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2009年12月 アーカイブ


2009年12月31日

鴨南蛮  | 一考   

 今日は饂飩の鴨南蛮を作ります。鴨南蛮といってもさまざまな食し方があり、冷たい蕎麦を暖かい汁で頂戴するのが一般的だと思うのですが、こんかいは通常の温饂飩にしました。饂飩は吉野葛が這入ったもので、特に旨くはないのですが、少々雅な喉ごしかと思われます。
 最初は治部煮にして饂飩の上に添えようかと思いましたが、残りの使い回しがよろしくないので、軽く炙って後は焚くことにしました。東京の鴨南蛮は濃厚な味付けで、南蛮が意味する「なんば」すなわち葱は直角にぶつ切りにするのが決まりごとのようですが、わたしは白髪葱にしました。理由は食べていただければ分かります。


2009年12月30日

鼻糞  | 一考   

 鼻から排泄される液汁を鼻汁もしくは鼻糞という。その鼻をかむ紙を鼻紙という。鼻糞は不浄のものであって、それを捨て置かずに鼻をかむのはエチケットである。ただしそのエチケットがエチケットたるためには鼻をかんだ鼻紙がゴミ箱へ捨てられなければならない。近辺にゴミ箱が見当たらなければ、ポケットへいれて持ち帰るのが当然であろう。トイレで流せばトイレは必ず詰るが、生理用具を捨てるためのゴミ箱を設置していない店はないだろう。それでなくとも、ゴミ箱を置いていない店舗はないだろうし、駅やコンビニへ行けば必ずある。わたしは鼻炎なので家や車中をはじめ身の回りはゴミ箱だらけである。
 なぜこのようなことを書くかといえば、客で約一名、かんだ鼻紙を丁寧に丸めてカウンターの上へ並べて帰るひとがいらっしゃる。親の顔が見たいとはこのことで、自宅ではどうなさっているのだろうかと思案する。自己中心との言葉があるが、きっとこのような方を指すのであろう。カウンターでゲロを吐いて一言の謝罪もなく傲然と帰られる方、または使用済みの生理用具をカウンターの上へさらけだして帰られる方、そのような人はいないだろうが、鼻糞の忘れ物も似たり寄ったりである。
 日常生活とは恐ろしいもので、ここかしこに人品骨柄があらわれる。おそらく、その人が書かれるものも件の鼻糞のようなものと思えばよいのかしら。


2009年12月29日

米にもいろいろ  | 一考   

 ヘモグロビンは11.6、造血機能は働いているようである。そちらは良かったのだが、腎機能は着実に悪くなっている。クレアチニンは8.55、すでに透析に這入っていておかしくない数値である。暫く止めていた活性炭の服用を薦められる、腎臓の保護のためだそうである。

 「米180cc(150グラム)は炊飯すると約350グラム、2.3倍ほどの重さになる」と書いたが、これにも例外は多々ありそうである。「春陽」と「晴米」では炊きあげた時の重量がまるで違ってくる。「春陽」と比して「晴米」は約1.2倍の質量がある。おそらく水分の含有量が異なるのだと思うが、正確な理由は分からない。米屋によると、低蛋白米に限らず、米一般について云えることらしい。書物から得た知識はしばしば現実の場から訂正される、その好例であろうか。


2009年12月28日

料理人  | 一考   

 某ホテルへ働きに行った友人から、あちらでは三種類の魚しか捌けず、勉強にならないと告げられた。河豚は出荷しなに歯をペンチで折るので危険はない。危険なのは鱧や虎魚である。子供のころ、鱧を下ろしていて柳刃で左手のひらを抜いたことがある。危うさはともかく、魚の種類は夥しい。そして骨の位置、下ろす塩梅もことごとく異なる。それは店で習うような種類の仕事ではない。
 わたしは板前をしていたころ、給料の大半を費やしてさまざまな魚を買っていた。下ろし方を学ぶためである。見習いが捌いた魚など売り物にならない。下勉強は隠れてするしかない。どのような割烹であれホテルの厨房であれ、直接習うものはたかがしれている。他は応用であって、それは自ら考案するしかない。自宅で包丁を持たない料理人もしくは焚き物をつくらない料理人を料理人とはいわない。労働時間外に文献を蒐め、日夜勉励に励まなくてはならない。外食で間に合わせる料理人など聞いたことがない。
 本当に彼が料理人になる気があるのかどうか、いささか心許なく思う。教わったことだけを繰り返してことたれりとするならそれは猿真似でしかない。なにごとによらず、環境は問題ではないとわたしは思う。


