら78グラムの米が必要で、春陽を例にとると、総タンパク質が3.9グラム、易消化性タンパク質が1.87グラムとなる。要するに低タンパク米が含有するタンパク質は大体2グラムで計算すればよろしいかと。「体内に吸収されるタンパク質量」と頭に書いた理由である。
 春陽でもひかるくん56でもLGC米でもさしてタンパク質の含有量が変わるわけではない。あとは香味と値段だろう。わたしは5キロ1,850円の晴米を用いている。送料735円と振込手数料を入れて、180グラムだと一食44円ほど(光熱費は別)になる。低タンパク米のパック飯が180グラムで210円(送料は別)だから、炊飯米を購入する方がはるかに安くつく。

 似た質問がネット上でなされているが、答えは書かれていない。そしてそこでは餃子のタンパク質について触れられているが、餃子はメーカーによって大きさも具材も味付けも異なる。よって餃子ひとつのタンパク質にいかほどの意味があろうか。
 「腎臓病食品交換表」を基準にするところから療養食ははじまるが、上記と同じ理由で鵜呑にはできない。同書によるとフランスパン(バゲット)とクロワッサンには190ミリグラムのナトリウムが含まれているが、知己のパン職人にいわせると、パンの大きさや重さを決める基準値はどこに置いているのかとなる。通常のクロワッサンが190ミリグラムとするなら、バゲットは4000ミリグラムを軽く超えるナトリウムが含まれているそうである。欧州では事情を説明して塩分抜きのパンを焼いてもらうようだが、日本ではそれはできない。わたしは食卓からフランスパンとドイツパンを永久追放した。
 タンパク質やカロリーに執着するのも大事だが、それ以上にナトリウムの摂取量は問題である。塩分換算すなわち食塩相当量はナトリウムの含有量を常に超える。こちらはさらに繁雑な計算が必要になる。われわれはよりアバウトだが個々の好みに則した計算法を身につけるしかない。


肉じゃが  | 一考   

 海藻はカリウムの含有量が多くて原則禁止だが、心太(ところてん)と海蘊(もずく)はかまわない。トロロ昆布も少量だと問題ない(もっとも大量に食べられないが、微かな潮の香が気に入っている)。芋類もカリウムは多いが、菎蒻は栄養士のお薦めである。この辺の消息がうまく掴めない、ひとつずつ覚えてゆくしかなさそうである。
 昨日は塩を用いない肉じゃがを大量に拵えた。二リットルの鍋に醤油とインスタントの減塩だしの素をティースプーン各二杯、他は差し障りのない味醂を同四杯。牛バラ肉を五十グラム、大きな玉葱を一つ半、馬鈴薯を六つ。以上で塩分に換算して約五グラムになる。三日かけて食べるのだから、ナトリウム、カリウム共に問題なし。結果、醤油を一杯追加することになったが、水を沸かすところからはじまって所要時間二十分というのが結構。
 毎日メニューを考えるのは面倒臭い、以前はカレーを大量に作り置きしていた。カレーも肉じゃが同様、塩抜きで拵えられる。小麦粉を使わなければ塩分換算で約六、七グラムで収まると思う。そうすると一食あたり700ミリグラム、低蛋白米と併せても規定内。仮にナンと食べても食塩相当量は一枚につき700ミリグラム、ちょっと危険だが、他を控えればなんとかなりそうである。こちらは所要時間三十分。

 ここまで書いて幹郎さん来店。腹痛の理由はやはり空腹にあるとの指摘を受けた。朝夕二食の療養食では身体がもたない、分かっているのだが、毎度考えるのが億劫なのでついつい食事を抜く。さすがに一食だと仕事中に眩暈がする。ついこの間も素天堂さんを尻目にサンドイッチを貪る。とりあえず低蛋白米の量を十グラムほど増やそうと思っている。制限値を目一杯食べないと寿命がさらに縮まりそうである。


2009年08月27日

身障者手帳  | 一考   

 身障者の手続きがこんなに面倒なものとは知らなかった。役所の担当者は同情しきりだが、医師側の書類が個々の病院の条件によって異なる。北海道で起きた事件を境に安易に認めないとの風潮(自己規制)ができあがったのかもしれないが、月五十万円の診療費をもたらす患者の囲い込みに真意がありそうである。そこには個としての医師と組織としての病院の葛藤も絡むようである。微妙な問題なので固有名詞は一切省くが、透析をはじめてからでなければ診断書・意見書を書くことはできないのが相場のようである。
 資格認定は書類提出から一箇月半あとだが、発症から認定までのあいだ、個々の患者が負担するであろう金数がわたしには理解できない。病気をすると湯水のように金は消えてゆく、それはわかっているのだが、世の中には貯えを持たないひともいる、そのようなひとはどうするのであろうか。貧乏人は迂闊に病気もできない。
 わたしの手に負える問題ではないので、またまた主治医を煩わせることになった。休日にもかかわらず、山崎医師は電話に齧り付いて、この難儀からわたしを救ってくださった。感謝の一念あるのみ。

 昨夜、帰りしなに車に乗ろうとして足首を捻った。今朝から痛みがあったが上記諸用のため、終日動き回った。そのせいで骨折箇所が腫れあがっている。折角くっつきかけたところが外れたような痛みである。湿布を施したが、今日明日は忙しい、困ったものである。


2009年08月26日

ブランド品  | 一考   

 かし原のほんねりという羊羹を食べている。上部を鋏でぴっと切って絞り出す、棹というのも烏滸がましい一口羊羹である。その練り羊羹を掲示板へ書いたのを目にとめた伊藤敬さんがとらやの羊羹を担いで来店。かし原には申し訳ないが、こちらは真物の羊羹である。種村さんご推奨の「岡山の焼鳥」でもない、正真のとらやの羊羹である。とはいえ、わたしは差別はあまり好まない、よって越谷と赤坂の地域差を体現した羊羹とでもしておこうか。
 伊藤さんがお持ちになった羊羹は五種全品材質が異なる、値も違うのか気になるところだが、などと書き出すとはなしはいじましくなってくる。ひょっとすると、否、間違いなく、わたしの一箇月分の食費より高価に違いない。大層な出費をさせてしまった。わたしの落書きを気に止めてくださった伊藤さんには感謝のしようもない。


2009年08月25日

類推  | 一考   

 ちはらさんが林達夫を読みたいという。最初ならと、「歴史の暮方」と「共産主義的人間」の仙花紙本を持ち出すも、気になって理由を尋ねた。彼女がいうには類推を知りたいとのこと。本を読んでも裏の意味を読み解くところまでは手が及ばないらしい。マラルメでも読むのなら林達夫も悪くはないが、最初がそれなら、類推がスイスイ進まず自爆する。そもそも類推なんてものは小中学生の頃に読むであろう詩歌がその能力の骨格を決める。三十路になれば生活体験がそれを補うものである。
 そこで、柿沼さんが編輯した種村さんの「楽しき没落」所収のキング・コングの図像学からまず薦めた。彼女はキングコングを観ていないという。ゴジラのようなものだが、観る必要などどこにもないとわたしが応える。あのエッセイは図像学とのタイトルからしても、類推の構造をうまく説きほぐしている。種村さんは往時を振り返って、映画評論の依頼しかなかったのでと仰有っていたが、託つけてものを書くという表現の本質が繰り返されたのが最初のエッセイ集「怪物のユートピア」だった。
 キング・コングの図像学一篇を読んだちはらさんの目は輝いていた。類推のみならず、種村さんの底意地の悪さ、悪意のようなものを読み取ったようである。彼女は既に類推の渦中にある。


