ヤフオクは11点のうち8点が売れた、これで今月は過ごせる。店の方はダグラス・マクギボンのアードベッグを追加した。その紹介とモルトスターについて一言述べておきたい。なぜかモルトスターに関する記述がわが国にはない、サントリーもニッカもモルトスターからモルトを買っているにもかかわらず。
アードベッグ '90 ダグラス・マクギボン 1500円
プロヴァナンスの一本。90年蒸留、00年ボトリング、バーボン・カスクの10年もの、43度。
頗るユニークにして、かつ巧緻な味わいのアードベッグ。微かなバニラ香を持つミディアム・ボディ。口に含むと甘いフローラルな味わい。ただし、ラスト・ノートは正真のアードベッグ。ゴードン&マクファイル社の加水タイプと比してはるかにソルティー、長く続 くフィニッシュは申し分なし。
フローラルな味わいの理由はポート・エレンのモルトを使用したこと。かかるボトルがコレクターズ・アイテムになるのなら異存はない。
ア−ドベッグ蒸留所は1979年にはフロアモルティングを止め、1980年には生産縮小、1983年には完全に操業を停止した時期がある。その間はポート・エレンのモルトを使用していた。そのポート・エレンはモルトスターだが、モルトスターとは蒸留所の細かい指示によってモルトを生産する。アイラ島の蒸留所へ提供するモルトならいざ知らず、他の地域へ提供されるモルトはピートを強く炊かない。ディアジオ社はその傘下に四つのモルトスターを持っている。最大のモルトスターであるグレン・オードをはじめ、ポート・エレン、グレネスク、ブレチン(グレンカダム)である。いずれのモルトスターも内容は同じで、蒸留所の指示通りのモルトを作っている。ポート・エレンだからピートが強かろうとよく聞くが、そのようなことはあり得ない。かつて蒸溜していたポート・エレンとの混同でないだろうか。
追記
ア−ドベッグ蒸留所は1989年に再開し、1997年にはハイランドのグレンモーレンジ社に買収され、さらにグレンモーレンジ社は2006年には巨大複合企業のLVMH(ルイヴィトン・モエ・へネシー。その名の通り、ルイヴィトンとドンペリで有名なシャンパンメーカーのモエ・エ・シャンドン、ブランデーのヘネシーの合同企業)に買収され、結果的に現在はLVMHの傘下となっている。