中庸  | 一考   

 本年最後の血液検査に行ってきた。尿タンパクが異常に下りている、腎臓がタンパクを留められないのである。とはいえ、これ以上タンパクを制限すると体内の残留タンパクが危うくなる。悩ましい問題である。
 いずれにせよ、もう少し様子を見ようということで処方箋をもらってくる、一月末までの薬である。血圧が若干高いのだが、降圧剤を50ミリグラムから100ミリグラムに取換えたばかりなので、あまり気にしないでいる。いま処方されている薬剤は身体に馴染むのに四箇月ほどかかるそうである。
 このところ、療養食に飽いてしまい、タンパク、ナトリウム、カリウム、リンは守っているものの、それ以外はかなり自由に食している。例えば、焼き肉は駄目だがステーキの粒胡椒焼きなら大丈夫、白身魚フライはチリペッパーで味付けをする、先日の合鴨も塩抜きで晒した白髪葱を大量に添えて家のメニューに加えようと思っている。どうやら魚と肉に飢えているようである。

 昔、西洋料理店はどことも薄味だった。味が薄いと思う方は自分でソース、醤油、塩、胡椒などを追加して食べていた。そのために、テーブルにはそれら調味料が用意されていた。現在では、そうした中庸の味付けはホテルの食事にのみ残されているとわたしは思ってきた。朝食の目玉焼きやスクランブルエッグにいくらなんでも塩胡椒は振るまいと思っていたのである。ところが行く先々でそうでもないことに気付かされた。乙張の利いた濃厚な味が好まれる、まるでホテルや割烹の料理までが拉麺なみになってきたようである。ちなみに、わたしは拉麺を料理として認めていない。
 子供の頃、料理人になるとは薄味に馴れるのが必定の条件だった。板前が身を持ち崩すのはことごとくが酒を嗜むことによって味付けが濃くなってゆく、もしくは一人住まい故に外食に口が慣らされてゆくのが理由だった。蛙の列なった卵を想起させる蛸の卵(海藤花)を吸い物で頂戴するとき、一緒に入れる浜ぢしゃの新芽と松の実の幽けき香を楽しむのが料理の醍醐味だと聞かされて育った。そうした割烹料理までが時代に取り残されてゆく。
 陸ちり(おかちり、白身魚の薄造り)で一枚の皿に河豚、虎魚、皮剥、平目、鰈と順に並べて、食べ分けられる方が幾人いるのだろうか。日本近海には約五十種の鰺がいる、伊豆のカイワリと福井の寒鰤にとどめを刺すと思うのだがいかが。料理人は客を啓発させるのが仕事であって、決して迎合したり同意を求めてはならない。常にひとりそっぽを向いていなければならないのである。


2009年12月26日

Mac OS 9.2とブラウザ  | 一考   

 2009年7月から入手可能になったブラウザ「Classilla9.0.4」は役に立つ。Internet Explorer 5.1と違ってmixi、Google、ヤフオクにも対応している。Netscape7.0.2、Mozilla1.3、wazilla-macos9-1.3f-7のように左端が切れることもない。レガシーMacを使っている方にとっては朗報である。
 ただし、デフォルトでJavaScriptが無効になっているため、ウインドウの右下に表示されている「S」のアイコンをクリックし、一括あるいはサイトごとにJavaScriptのオン・オフを切り替えなければならない。例えばですぺら掲示板へ投稿するにはアドレスを一度登録しておけば大丈夫である。


2009年12月25日

年末年始の営業  | 一考   

 年末の営業は例年通りだが、大晦日に来られる方は事前にご教示いただけるとありがたい。人数分だけ麺類の出汁を作ろうかと思っている。初詣は豊川稲荷の予定。年始は四日の月曜日から。