2009年08月23日

ポテトフライ  | 一考   

 店の烏龍茶がなくなったので買いにゆく。遅かったので売れ残った寿司が安売りになっている。高蛋白に高カリウムだがどうしようかと迷う。海苔などで巻いていなければよいのにと考える。巻き寿司を半本食べると他になにも食べられなくなる。しかし今日は休み、あとは野となれ山となれ、と思い切って贖った。当然、醤油は抜き、先程から眺めているが、まだ手はつけていない。
 moonさんからのメールの末尾に「食餌療法のお料理、不味そうですね」とある。塩抜きの料理なんぞ喰えるわけがない、「負け惜しみ」と書いた理由である。過日、ポテトフライと格闘した。栄養士のお薦めはパン粉をつけたイモフライだが、わたしはポテトフライが食べたい。塩の替わりにチリペッパーとバジルを用いた。食べられなくもないが、きっと馬居七郎兵衛や大谷五郎右衛門なら腰を抜かしたに違いない。
 蜂須賀家とチリペッパーの関係についてなど、さぞかし面白い文化史ができると思うが、今のわたしにそのゆとりはない。いずれにせよ、食べられるものの一覧表をつくり、あれやこれやと試行しなければならない。試作品をつくるに一年は掛かると思っている。


塩、塩、塩  | 一考   

 干し肉から干物、乾酪から漬物、揚句は米、麺麭、麺類までが食べられなくなった。昨日までは普通の食生活を送っていた、それがある日突然、療養食への切替を強いられたのである。医師や栄養士が責付くのは当然かもしれないが、同居人までがやいのやいのと急き立てる。
 わたしは料理人ではあっても栄養士ではない。蛋白質45グラム、塩分5グラムと書けばそれまでだが、なにを食べればその数値に収まるのか、想像すらつかない。塩分5グラムを三食で割れば1.6グラムほどになる。しかし、食品そのものに這入っているナトリウムを除くと使える塩は最大でも7、800ミリグラムになる。これでは味付けはできない。
 われわれが蕎麦を打つ場合、蕎麦粉と水以外は用いない。しかし、生であれ乾麺であれ、売られている蕎麦にはナトリウムが這入っている。それどころか、夥しい種類の「副剤」が紛れ込んでいる。蕎麦でありながら、小麦粉の含有量の方が多い商品が大半である。
 一輪の素麺には400ミリグラム、150グラムの饂飩玉には700ミリグラムのナトリウムが這入っている。この饂飩が曲者で、コシや食感を良くするために添付される「副剤」は蕎麦の比ではない。メーカー名は書かないが、企業秘密とやらで実にちゃらんぽらんな成分表示になっている。なかには小麦粉の成分表示をそのまま写したものさえあった。
 麺類でナトリウムが這入っていないのはビーフンとデュラム粉を用いた一部の乾燥パスタのみ。ケチャップは論外として生クリームやパルミジャーノやゴルゴンゾーラすら使わないパスタなど考えられるだろうか。この辺りでわたしは頭を抱え込む。
 先日、道端でしゃがみ込んだと書いたが、あの激痛は空腹のなせる業でなかったかと思う。今は朝夕の二食だが、蛋白質は18グラム、飯を含めて28グラム、塩分は2グラムしか摂っていない。常食になるものをもっか探し回っている。当分は試行錯誤がつづく。


2009年08月22日

透析延期  | 一考   

 ギブスを嵌めて二十日が過ぎた。自宅ではギブスを外しているが、状態がぐんぐん良くなってゆくのが分かる。今月末には間違いなく恢復する。塩煎餅かフランスパンで全快祝いをしたいと思っている。
 ここまで書いて、実は昨夜動かれなくなった。素天堂さんの奥さんが来店し、帰られて十五分ほどの後片付、外へ出た途端に激痛に襲われ、道端へしゃがみ込んでしまった。ちはらさんに車を回してもらったが、帰宅後も痛みは間断なくつづく。午後二時過ぎになってようやく二十六時間ぶりに食事を済ませた。腹痛の理由は判らないが、病人であることを思い知らされた一日だった。

 わたしが透析を受けるなど信じられないと、木村さん、幹郎さん、山崎医師までが仰言る。その透析の導入だが、取り敢えず半年の猶予を得た。薬と食事療法が効果を呈し、血液の状態がすこぶる落ち着いている。クレアチニンと尿素窒素の値が同率で、ごく僅かだが下がっている。クレアチニンは7.21から6.4になった。導入延期はその分まるまる命存えるということである。喜ぶべきか。


苦言  | 一考   

 漢字に関して苦言のメールがあった。食餌療法と書きたくないので、食事療法を用いている。この変遷に関しては主治医から既に聞かされている。
 鏡花が豆腐を忌嫌い、豆府を用いたのはよく知られている、神戸で贔屓にした豆腐料理の店は豆富と表現していた。ちなみに、豆富は木版印刷の時代に遣われている。
 わたしは漢字についてむづかしいことは云わない、通じればそれで良いと思っている。永田耕衣さんは造語の達人で、エディタースクール出身者による校正なら大半の文字が刎ねられてしまう。しかし、あの造語にこそ耕衣さんのひととなりが顕れている。談林の時代、およそ漢字は自由だった。遡れば、輸入品に満足せず、適宜国字を拵えてゆく器用さを持っていた。そこには文字に対する柔軟な日本人の特性が反映されている。岩波や筑摩の生真面目乃至唐変木な校正によって近年多くの漢字が修正され統一されてきた。なにごとによらず、そういう風潮をこそ危惧している。

追記
 moonさんからメール到着、彼は食餌療法を用いている。個人の趣味にわたしは口を挟まない。それよりも、彼の自炊の記はおもしろい。そのうち紹介しようかと思う。


2009年08月21日

もやし炒め  | 一考   

 街のトンカツ定食なら、カロリー、ナトリウム、カリウムともに制限値を超えてしまう。そこで、半裁のトンカツを作った。厚みはそのままに、面積を半分にする。塩は控えめにあとはトンカツ屋のそれと仕様は同じである。間違っても、デミグラスソースやトンカツソースを使ってはならない。かつてファーストフード店でなんにでもソースをかける人がいた。一方、ソース、醤油、ドレッシングを几帳面に遣い分ける人がいる、これらはどちらも生活習慣のようなもので、止められるものなら止めた方がよい。ご飯にマヨネーズ、お好み焼きにソースとマヨネーズを塗りたくるようなもので、昔はそのようなものをかけはしなかった。店のスモークになにをかければよいのかとの質問が舞うが、思い込みとは怖ろしいものである。

 配いである。キャベツがカレー粉と相性が良いように、もやしは酢と相性がよい。フライパンに油を入れ、鷹の爪を刻んだものを焙煎するように炒める。そこへ酢ともやしを入れるだけだが、酢が強いと思ったら、前項で書いた割醤油を三滴ほど滴らせばよい。舌当たりが柔らかくなる。鷹の爪と一緒に豚バラを入れても旨い。当然、塩胡椒は用いない。わたしならこれだけで、充分一食の副食になる。
 トンカツがもたらすカロリーは配いで低減される。肉の大きさ次第だが、おそらく蛋白は十二グラム以下、低蛋白米を百五十グラムで規定内に収まる。ナトリウムはトンカツの豚肉に振りかける分だけである。
 食事療法は総量規制である。従って、要諦は普段当たり前のように使っているソース、醤油、マヨネーズ類を止めることからはじめるべきである。さすれば食域は拡がり、量を減らせば禁止品を食することも可能になる。


2009年08月20日

青春  | 一考   

 サバト館の広政かをるの通夜が17日にあったとあまねさんから連絡が這入った。詳細を確認する気もないのでそれきりになっている。彼女とは十代からの付き合いだが、二十六歳の折りに一度呼び出されたのを最後に会っていない。わたしにとっては天敵のような存在で、不快感以外なにもない。
 南輝子さんの文章(当掲示板の「読書」で紹介)にロクサンの同居人として彼女が出てくるが、同居人ではなく女房だった。その後離婚、京都在の生田耕作と彼女を引き合わせたのはわたしだった。それを契機に彼女とわたしの仲は急速におかしくなっていくが、この件にかんしてはそのうち詳しく書こうとおもっている。
 天敵はともかく、これで十代からの知己は居なくなってしまった。個であり孤であることを確認すべく、昨夜はラ・ボエームを聴き涙した。


2009年08月18日

シーグラム社について  | 一考   

 国立にお住まいの方からシーバス・ブラザース社について問い合わせがあった。曰く「イスラエルの資本が入っているか」どうかという内容だった。これはシーバス・ブラザース社でなく、正確には親会社のシーグラム社のことと思う。下記サイトをご覧あれ。

http://alternativereport1.seesaa.net/article/98523841.html

 ヴォルヴィックで思い出したが、イスラエルとパレスチナの闘いは水利権を根こそぎ奪うための闘いであって、現在では周辺の公水はことごとくがイスラエルの管理下にある。ヨルダン川西岸、ガザ、ゴラン高原のパレスチナ人口が減り続けている理由は生活用水の供給制限によるもの。


割下  | 一考   

 前項で「減塩醤油、減塩味噌、減塩マヨネーズ、減塩ソース、減塩だしの素等々がある」と書いた。しかし、大半は塩化ナトリウムを減らした分、塩化カリウムやマグネシウムを添加している。正確には低ナトリウム商品というべきで、さらによろしくない結果を身体にもたらす。低ナトリウムを必要とする病気があるのかと思って調べるも、そんな器用な病気は存在しない。カロリー半分やサプリメントと同じで、所詮は健常者のための食品に過ぎない。
 別に難しいものではないので、マヨネーズやドレッシング、出しの素ぐらいは自分で作ればよいのだが、醤油や味噌となるとさすがに面倒である。一方、透析患者のブログを読んでいると、薄味の方が素材の味がよく分かるといった、「負け惜しみ」と頻繁に出遇う。わたしの食事療法はまだはじまったばかり、私流負け惜しみに関してはおいおい書き込んでゆく。

 醤油は大きく別けて白、薄口、濃口、たまりの四種類があるが、たまりがもっとも消費されるのは東京である。饂飩や蕎麦の真っ黒な出汁にみられるように、関東ではたまりを色づけと甘味を出すために多用する。関西でたまりと云えば寿司に用いるぐらいであろうか。そしてナトリウムの含有量は前述の順に多い。要は色が薄いほど塩分濃度が上がるのである。減塩中濃ソースはできても減塩ウスターソースはできないのと理屈は同じである。
 素天堂さんから聞いたはなしだが、彼は濃口と酒と白出汁を同割りにしたものを食していたらしい。いわゆる割醤油だが、わたしが試みたのは濃口1、たまり0.25、味醂0.25、白出汁5の割醤油である。この場合の白出汁には昆布はつかわない、昆布にはカリウムが多いので、鯖節や鰹節を用いる。鰹出汁のコツはひとつ、プロが作る白出汁と素人のそれでは鰹節の量が十倍ほど異なる。要するに、想像を絶するくらい大量の鰹節を使えばよいのである。
 たとえ割醤油にしても使用量は減らさなければなんのための割りなのか分からなくなる。わたしはこの割醤油をさらに薄めて丼ものの割下として用いている。食事療法とはどこまで薄めたものに耐えられるか、その根比べに相違ない。

追記。
 山崎医師来店、食事療法による地域活性化をはかりたいとの壮大な計画を伺う。前述したごとく、わたしは新参者だが、余生が食事療法であることに異存はない。香辛料やスモークに関する知識を活かせそうな気もする。透析患者が食べられる懐石料理、饂飩やカツ丼があっても不思議ではない。最後ぐらいは人の役に立つことを考えてみようか。


2009年08月17日

後発品に関して  | 山崎利彦   

こんにちは。過大な御褒めを頂き恐縮です。「個」に対する概念は、実は私は一考さんに教わったような物なので、逆に恥ずかしかったです。
さて、戸田中央病院の処方箋に関してですが、プラチビットとサロベール自体が後発品です(各ワンアルファ=アルファロール、ザイロリック=アロシトールの)。
後発品薬の検索用に比較的面白い(?)サイトが在りますので御活用下さい。http://www.genecal.jp/
後発品の使用に関しましては我々現場医師に大きな混乱が在るのは事実ですし、私自身もかなり翻弄されています。
「薬には味付けなんて無いんだから、主成分が同じならどんな物でも一緒だ」と平然と言ってのけるような政治家が導入をしてますから当然ですが。
実は薬には「主剤」と「副剤」で成り立っていて、「主成分」と云うのは主剤のみを指しています。ので、副剤に関しては実は後発品はかなりいい加減です。
吸収率やアレルギーに関与するのが副剤である場合も少なくなく、この辺りが充分に判らない後発品はかなり使い難いと云う現実もあるのです。
また、供給体勢や安全性確保、情報提供状況等は後発品メーカーによっては全く明らかでないどころか殆ど連絡も取れない会社もあります。
従って、安易に「後発品への変更可能」とした場合は、全く知らない薬剤に変更される危険がある為、後発品を指定して使用する場合が多々あります。
私も後発品を使用する場合は、先行品を使用する場合以上に気を遣います。「安ければ危険でも良い」と云う訳には行かない上に「許可したのは医師」と
我々に責任が転嫁される危険性もあり、この辺りが日本で後発品が浸透しない最大の原因があると、私は考えています。


新規の病院  | 一考   

 戸田中央総合病院へ行く。今回は初診、精密検査は次回ということで、処方箋をもらう。ワンアルファがプラチビットに、ザイロリックがサロベールに、ニューロタンがミカルディスに変わってい、最下段にジェネリックス医薬品への変更不可と書かれている。薬剤に知識はまったくないが、なんとなく釈然としない。薬剤以外にも診察自体に多くの疑問が生じた。主治医に相談しなくてはならない。
 診察はさておき、駐車場からの出しな、千二百円を請求された。時間四百円だが、駅前の市営駐車場は時間百円、病院の駐車場のすぐ隣の百円パーキングは三十分百円(これでも高い)である。広大な駐車場だが、わたしが赴いたときは満車。病人の弱みにつけ込んで暴利を貪る、すこぶる不愉快な病院だった。五時間で二千円、週三回で六千円、月に二万四千円の駐車場代が必要になる。このような病院で長時間に及ぶ透析を行うのかと思うと、うんざりである。


2009年08月16日

気付かされたこと  | 一考   

 店をお手伝い下さっている素天堂さんを昨夜お送りした。方向は西、わたしにはもっとも不案内な場所である。ナビはついているが、アンテナが機能していないので役に立たない。隅田川がどうの橋がどうのといわれても、ちんぷんかんぷんである。神戸か明石ならどのように細い道であっても精通している。しかし、東京西方は鳥瞰図すら引かれない。左右どちらの車線を走ればよいのかすら分からない。何キロ先であれ、次が右折か左折かが分わかっていないと直進もおぼつかない。事故の大半は信号周辺で起こる、そして信号周辺は車線変更禁止である。それやこれやで素天堂さんにはすっかり迷惑をお掛けした。申し訳なく思っている。