ピンクの軽四  | 一考   

 昨日、帰りがけのことだが、東池袋から右折してなか卯の前の信号で停止した。前方にピンクの軽四、後方にBMWのZ4、左側はジャガーだった。信号が変わった途端になか卯の前へ配送車が割り込み、ジャガーは右へ大きくハンドルを切った。それが理由で軽四とジャガーは接触、スタートをはじめていたわたしは急ブレーキをかけて止まった。
 はなしは簡単で、二台の車は道端へ寄せて話し合いとなるところだった。しかるに、軽四が猛然とダッシュをかけ、逃げ出したのである。どうするのかなと見ていたところ、ジャガーも急発進で追いかけはじめた。当然、わたしもその後を追いかける。陸橋から川越街道へかけて深夜のカーチェイスとなった。陸橋は真ん中から先が三車線になっている。ジャガーは左端の車線を走る軽四の真後ろを追う。追いかけるときは車線を変える方が得策である。わたしは右側車線を走り、二台を追い越してしまった。ところが追いかけられていることを知った軽四は割り込みに車線変更禁止を無視、他の車がクラクションを鳴らすなか、三車線を縦横に走りながら川越街道へ突入。そうなると小型車に分がある。ジャガーやマスタングだと間違いなく事故を起こす。走行車線を逃げる軽四が信号を利用して一気に道路を横断、右折するのを確認してわたしは追いかけるのを止めた。
 それにしても、信号内は車線変更禁止である。接触事故の非ははジャガーにある。非のない軽四が逃げて、非のあるジャガーが追いかける。これは滅多に見られない光景である。もっとも、はなしは単純で逃げたから追うという条件反射のようなものだったのかもしれない。もしくは軽四が無保険車、車検切れ、飲酒運転、無免許ということだって考えられる。それにしても見事な逃げっぷりだった。


素うどん  | 一考   

 無性にうどんが喰いたくて、赤坂のはなまるへゆく。(一言云って置くが「かさね」で教わった旨いうどん屋も知っている)。白醤油を使っているので、色は薄いが、薄いのは出汁の色だけ。あまりのしょっぱさと化学調味料による味付けにお手上げ、こくと云うものがまったくない。以前からこのような味だったのかしらと思う。香川ならともかく、東京ならこれぐらい濃くしなければ客は納得しないのかもしれない。
 話序でに、松屋の牛丼の出汁が吉野家のそれに似てきた。要するに、濃くなったのである。もっとも105円のうどんや290円の牛丼にケチを付けてもはじまらない。はなまるで「かけ」と注文するところを何時もの癖で「すうどん」と云ったところ、「ハイ、すうどんです」と応じてくださった。これだけでも105円の価値はある。


2009年12月24日

味見  | 一考   

 合鴨の白髪葱和えは好評だった。モルト会へわざわざ来てくださる方のために、サービス品として拵えた。ヒデキさんからリクエストがあったが、小人数でよほどの宴会でもないかぎり、料理は作らない。割烹では平目であろうが秋刀魚であろうが、値は変わらない。要はものの原価ではなく手間暇の問題である。ちはらさんが今年は大変な年だった、料理ができるまでに戻ったと喜んでくださった。しかし、帰りはくたびれ果てていた。
 加水タイプだが、あらたに開栓したクライヌリッシュは旨かった。加水もカスクの選択も申し分ない。ラム・カスクで美味と思ったのは、マクロードのカリラ以来のこと。マルサラやマディラの場合は酸味が加味されて結構なウィスキーが多いが、ポートとラムは品のない甘味が強調されることが多い。ダグラス・レインのクライヌリッシュは滅多に当たらぬ逸品であった。
 解説でも触れたように、ベニーヴァのクライヌリッシュとリンクウッドは共にバーボン・カスク、マキロップ同様ずんと辛口に振られているが、オロロソ・シェリー樽熟成が多数を占めるなかにあって傑出している。
 解説では触れなかったが、ダン・ベーガンのブローラは2005年に24年ものカスク・ストレングスが頒されている。23年ものの倍の値段に跳ね上がったが、23年24年共に絶品、ぜひ飲み比べていただきたいと思う。23年はバーボンホグス、24年はフィノ・シェリーである。マクロードのチーフテンズにもフィノ・シェリー熟成品があるが、香味はダン・ベーガンに軍配があがる。フィノ・シェリーで他に記憶にあるのはスコッチ・モルト・セールスのタリスカー、実は拙宅にあと一本あるのだが。
 幹郎さんからご指摘を受けたが、味見にいと少しのウィスキーを飲んでいる。飲んでみなければ解説は書くのは不可能。ちなみに、合鴨も三種の焼き方を試みて、網焼きに決定した。三種ということは三切れだが、こちらには塩も使っている。