 初日と二日目は松葉杖を使わなかった。それが災いして右足首が腫れあがった。初日は本当は九時に店を閉めたかった。それほどに痛みが酷かったのである。三日目からは松葉杖を用いたが、それでもなお腫れは引かない。湿布を施したちはらさんから大目玉を頂戴したが、老いてからの骨折は大変だと気付かされた。
 話序でに、中学校を卒業したときに身長は170センチだった。十五年前に腎結石で明石市民病院へ入院したときが169センチ、都立豊島病院へ入院したときが168センチ、それが今回の入院で166センチになっていた。腎不全のせいで、カルシウムが下りてこないので骨粗鬆症になっている。医師によるとまだまだ小さくなってゆくそうである。MRIを撮ったときに脳がスカスカになっているのに気付かされたが、背骨までが萎縮している。そうやって、やがて存在は形迹なく消えてゆく。


2009年08月15日

パピヨン  | 一考   

 退院後はじめて二食を満足に頂戴した。メインディッシュは三センチ角の唐揚げ一箇、二センチほどに切られた茄子と椎茸が半かけ、あとは菠薐草のお浸し二種である。ちなみに唐揚げには低蛋白の小麦粉が使われ、塩は使っていない。それに低蛋白米が百五十グラム。それにしても小さな一欠片の唐揚げがメインディッシュとは。療養食を食べる度に思うのだが、普通の食事をしてきた人には絶えられないだろうと思う。透析患者の半数が一年未満に死んでゆく理由のひとつは苛しい食事療法にある。隠れて焼き肉や寿司を食べ、症状を悪化させてゆく。わたしはこのような粗食には馴れ親しんでいるので平気だが。
 いま食している内容だと二食であってもカロリー、蛋白共に制限範囲に収まっている。そこでわたしは菓子を摂っている。菓子といっても食べられるものは限られる。練り羊羹、ミニ最中、コーヒーゼリー、ボンタンアメ三粒のうちの一種、といったところ。ちなみに練り羊羹は駄菓子屋で売っている一箇二十グラムのもので、これを一ミリずつ前歯で刮げるようにして食べている。ただ、ここにはわたしの自由がある。糖尿の人には申し訳ないが、このささやかな菓子が韃靼を渡るパピヨンに思われてくる。
 山崎さんとの帰路、EDについて語り合った。本題は透析患者とEDだったが、はなしは透析にとどまらない。揚句は包茎から間違えたマスターベーションの方法にまで及んだが、ここでそのはなしを繰り返すつもりはなく、透析患者に性欲は失くなっているとだけ書いておく。要するに、性欲と食欲というひとを突き動かす大きなファクターを喪ってまで生き続けるという、存在の不思議を主治医と語り合いたかったのである。おそらく、そこには夢見の、そしてイマジネーションの本質があるに違いない。


2009年08月14日

山崎利彦さん  | 一考   

 山崎医師来店、幹郎さんと一緒になって病について死について語り合う。幹郎さんはずいぶんと山崎医師を気に入ったようだが、然もありなんと思う。医師はわたしを街の不良親父と見立てている、よって気に入らなければ診療拒否も有り得ると考える。しかるに診察に来るということは、どうにもならなくなってなんらの扶けを求めている、そういう時は必要最小限の手立てを講ずる。さらなる診察が必要であっても、そこから先の判断は本人に委ねる。
 このようなことを書くと、まるで医師としての務めを投げ出しているかのようだが、決してそうではない。彼は間違いなく名医である、と同時に不良の扱いにも精通しているのである。わたしが「あと一年生きようと十年生きようと、そのような瑣末なことはどうでもよい」と書くとき、その真意を深く諒解する能力を彼は併せ持っている。
 聞いたはなしだが、スウェーデンでは子と親が同居することはない。親はしかるべき歳になると施設に這入る。施設の看護師は食事を提供するが、摂取行動は手伝わない、腕組みをして黙止するのみ。食べないという行為も食べられないという行為も均しく摂取拒否と判断される。要するにそこで老人を待っているのは餓死である。雑宝蔵経を源流とする「更級の姨捨山」や「木の股年」を想起していただければ結構だが、わが国の老人介護の有り様とはまったく異なる。その根本には個というものへの認識の差違が横たわっている。
 先日、癌を患っている友人に事後報告したところ、その友は抗癌剤の投与を止めたという。最期だけは自らの意志でと云っていたが、われら不良の最期はそうでなければならない。
 主治医と呼んでいるが、山崎さんは泌尿器科の医師である、にもかかわらず、骨折の修理は自分でするからレントゲンだけ撮ってくれ、痔の発作が起きたときも緊急外来で深夜に押し掛けて痛みだけ除去してくれ、と無茶を承知で専門外のことをお願いしてきた。要は全人的に信頼しているのである。山崎さんは医師であると同時に個としての倫理感を持っている。その振幅は尋常な距離ではない。迷いを迷いとして容認するにいかほどのエネルギーが必要かをわたしは知っている。わたしは複雑な存在が大好きである。かかる医師と知り合えたことに深く感謝したい。


2009年08月13日

身勝手  | 一考   

 「一日の摂取量は1800キロカロリー、蛋白は上限が45グラム、塩分は5グラム、カリウムは1800ミリグラム」と前項で書いた。蕎麦であれ、饂飩であれ、サンドイッチであれ、丼ものであれ、お好み焼きであれ、外食すれば一食でいずれかの数値が超えてしまう。第一に白米が食べられなくなったのは辛い、味のないものを味気なく食べ続けている。昨日も浦和の病院からの帰り、腹拵えをしなくては仕事にならないと思ったが外食はできない、遠回りをして拙宅経由でですぺらへ行く。
 店のお通しでナトリウムを使っていないものはない。スモーク類でなら焼き豚に直接塩は用いていない、しかしタレにはふんだんにナトリウムやカリウムが入っている。いかに簡単な料理とはいえ、味見せずに出すことはできない。もしも味見をすれば、拙宅での食事制限がさらにきついものになる。フードに関して迷い続けている理由である。松友さんが註文なさるピッザやウインナなら味見せずに出せる。この件に関しては何かしらの方策が必要である。
 余談ながら、ウインナなら一本でわたしの一日の許容量を充たす。ヒデキさんがサラミソーセージを持ち込まれていたが、二枚食べればお終い、他には終日なにも食べられなくなってしまう。当分は持ち込み歓迎である。
 クレアチニンと尿素窒素を除いて血液の状態はずいぶんと改善された、降圧剤のせいで血圧も正常値に戻っている。医師のいうことを聞かないわたしだが、だからこそ食事療法だけは守りたいと思っている。
 昨日は駐車場から店までの一キロを松葉杖なしで歩いた。三十分を要したが、いずれ歩かなければならない。山崎医師が骨はまだついていないよと仰有っていたが、それを気にしていては何もできない。どうせ劃られた命である、ある程度の勝手はさせていただく。


2009年08月12日

初日  | 一考   

 二十六日ぶりの営業再開である、終日店は混み合った、ご来店のみなさんに感謝したい。十一日は通院の日だが、はじめて屋外での歩行訓練、うまくいきそうに思えたのだが、やはり長時間になると疲れる、帰りは疲労困憊だった。初日はちはらさんの協力を得たが、今日からは素天堂さんがお手伝いしてくださるとか、忝なく思う。ふたり併せて百二十四歳、よろしくお願いする。


2009年08月11日

寡多録  | 一考   

整理のついたものから掲載してゆく。ゆっくりだが、どうかよろしく。

アードベッグ10年※900円
 46度のディスティラリー・ボトル。
 ノン・チル・フィルターを謳い、往年のアードベッグを意識して造られたファースト・エディション。ボトリングは2000年初頭。
 フロア・モルティングが最後に行われたのは1976年から77年にかけてであり、80年代の閉鎖期間の後はポート・エレンが供給する麦芽を用う。木の幹をかじるようなスモーキー・フレーバは望むべくもないが、アードベッグの先行きへの不安を解消させるにたる出来映え。特にヘビーにピートを焚き込んだ麦芽を用いたモルト・ウィスキーの登場には、今暫くの猶予が必要。