2009年12月23日

山本美智代さんの展覧会  | 一考   

 ですぺらから歩いて二分のところで、もっか山本美智代さんが個展を開いていらっしゃる。会期は26日まで、12時から7時までである。乾ギャラリー(赤坂3-8-8 赤坂フローラルプラザビル2階 03-3584-3850)。同ビルの三階にはですぺらが入るビルの管理会社がある。
 先日、相澤啓三さんが個展の帰りに来店。身体障害者になったあらましを話したが、思えば詩人とは一級の言語障害者のようなものである。他人に分からぬ言の葉をさらに弄くり、ことさら難解なものに仕上げる。これでお互い障害者同士になりました、で爆笑。ちなみに、脳梗塞を患い、リハビリ中の知己を挿んでの語らいである。気が置けないとはこのことで、遠慮も本音も立前も味噌も糞も一緒くたである。かかる楽しい晤語が繰り返されるのはあと何年か。


2009年12月22日

風物詩  | 一考   

 先週と先々週は土曜日を除いて女性客が多かった。木曜日などは終日女性だけだった。ですぺらにしては珍事である。今週も妙な一見客が多い。とある二人連れは英語のカタログを所望、以前作ったことがあるが、書き換えが面倒なので止めてしまった。アメリカ国籍を持つ中国人だそうで、互いの中国語が異なる、従って会話は英語でなさっていた。中国という国の広さが分かる。
 お通しで出したスケトウダラの卵巣の煮付けがことのほかお気に入りで、お代わりまでなさっていた。鱈子と書けば塩漬けになってしまうので、卵巣の煮付けと煩雑に書いている。生鱈子という表記の方が分かり易いかもしれない。
 スケトウダラは日本海、茨城県以北の太平洋沿岸、オホーツク海、ベーリング海、カリフォルニア州沿岸まで、北太平洋に広く分布する。もっとも、わたしは鯛の子の代用品として用いているだけで、鯛の子の方が香味は勝る。今頃は明石の魚の棚では終日、鯛の塩焼きが焼かれているに違いない。


合鴨  | 一考   

 モルト会のご予約は三名、合鴨の血抜きと白髪葱を四人前拵えた。串焼きとしていたが、肝心の串がない。そこでフライパンで焼くことにする。悪しからず。
 同居人の出張先はどうやら名古屋だったらしい。例え同居人であってもプライヴェートなことは滅多に聞かない。聞いたところで聞き及んだにとどまる、わたしとは関係がないからである。関係なくもないのが、明日のモルト会である。その日は運転を手伝ってくださるらしい。要するに僅かであろうが、わたしもウィスキーの味見ができる。


2009年12月20日

ですぺらモルト会解説  | 一考   

01 クライヌリッシュ14年
 46度のディスティラリー・ボトル。
 2002年夏の発売だが、正規代理店を経ての入荷は10月より。
 U.D社のボトルと比して、初手はよりホットにしてスパイシーな味わい。暖かく長く続くフィニッシュの中に僅かな甘味があり、バランスの良さでは本品が優るものの、旧ディスティラリー・ボトルにみられるバターのようなこくと香りはなくなった。香味にかなり差異があり、好き嫌いが訣れるところか。
 カードゥ、タリスカーと共にジョニー・ウォーカーのキー・モルト。

02 クライヌリッシュ '89(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。11年もの、43度。
 1949年、グラスゴーで組織された瓶詰業者。蒸留所の作業に携わった職人の末裔による同族会社にして、ダグラス・レイン社の系列。広大な熟成庫を持ち、60年代以降、色付けとチル・フィルターを拒み、「プロヴァナンス」の名のもとにコレクションを頒布。特にアイラ島の蒸留所とは太いパイプを持つ。2008年にラベルを一新。

03 クライヌリッシュ,'89(ダグラス・レイン)
 OMCの一本。ラム・フィニッシュの13年もの、50.0度のプリファード・ストレングス、360本のリミテッド・エディション。
 1949年、グラスゴーにて設立。「キング・オブ・スコッツ」等、ブレンデッド・スコッチを扱うブレンダー兼輸出業者。1999年より「オールド・モルト・カスク」と題するシングル・モルトのコレクションを頒布。ダグラス・レイン社は父方の、ダグラス・マクギボン社は母方の一族が営む兄弟会社、ミルロイ兄弟とは古くからの友人。