スモークヘッド(イアン・マクロード)900円
 43度。中身はアードベッグ。
 ベリーヤングと比してアルコール度数は低いが、その分リーズナブル。カスクのコンディションもよく、ベリーヤングと同じコンセプトで造られたのでそれなりに美味。

アードベッグ '90(ゴードン&マクファイル) 1000円
 コニッサーズ・チョイスの11年もの、40度。
 前回頒布された78年蒸留の21年ものが終売になり、本品に取って代わった。同じコニッサーズ・チョイスで、73、74、75、76、78、79、90、95、96年のヴィンテージがある。

アードベッグ '90(ダグラス・マクギボン)1300円
 プロヴァナンスの一本。バーボン・カスクの10年もの、43度。
 頗るユニークにして、かつ巧緻な味わいのアードベッグ。微かなバニラ香を持つミディアム・ボディ。口に含むと甘いフローラルな味わい。ただし、ラスト・ノートは正真のアードベッグ。G.M社の加水タイプと比してはるかにソルティー、長く続くフィニッシュは申し分なし。
 フローラルな味わいの理由はポート・エレンのモルトを使用したこと。かかるボトルがコレクターズ・アイテムになるのなら異議はない。

アードベッグ・オールモスト・ゼア '98※ 1300円
 ディスティラリー・ボトルの9年もの、54.1度のカスク・ストレングス。
 04年発売のベリー・ヤング、06年発売のスティルヤングに続いて07年に頒された。同じ蒸留年のウィスキー熟成の過程を愉しむとのコンセプトでボトリング。アードベッグ10年への最終のボトルである。
 ピートオイル、ビターチョコレート、松の実、樺タールが複雑にミックスした香り。前二者とは異なって噛み応えと香味に深みあり、一年の差とは思われない。

アードベッグ・スティルヤング '98※1400円
 ディスティラリー・ボトルの8年もの、56.2度のカスク・ストレングス。
 04年発売のベリー・ヤングに続いて06年に発売。同じ蒸留年のウィスキー熟成の過程を愉しむとのコンセプトでボトリング。本品についで08年にオールモストゼアが発売された。他にコミッティー・ヴァージョンやウィスキー・フェア用に異なるヴィンテージのものがボトリングされている。ソフトでクリーミーな甘さの出現。

アードベッグ・ベリーヤング '98※ 1400円
 ディスティラリー・ボトルの6年もの、58.3度のカスク・ストレングス。
 前年のコミッティー会員向けボトルの一般市場向けの商品。2004年8月ボトリング、ファーストフィルのバーボン樽で熟成。限定20,000本。翌2005年にも別ロットのベリーヤングが頒されている。若々しくフレッシュで刺激的。

アードベッグ・ウーガダール※1400円
 ディスティラリー・ボトルのカスク・ストレングス、54.2度。
 2003年12月発売。93年バーボン樽熟成のアードベッグをベースに、75年、76年のシェリー樽熟成原酒を加える。ウーガダールとは仕込み用水を採取する泉の名。
 バーベキューソースやスペアリブにつけるソースのような味を持つ。

アードベッグ・ルネッサンス '98※ 1600円
 ディスティラリー・ボトルの10年もの、55.9度のカスク・ストレングス。
 1998年に蒸留された原酒が熟成される過程をボトリングした一連の流れの到達点として、2008年7月25日に発売。
 トロピカルフルーツの果汁、バニラやホットシナモンのスパイス、パイナップルの風味、芳しい花のキャラクター。ピートオイルとがぶつかりあって共存し、力強さを感じさせる。ピーティーな熟成の極み。

アードベッグ・アリー・ナム・ビースト '90※1800円
 バーボン・カスクの16年もの、46度のディスティラリー・ボトル。
 クリーミーでスモーキーなフレーバーの中に感じるフェンネルや松の実のキャラクター。ピート・オイルの粘り気のあるファッジ・ソースの霧雨。

アードベッグ '00(インプレッシブ)1800円
 6年もの、62.7度のカスク・ストレングス。
 昔日の荒々しさが残る、ボトラー版ベリー・ヤング。言い換えれば、不良のアードベッグ。インプレッシヴ・カスクはダンカン・テイラー社のボトル。美味。

アードベッグ '90(マーレイ・マクデヴィッド)1800円
 バーボン樽の9年もの、46度のシングル・カスク。
 他に同じヴィンテージの8年もの、91年の9年ものと11年ものも頒されている。

アードベッグ '91(スコッチ・モルト・セールス)2000円
 ディスティラリー・コレクションの一本。バーボン樽の10年もの、60.1度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。
 ボトリングはグラスゴーのマルコム・プライド社。リリースはスコッチ・モルト・セールス社。

アードベッグ '93(ダグラス・レイン)2000円
 オールド・モルト・カスクの一本。10年もの、50.0度のプリファード・ストレングス。限定348本のシングル・カスク。
 G.M社のボトルと比して、アルコール度数がもたらすインパクトあり。マクギボンのボトルが持つフローラルな香りはなく、頑強なまでの塩味。よりオーソドックスな味わい。

アードベッグ '78(ゴードン&マクファイル)2000円
 コニッサーズ・チョイスの一本。21年もの、40度。

アードベッグ '91(ゴードン&マクファイル)2000円
 スピリッツ・オブ・スコットランドの一本。13年もの、52.6度のカスク・ストレングス。318本のリミテッド・エディション。
 G.M社のアードベッグを侮ってはいけない。このようなとんでもない隠し球が出てくる。ラベルに記載されたスペイモルト・ウィスキー・ディスティラリー社はゴードン&マクファイル社の子会社。
 店主が呑んだスピリッツ・オブ・スコットランドのアードベッグは、78年・53.9度・バーボン・バレル、90年・58.4度、90年・56.4度、91年・55.6度、91年・52.6度・リフィール・シェリー、91年・52.5度・リフィール・シェリー、93年・54.4度、93年・56.2度・シェリー・バット、94年・55.0度・バーボン・ホグス、94年・55.8度・バーボン・ホグスの10種類。他にもあろうかと思われるが、ダグラス・レイン社のボトルと共に、最良のアードベッグである。

アードベッグ17年※2000円
 40度のディスティラリー・ボトル。
 80年代初頭に蒸留所が閉鎖される直前のモルトを用いる。シグナトリー社の74年のボトルと比してスモーキー・フレーバーは控え目に、ヨード香は抑えられている。相応分、甘味を伴うフレーバーに優れ、喉ごしは淡くまろやか。

アードベッグ '74(シグナトリー)2300円
 23年もの、43度。3樽、限定610本のリミテッド・エディション。他に同じヴィンテージでカスクの異なるものあり。
 同じヴィンテージのカスク・ストレングスには一歩譲るが、当ボトルもまた、こしかたのアードベッグを語るに欠かせぬ一本として記憶されるは必定。

スティルベリーヤング・アイラモルト '00(リンブルグ)2300円
 リフィール・シェリーバットの7年もの、59.1度のカスク・ストレングス。
 ドイツの南西部で催されるリンブルグ・ウイスキー・フェスティバルのボトル。さほどスモーキーでなく、やわらかさの中に、ほんのりスモーク。シェリーバットの影響か、マイルドな口当たり。ディスティラリー・ボトルと比してすこぶる美味。

アードベッグ '90※ 2500円
 ファーストフィル・バーボンの13年もの、55.0度のカスク・ストレングス。日本向け1140本のディスティラリー・ボトル。
 ウーガダールの騒々しい香味とは異なり、こくバランス共に申し分なし。

アードベッグ '75※2500円
 23年もの、43度のディスティラリー・ボトル。
 74〜75年は殊更に美味にして稀少。本品は98年発売のグレンモーレンジ社二回目のヴィンテージ・ボトル。
 微かな甘味を含んだ磯の香。しっとりと落ち着いたやや骨太の酒質。
 極端な煙臭さ、いつまでも残るスモーキー・フレーバー。


2009年08月10日

寡多録  | 一考   

 お見舞い金を頂戴した方のために在庫一本の貴重なウィスキーを開栓する。みなさんがお求めのアイラモルトである。事前に声をかけていただければ幸い。お一人様二杯まででお願いする。
 今月のサービス品はポート・エレン75年蒸留、24年もの、43度、オーク樽、402本のリミテッド・エディション、シグナトリー社のミレニアム・エディションの一本である。売価は1600円、在庫は二本、売り切れるまでのサービス品である。
 これからウィスキーの値は公表する。書き直した寡多録は順次掲載してゆく。他店と比較していただければ幸甚。より安い店があってもわたしは関与しない。

ザ・カスク・オブ・ヤマザキ '93(サントリー)※ 1900円
 14年もの、62.0度のカスク・ストレングス。539本のリミテッド・エディション。
 サントリー初のヘヴィリー・ピーテッド・モルト。熟成はパンチョン樽。カスク由来の甘味とスモーキーな香り、のびやかなフィニッシュ。
 同時発売にシェリー・バット熟成のものがある。追って08年3月、白州のヘヴィリー・ピーテッドとボタコルタ熟成の二種がボトリングされる。

ザ・カスク・オブ・ハクシュウ '93(サントリー)※1800円
 14年もの、58.0度のカスク・ストレングス。232本のリミテッド・エディション。樽違いあり。
 白州のヘヴィリーピーテッド・モルト。ウッドタイプはホワイト・オーク、カスクタイプはバーボン樽を組み替えたホグスヘッド230リットルを用いる。
 ロットが少ないので製麦業者(モルトスター)は決まっていないが、おそらくシンプソンと思われる。
 山崎ほどの意外性はなく、やはり白州だと思わせる品のよさを持つ。青林檎のキャラクター。極めてドライ、なんの抵抗もなく、喉の奥にストンと落ちてゆく。この透明感は日本のウィスキーに総じて言えることであって、間違いなく水のせい。

ザ・カスク・オブ・ハクシュウ '93(サントリー)※ 1800円
 14年もの、60.0度のカスク・ストレングス。571本のリミテッド・エディション。
 白州のシェリーモルト。ウッドタイプはスパニッシュ・オーク、カスクタイプは480リットルのボタ・コルタ。
 ボタ・コルタはバット樽と容量は同じだが寸が短い、逆に直径が大きいのである。従ってウィスキーとカスクの触れ合う面積が小さい。それだけ熟成がゆっくりなされる。十四年にしてはシェリー特有の渋味が少ない。甘酸っぱさが濃厚で微かな苦みがあり、フィニッシュはしっかりと伸びる。

ハクシュウ・ヘヴィリーピート(サントリー)※1800円
 48度。
 白州を構成するさまざまな原酒のなかから数種類のヘヴィリーピートをヴァッティング。国内外を併せて6000本のリミテッド・エディション。ザ・カスク・オブ・ハクシュウ '93のヘヴィリーピーテッド・モルトより美味いのは不思議。

アズ・ウィ・ゲット・イット8年(イアン・マクロード)1400円
 オーク・カスクの8年もの、59.0度のカスク・ストレングス。中味はタリスカー。
 アズ・ウィ・ゲット・イットの商標をイアン・マクロード社が買収、当初はスペイサイドのモルトをボトリングしていたが、最近はアイラ・モルト、それもラガヴーリンを専門にボトリングしている。

マクローズ '89(ハンジアティシィ)1400円
 04年のボトリング。バーボン・カスクの14年もの。384本のリミテッド・エディション。中味はタリスカー。
 ハンジアティシィはイアン・マクロードの独向け。他に85年蒸留の18年もの348本、86年蒸留の17年もの264本あり。

ヘブリディーズ '89(キングスバリー)1600円
 02年のボトリング、18年もの。ホグスヘッドの46度。300本のリミテッド・エディション。中味はタリスカー。

タリスカー 57 ノース※1800円
 57ノースという名前は、蒸留所のある緯度(北緯57度)と、イングリッシュプルーフ100度(57%)にちなんだもの。ヨーロッパの空港と北欧のフェリー船内専売の限定品。

タリスカー '92(ジャン・ボワイエ)2400円
 07年のボトリング、15年もの。ワンショット・コレクションの一本、58.7度のカスク・ストレングス。

ハイランドパーク '78(サマローリ)2000円
 78年蒸留、95年ボトリング。オーク・カスクの17年もの。45度、360本のリミテッド・エディション。
 サマローリ社は1968年創業のイタリアブレア市にある酒商。スプリングバンク蒸留所、ボトラーのケイデンヘッド社とその子会社ダッシーズ社と太いパイプを持ち、オリジナルのヴァテッド・モルトも頒している。
 同じイタリアの酒商インター・トレード社についてひとこと。インタートレード社は伊太利亜リミニ市のボトラー。オーナーのナディ・フィオリは当地に於ける業界の草分け。継続的にボトリングはしていないが、斬新なラベルとクオリティーの高さは特筆もの。生産量の少なさとカリスマ性によって、大半はコレクターズ・アイテムとなっている。同社のウィスキーはサマローリ社同様、檻が多く含まれるのが特徴。ディスティラリー・ボトルでは味わえない個々の樽の稟質、即ち微妙な持ち味を愉しめる。

ハイランドパーク '78(ボトラーズ)2600円
 シェリー・カスクの18年もの、57.6度のカスク・ストレングス。
 ザ・ボトラーズ社は1994年、エディンバラにて設立。同じエディンバラのジェームズ・マッカーサー社と共に、閉鎖された蒸留所の珍しいモルトを取り扱うことで識られる。コニャックを想わせる撫で肩の丸瓶とシンプルなラベルが特徴。同社の商品の大半はディスティラリー・コンディション。それ故、面白味には欠けるが、破綻のないのが取り柄。

アードベッグ・スーパーノヴァ※1800円
 58.9度のディスティラリー・ボトル。
 アードベッグ最強のフェノール値。

カリラ'95(インプレッシヴ)1400円
 インプレッシヴ・カスクの一本。08年のボトリング、13年もの、60.4度のカスク・ストレングス。
 インプレッシヴ・カスクはダンカン・テイラー社のボトル。

スプリングバンク10年※800円
 ファースト・エディションは2000年春、バーボン・カスクの17年もの、46度のディスティラリー・ボトル。

スプリングバンク・ゴールドファウンダーズ(ロッホデール)1600円
 08年12月発売の最終リリース。バーボン・カスクの17年もの、46度のミディアムボディ。
 前回のブラック・ファウンダーズから8箇月、さらに熟成を経た17年ものとしてボトリング。過去二度ののボトルは年数の異なるバーボン樽とシェリー樽数種類のカスクをブレンドしていたが、前回からはエイジングを記載。本品はバーボン・カスクのみを用いる。

ストラスミル'92(ジェームズ・マッカーサー)1300円
 オールド・マスターズの一本。03年のボトリング。11年もの、64.2度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。


明日再開  | 一考   

 透析のための精密検査や透析シャントを造る手術を受けないといけないので、店は開けても早晩、入院しないといけない。日付其他はいまだ未定。予定が立たないまま、取り敢えずの開店である。
 いつまで店の営業ができるか、今のわたしにとってもっとも気掛かりな問題である。医師のひとりは五年が限界だろうという。いまひとりの医師からははるかに短い期間を示唆された。多くの患者を看てきた医師の意見を拝聴するが、個体差があって、そこまで持続できるとは限らない。半年単位で考えるしかないのだろうが、それにしても、拙宅のモルト・ウィスキーの在庫を処分するのは不可能である。例え五年かけてもアードベッグやポート・エレンはなくならない。安価なウィスキーの値は変えないが、一杯2000円から5000円のウィスキーは大幅に値下げしようと思っている。残ったウィスキーの処理はおっきーさんや幹郎さんにお願いする予定。四、五種の定番を除いて、現在の六百種の在庫は売り切ってゆく。要するに、新規ボトルの購入は極力減らしてゆく。