04 クライヌリッシュ '90(ヴィンテージ・モルト)
 クーパーズ・チョイスの一本。ポート・フィニッシュの12年もの、46度。
 食前、食後を問わない、秀れたオールラウンダー。絹綾のように滑らかで豊かなこくと杳杳(ようよう)たる余韻。銘酒の誉れ高い一本。
 1992年、ブライアン・クルックによってグラスゴーのバーズデンで創業。ヴァテッド・モルトの「フィンラガン」をボトリング。シングル・モルトでは「クーパーズ・チョイス」の名でコレクションを頒している。クーパーズとは樽職人の意。2001年5月にラベルが一新された。

05 クライヌリッシュ,'83(ベニーヴァ)
 バーボンカスクの18年もの。46度。
 ジョン・ミルロイの兄のウォーレス・ミルロイが起こしたコレクション、題してベニーヴァー。初回は下記の三点だが、2001年秋に二回目が頒布され、以降沈黙している。クライヌリッシュと共にボトリングされたリンクウッドのバーボン・カスクは珍品。北ハイランド特有のピートの効いたアロマが顕著。
 モートラック    フレッシュ・シェリー  1974 27年 46度
 クライヌリッシュ  バーボン・ホグス    1983 18年 46度
 リンクウッド    バーボン・ホグス    1983 18年 46度

06 クライヌリッシュ,'83(マキロップ)
 マキロップ・チョイスの一本。15年もの、57.3度のカスク・ストレングス。
 マスター・オブ・ワインの称号を持つグラスゴーの瓶詰業者。アンガス・ダンディ社傘下のカンパニーであり、モンゴメリー社とは兄弟会社になる。「マキロップ・チョイス」の名でコレクションが頒されている。同コレクションにはダルユーインやリンリスゴー等、稀少なものが含まれる。

07 クライヌリッシュ '82(ロンバード)
 ジュエル・オブ・ハイランドの一本。16年もの、50度のプリファード・ストレングス。
 スコットランドのマン島のインディペンデントボトラー。さかのぼること300年以上も前から酒類業界に身を置いている。ビールの醸造所を所有していた1960年頃に、副産物としてのウイスキーを生産したのが、ロンバードウイスキーの始まり。当初はウイスキーの樽をブレンデッドウイスキーのメーカーに売っっていたが、1990年代にシングルモルトが注目されるようになると、いち早くブローカーからインディペンデントボトラーに転向。カスク・ストレングスの強いモルトというよりは、46度や50度の少しやさしいプリファード・ストレングスをリリースしている。

08 クライヌリッシュ '83(シグナトリー)
 オーク樽による15年もの、43度のフルボディ。限定715本のシングル・カスク。
 リキュール系の輝くような甘さとスパイシーな薫香。マスタードの辛さ。加水すると甚だドライでシャープな切れ上がりをみせる。
 1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」をボトリングするなど、多彩なコレクションで識られる。

09 クライヌリッシュ '91(ユナイテッド・ディスティラーズ)
 ザ・ディスティラーズ・エディションの一本。ダーク・オロロソ・セコシェリー・フィニッシュの15年もの、46度。
 販売は07年から。まず香るのはレーズン、さらに言えばラムレーズン。オレンジピール、胡桃、ドライチェリー、干し葡萄、アプリコット等の香りと共に、ブラック・チョコレートといったやや刺激性の香りも。ヘーゼルナッツやマカダミアナッツが内包する粘りのある舌触り、油性の質感のなかにソルティーな味わい。ダブル・マチュアードによって、軽くフローラルなスタイルに木ノ実の豊かさがうまく加味される。フィニッシュは短いが、ナッティーなほろ苦さが強調されている。

10 ブローラ '82(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。シェリー・バットの19年もの、46度。2樽、1332本のリミテッド・エディション。
 アイラのポート・エレン、ローランドのセント・マグデラン同様、ストックが尽きた段階で飲めなくなるモルト。煤の臭い、焦げたオークのスモーキーなキャラクター、噛み応えのあるタンニン。強烈な個性を味わえるのは今を除いてない。
 ナッツのオイリーな風味と熟した果実の甘さ。噛みごたえのあるタンニンを伴うスパイシーなフィニッシュ。クライヌリッシュと比してドライ、また極めてスモーキー。

11 ブローラ '75(ダグラス・マクギボン)
 01年のボトリング。25年もの、43度。
 1967~8年に新築された蒸留所がクライヌリッシュと名付けられるまでは、旧蒸留所がクライヌリッシュと呼ばれていた。そして、その旧蒸留所がブローラと改名されたのである。従って、ブローラ蒸留所名義で造られたモルト・ウィスキーは69年から83年までの14年間のみ。69年以前に蒸留されたクライヌリッシュはブローラと同じものである。現在、跡地はクライヌリッシュの熟成庫とヴィジター・センターになっている。

12 ブローラ '80(ダン・ベーガン)
 04年のボトリング。23年もの、50.0度のカスク・ストレングス、ホグスヘッド324本のリミテッド・エディション。
「DUN BHEAGAN」とはスコットランドのスカイ島にある村の名前で、この地を支配していた地元のクラン(部族)が、生産者であるウイリアム・マックスウェル社の創業家と深いつながりがあったことから、このブランド名になった。現在のオーナーはイアン・マクロード社。1997年にフランス向けにボトリングをスタート、その後2002年後半に現在のパッケージになり、アメリカ、ヨーロッパや台湾などの世界各地で販売を開始。値付けがお手頃でありながら品質も優れ、売れ筋商品も含めて数多くラインナップされている。


2009年12月19日

ですぺらモルト会  | 一考   

12月23日(水曜日)の19時半から久しぶりにですぺらモルト会を催します。
今回はクライヌリッシュです。会費は11000円。
ウィスキーのメニューは以下のごとし。詳しい解説は当日お渡しします。

ですぺらモルト会(クライヌリッシュを飲む)

01 クライヌリッシュ14年
 46度のディスティラリー・ボトル。
02 クライヌリッシュ '89(マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。11年もの、43度。
03 クライヌリッシュ,'89(ダグラス・レイン)
 OMCの一本。ラム・フィニッシュの13年もの、50.0度のプリファード・ストレングス、360本のリミテッド・エディション。
04 クライヌリッシュ '90(ヴィンテージ・モルト)
 クーパーズ・チョイスの一本。ポート・フィニッシュの12年もの、46度。
05 クライヌリッシュ,'83(ベニーヴァ)
 バーボンカスクの18年もの。46度。
06 クライヌリッシュ,'83(マキロップ)
 マキロップ・チョイスの一本。15年もの、57.3度のカスク・ストレングス。
07 クライヌリッシュ '82(ロンバード)
 ジュエル・オブ・ハイランドの一本。16年もの、50度のプリファード・ストレングス。
08 クライヌリッシュ '83(シグナトリー)
 オーク樽による15年もの、43度のフルボディ。限定715本のシングル・カスク。
09 クライヌリッシュ '91(ユナイテッド・ディスティラーズ)
 ザ・ディスティラーズ・エディションの一本。ダーク・オロロソ・セコシェリー・フィニッシュの15年もの、46度。
10 ブローラ '82(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。シェリー・バットの19年もの、46度。2樽、1332本のリミテッド・エディション。
11 ブローラ '75(ダグラス・マクギボン)
 01年のボトリング。25年もの、43度。
12 ブローラ '80(ダン・ベーガン)
 04年のボトリング。23年もの、50.0度のカスク・ストレングス、ホグスヘッド324本のリミテッド・エディション。

ですぺら
東京都港区赤坂3-9-15 第2クワムラビル3F
03-3584-4566

追記
旨い岩塩が少量手に入ったので、合鴨の串焼きを造る予定。


2009年12月17日

腕時計  | 一考   

 「街頭インタビューや、色々な職業の方にインタビューをし、そこから上がった様々な“法則”の中から興味深い“法則”を検証していく」というTBSテレビの番組があるらしい。
 「“優秀なバーテンダーは、腕時計をしない”という法則が正しいのか、どうか?」という「検証企画の取材に、ご協力をお願いしたい」とのメールがあった。
 かかる阿呆な番組に協力する気はないので、メールは即ゴミ箱行きである。祇園の芸妓や銀座のクラブの女性が腕時計や携帯を持ち歩いているとでも思っているのだろうか。花柳界に限らず、客の目前で時刻を確かめたり、携帯を掛けるなどその客に対する冒涜であろう。もっとも、ですぺらにいるバーテンダーは何時も云うとおり、パーテンダーかハ−テンダーであって、憂愁ではあっても決して優秀ではない。従ってその限りにあらず。
 大体が飲み屋は時を憂え、失恋を慨き、酔いという非日常の世界に身を委ねるための場である。終電を気にかけて酒を呷る向きは居酒屋と相場が決まっている。本来、飲み屋には時計すらあってはならないのである。ところが飲み屋へ来て、まずテーブルやカウンターに携帯を置くひとがいる。己が属している領域からの離脱を懼れ、まるで携帯こそが唯一の存在証明であるかのごとく。思うに、腕時計や携帯は自分のなかに穿たれた現実の楔のようなものであろうか。