2009年08月09日

私様  | 一考   

 今回の入院に際し、実に多くの方のご好意に甘えた。いくら感謝しても感謝しつくせるものではない。と同時に、いささか困惑させられるようなメールも頂戴した。
 腎不全になったからと云って、同情を買うつもりはなく、嘆き節を書いているつもりもなく、もし左様読まれたとするなら、わたしの文章が拙かったというだけのこと。ことごとくは私事であって、私事に興味をお持ちでない方が当掲示板を繙くことはなかろう。ですぺらの常連さんにあっても、いつも詰らないことばかり書いている、と忠告してくださる方の幾人かはいらっしゃる。
 わたしがあと一年生きようと十年生きようと、そのような瑣末なことはどうでもよく、ひとの存在は新陳代謝だと常日頃から書いている。為合せ、不為合せといった問題も他人のことであればこそ同情もするが、我が身のことなら論外。金が失くなることも、命が劃られることも、あるがままに受け容れるしかないと心得ている。繰り返すが、透析を受けて生きのびようと、拒否して死のうと、かかる世俗への配慮はどうでもよいことなのである。
 これからどう振る舞うかはとうに決めている。そしてそれを決めるのは私いちにんのみ。それまでの個の搖れもしくは搖れと思しきものを書き綴っているのであって、明瞭な概念にはいささかの興味も未練もない。


よき友  | 一考   

 年少者がすばらしいことを書けば、褒めそやさなければならない、それが例え自分の子であっても。掲示板は毎日覗いているが、メールは三日に一度ぐらいである。だから隆さんからのメールが届いているのに気付かなかった。
 隆さんについて書くにはいささかの躊躇いがある。その躊躇いはわたしが親として成すべきことを何ひとつしていないところにある。何もしていないにもかかわらず、隆さんは親としてわたしを遇してくださる。言い換えれば、わたしは彼によって親にさせられているようなものである。文中に「もしお手伝いできるようなことがあれば言って下さい。親孝行らしき事はまだ何もできていなかったもので」とある。恨まれてこそ順当、憐憫の情をかけられるとは意外だった。お気持ちに対し、深甚の謝意を表したい。葬儀は願い下げだが、数年後には彼なりの野辺送りをすることになろうか。海原への散骨を望むが場所に希望はない、とでも書いておこう。
 同じメールのなかに「沢山の人が、まだまだあなたを必要としていますし、私もそんな中の一人であります」と書かれている。双方が当事者であることは差しおいて、自らの心情の吐露に先立って見知らぬ他者への気配りを忘れない。彼がいつ頃からこのような遠慮の構造を学んだのか分からない。ただ、見事な心掛けと感服させられた。またひとり、よき友を得たと思う。


2009年08月08日

緩慢な死  | 一考   

 来週十一日のですぺら営業再開目差して、歩行訓練に明け暮れている。駐車場から店までの一キロが歩かれないと営業が覚束ないからである。
 末期腎不全の特徴のひとつに身体が疲れやすくなるというのがあるが、とにかく、よく寝るようになった。起きてる時間は八、九時間で他はずっと寝入ったままである。これではまるで寝るために生きているようなものである。腎不全に罹ったひとは為事ができなくなるというのがよく分かる。
 透析患者のブログを読んでいてひとつ気付いたことがある。誰も触れていないと云うことは個体差があるのかもしれないが、性欲についてである。わたしは2002年頃から急速に性欲が衰えていった。何時からとは書かないが、このところ数年は完全に性欲はなくなった。去年、四谷シモンさんと紀伊國屋書店でお会いし、若い女性と暮らしているといったところ、性欲はないでしょうと問われた。ないですねと応えたが、それは二重の罪を犯しているとの鋭い指摘を受けた。視力の衰えについてはすでに書いたが、これらはすべて腎不全に起因するようである。
 個体差があるので、なんとも云えないが、透析患者の半数は五年以内に死亡する。そして開始から十年以内にほとんどの患者は死亡する。なかには二十年を超えて透析を続けているひともいるが、それは例外であろう。そもそも腎不全は不可逆な病であり死の宣告である。医療技術の発達によって透析で生かされているが、基本的には人工呼吸器と同じく、人工腎臓(機械)につながれての延命に違いない。いずれにせよ、血液透析に入るのは余命のカウントダウンに入るのと同じことである。


アクセスログ  | 一考   

 当掲示板で異変があった。いつも面白がって見ているアクセスログ閲覧だが、このところ「ですぺら」やシングルモルトを追い越して、「田中香織」と「カセットガス 自殺」がトップにやってきた。後者はともかく、前者はちはらさんの本名なのだが、同時に押尾学事件の変死体女性の本名(源氏名、麗城あげは)でもある。某紙によると押尾学は半年前から麗城あげはさんと不倫関係にあったらしいが、わたしは聞き及んでいない。昨日は出社すると、「あれ、生きていたの」と同僚から声をかけられたという。はなしはそこまでである。
 当掲示板は私事かモルトウィスキーに関する記述を専らとする。公人を除き、他人についてはなにかしらの事情がない限り触れない。それがウェブサイトにおける唯一の礼儀だと思っている。


2009年08月07日

悶絶薬  | 一考   

 一日の摂取量は1800キロカロリー、蛋白は上限が45グラム、塩分は5グラム、カリウムは1800ミリグラムが今月の食事の内容です。牛丼だと並盛り一食で超えてしまいます。従って、すべて自炊になります。絶対量が少ないのでハイカロリーの食事がよろしいのですが、なかなか相応しい食べ物がなく、難渋いたしております。
 菜食はわたしにとっては夢のまた夢になりました。野菜は果物同様、カリウムが非常に高いので、そのままでは食べられません。何度も水洗いし、数時間水に晒す、もしくは温野菜をごく少量になります。芋を食べたいなら菎蒻を、豆を食べたいなら油揚げか凍り豆腐、または醤油抜きの湯葉となります。
 「春陽」や「晴米」は炊飯米です。外食は禁じられました。わたしは料理人なので、カリウムがどうの、ナトリウムがどうのと云われてはなしは通じますが、そもそもプリン体や塩分を含まない食品はほとんど存在しません。はじめて食事療法に入った方にとっては絶望的な作業になると思います。
 お説のとおり、シアナマイドはマゾヒストを狂喜乱舞させるための薬ですが、断酒に医師が必要でしょうか。わたしは自分の意志で煙草を咽んでいますが、禁煙のやむなきに至れば、即刻やめます。煙草に限らずですが。


断酒  | れいはる。   

一考様

お酒をやめたいと頼んだら
「死ぬほど苦しむ薬があるよ」と
いって処方してもらったんです。
残念ながら禁酒中なんです。

ローカロリーで
塩分控えめのおいしい食事ですかね。

水炊でせふか。
僕も菜食主義宣言をする日を夢みて
野菜を食べているんですけれど
完璧というのは手ごわいですね。
欲望に負けまくってます。

私事でお恥ずかしいのでこのへんで。
重ね重ねですが、おだいじになさってくださいませ。


2009年08月06日

営業再開  | 一考   

来週十一日からですぺらの営業を再開します。
例によって片肺飛行で、フードは持ち込みで結構です。
当分は車での出勤になりますので、午後七時開店です。
どうかよろしくお願い致します。


恢復  | 一考   

 屋内に限られるが、松葉杖なしで歩けるようになった。といっても、支えがいたるところにあるトイレとキッチンだけなのだが。しかし嬉しい、本当に嬉しい。事故から二十二日目、順調な恢復である。昨夜は風呂に入り、身体をはじめて洗った。骨はまだくっついていないが、リハビリの看護師は愕いている。これもみなさんのお陰である。
 今までは筋や筋肉を伸ばす訓練ばかりしてきたが、これからは縮める練習をしなければならない。こちらは体重をかけなければならないので、痛みが走る。それにしても、この調子だと一箇月半で全快しそうな勢いである。


れいはるさんへ  | 一考   

 シアナマイドは抗酒剤ですが、どうして必要になったのですか。ですぺらには約一名、シアナマイドが必要と思われる装訂家がいらっしゃいます。劇薬ですよ、あれは要注意です(シアナマイドが劇薬か、装訂家が劇薬か判然としない、このような書き方がわたしの好みなのです)。
 食事制限に入ったので日々困惑させられています。蛋白質、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンは厳禁です。果物は全滅ですが、缶詰のフルーツなら構わない、その理由はカリウムが水に溶けるからです。ちなみに柿ピーは一日十五粒が限界だそうです。熱量は摂らないといけないのですが、栄養にはさまざまな制限が設けられています。早い話がでんぷんと砂糖を喰っていれば、熱量だけは大丈夫なようです。糖尿のひとはその糖分すら駄目で、一体なにを食しているのでしょうね。
 でんぷんを米のかたちに成形加工したものがでんぷん米、これは不味いです。透析が続かない理由のひとつに食事療養が上げられます。水は一日にコップ一杯、薬は唾液で嚥下しないといけません。欧米では透析患者の自殺率が高いのですが、日本では病死扱いで、自殺にはカウントされません。数は書きませんが、病気が理由の自殺を含めればわが国の自殺者数は約倍になるそうです。それも自愛のヴァリエーションのひとつかと思いつつ・・・。


ご自愛。  | れいはる。   

一考様

こんにちは。
れいはるです。

シアナマイドという薬を
医者からもらって
試しにそれを飲んでみて
更にウイスキーを飲んだら

最初に顔が赤くなり
次に顔が黒くなり
最後の顔がまっしろになった。

鏡をみたら
瞳孔が開いたようになっていて
あれはたのしかった。

一考さんはなにを栄養にして生きているのか
僕にはよくわからないけれど
栄養をよくとって
たまには休まないと。

どうぞ、ご自愛くださいませ。

ではまた。


2009年08月05日

迷い  | 一考   

 先日、高遠弘美さんの見舞いに与った。お忙しいなかをわが身ごときのために時間をお割き下さって恐縮している。「Oの物語」について書かなければならないが、今のわたしには到底無理である。このところ、自分が罹った病気についてばかり書いている。その理由は集中力をなくしたからである。眩暈がひどく、ひとつことを考え続けられない。最近書いている文章にも誤字脱字が多いのではないかと案じている。「Oの物語」についてはいずれ書かせていただくとして、今夜もまた私事を書き連ねる。

 今日は医師と数時間、医学を超えたはなしをした。腎臓は悪化の一歩、一週間以内に透析をはじめなければ一箇月も持たない数値になったと医師は云う。透析に問題があるのでなく、生きながらえる価値がわたしにあるのかどうか、迷いつづけている。死ぬことばかりを考えていた若い頃の感慨がいまなおわたしのなかに残っているとすれば、躊躇なく死を選ぶはずである。moonさん宛に書いた文章だが、「とりとめもなく」の末尾が気になって仕方がない。
 かかる迷いが生じるのは分かっていた。分かっていたが故に今回の一連の書き込みの頭に「腎不全」を置いた。そしてその迷いを他者はいかように処理しているのか、そこのところを医師と話し込んだのである。当然、結論が得られるとは思っていない。
 「渡辺さんのような考えをお持ちの方はままいらっしゃる。しかし、現状では毒素が頭にまで回っている。透析さえはじめればより冷静にものごとを考えられるのではないだろうか。そして私たちの為事は、一日一日、単なる延命策にこころを摧くことだ」。実に誠実な医師である。延命策などと云う文言を吐露させたことを済まなく思う。
 とりあえず、身体障害者手帳取得の手続きは済ませた。透析をはじめるしかないことは分かっている。そして透析をはじめるであろうことも分かっている。ただ、もう少しこころを整理し、風通しをよくしておきたいのである。


2009年08月03日

遺伝子組換え作物  | 一考   

 御見舞いとの札をぶらさげて明石蛸がやってきた。胴と足をばらばらに解体して冷凍しなおす。胴の半分と足一本は生のままバター炒めで頂戴した。送り主の季村敏夫さんに感謝する。ですぺら再開の折に、お世話になった方々にバター炒めを味見していただこう。わたしは塩が使えないので山椒と檸檬だけの味付けになったが、やはりもの足りない。店では塩をたっぷりと使うつもり。

 「やさしお」という塩分二分の一の食卓塩をちはらさんが見付けてきた。「塩味はそのまま、塩分二分の一」が売りなのだが、釈然としない。ナトリウムの替わりにカリウムやマグネシウムを増やしただけではないのかと思う、栄養士に相談してみなければ分からない。
 他にも減塩醤油、減塩味噌、減塩マヨネーズ、減塩ウスターソース、無塩バター、無塩マーガリン、減塩だしの素等々がある。買い物に行かれないので、減塩醤油と減塩だしの素のみ入手した。塩のかわりに使ってもかまわない調味料は胡椒、山椒、辛子、七味唐辛子、山葵、生姜、紫蘇の葉、梅干し、カレー粉、酢、檸檬、柚子、かぼす、トマトピューレーである。従って、味付けの方法を根本から変えなければならない。
 低蛋白米「春陽」を購入したが5キロ3000円(送料700円)、いままで5キロ1400円以下の米しか口にしたことがない。LGCソフトの「晴米」5キロ1850円(送料735円)と混ぜ合わせて食べている。副食は横浜のメディカルフーズから試食用12食7200円(送料一部負担342円)を取り寄せた。一食あたり600円で、ネット検索による最安値だった。
 わたしは酒も煙草を嗜むので食費は切り詰めている。米や調味料それに菓子などを加えても月にならすと1万5000円までである。それが一挙に三倍に膨らみそうである。「療養食こそ、おいしくなくては」がこのようなメーカーの宣伝文句だが、「療養食こそ、安く利用できなくては」と思う。わたしが取り寄せたコースはたんぱく調整食で一食9グラムとなっている。特許を無償公開したゴールデンライスのように、遺伝子組換えによる成分改変食品の発達が待たれる。
 わたしのような末期腎臓不全のみならず、糖尿やスギ花粉などに悩んでいるひとは結構いる。茶葉からカリウムを減らすぐらいは技術的に可能だと思うが、環境や消費者団体などへの影響を顧みて一部自治体では条例で遺伝子組換え作物の栽培が規制されている。まったく禁止されている都道府県も10を算える。また、スギ花粉症緩和米などは医薬品としての規制を受ける。前述の春陽も規制が激しく、それが高値の理由になっている。ここにも健常者(マジョリティ)の専横がある。

このページについて..

2009年08月

に「ですぺら掲示板2.0」に投稿されたすべての記事です。新しいものから順番に並んでいます。

次のアーカイブ←:2009年09月

前のアーカイブ→:2009年07月

他にも多くの記事があります。
  • メインページ
  • アーカイブページ

  • も見てください。

    アーカイブ

    ケータイで見るなら...


    Google
    別ウィンドウ(orタブ)開きます。

    牛込櫻会館(掲示板1.0他)内
    ですぺらHP(掲示板2.0他)内
    Powered by
    Movable Type 3.34