2009年12月16日

水と茶  | 一考   

 某メーカーのグレープフルーツ(濃縮還元果汁100パーセント)を買ってきた。成分表示にナトリウム0と記載されている。濃縮還元なのでカリウムの心配もなさそう。このようなジュースもあるのだと知った。おさらいだが、ナトリウムは食塩以外にも含まれている。そしてナトリウムに塩素が結びつくと食塩(塩化ナトリウム)が生成される。そのナトリウムに対する食塩相当量は以下のように求められる。
 ナトリウム(ミリグラム)×2.54÷1000=食塩相当量(グラム)

 緑茶はカリウムが高くて飲まれないので、拙宅ではいつもウーロン茶を飲んでいる。大きな鍋で大量につくって冷蔵庫に入れている。よってカテキン色素が酸化して変色し、ひどく不味い。例えウーロン茶であっても淹れ立ての熱いのが旨い。分かっているのだが、面倒なのである。その点、市販されている茶の類いはチルフィルターで濾過されているので問題ない。「宵越しのお茶は飲むな」はすでに死語であろう。
 それにしても、ピンク・レディーに端をを発する缶・ペットボトル入りのウーロン茶や紅茶の開発はやがて日本茶へと拡がってゆく。はじめてペットボトルの茶を目にしたとき、水同様、誰がこのようなものに金を出すのかと驚いた。それまで有料の茶といえば、長距離列車で弁当と共に売られる煎茶しか存在していなかった。店の水も茶も市販品だが、わたしが飲んでいるのは水道水である。いまだに金を払う気にならないでいる。ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム等、ミネラルがが含まれているのも大きな理由のひとつだが。

追記
 「濃縮還元なのでカリウムの心配もなさそう」などと書いたが、濃縮還元の方がカリウムは高い。わたしの勘違いで、やはり飲まれるものは葡萄ジュースぐらいなもの。


2009年12月14日

先輩と後輩  | 一考   

 同居人が出張である。わたしはと云えばおでんを大量に作り置きし、大根と蒟蒻と玉子以外は二人前ずつ抛り込む。別につぶ貝とスケトウダラの卵巣の煮付けがあるので併せておまんまを頂戴している。
 かつて掲示板で書いたが、わたしは一日二食、一食は低蛋白米160グラムである。ところで、外食の牛丼とやらは並盛りが260グラムもあって到底食べられない。松屋に180グラムの小盛りができてやっと手の届くものになった。十代から二十代にかけて山本六三さんと一緒だった頃はさらに食べなかった。八島の天丼を二人で二等分して恰度の量だった。なぜか、二人とも食べるということに嫌悪感を抱いていた。飲みながらの葱炒めや鱧皮酢、生鮨(しめ鯖のこと)が十分に食事の代わりになっていた。
 わたしが遠慮なく食べるようになったのは二十五歳から後のはなしである。既に余生なのだからなにをしても構わないだろうと思っていたのだが、覿面に体重は増えた。一時は70キログラムを超えたことすらあった。現在は65キロから55キロのあいだを行きつ戻りつしているが、これでも多いと思っている。食べ物の質量は血液検査を睨めっこしながら決めている。次回二十二日の血液検査で輸血の結果が出る。

 成田一徹さん来店。彼は多血症で定期的に瀉血を施しているらしい。因果関係はまったく逆だが、似た症状を呈す。即ち頭痛・めまいなどの非特異的な中枢神経症状や高血圧である。血液検査表をお見せしたがさすがに詳しい。
 神戸在の石井一男さんのはなしになる。石井さんは神戸らしい強烈なニヒリズムに色彩られた画家、一度お会いしてみたいと思っている。成田さんは夢野台高校の後輩、石井さんは先輩のようである。もっとも三日ほどしか行っていない学校だが。


2009年12月11日

 | 一考   

 一昨夜、稲葉真弓さんがすっぽんスープの罐詰を土産にいらした。雑炊にすると旨いらしい。そういえば、雑炊と茶漬けは食塩を嫌ってこの半年ほど食していない。成分表示によると他にナトリウムを摂らなければ大丈夫そうである。稲葉さんは薄めればと仰有っていたが、いくら薄めても全量飲めば同じことである。支那料理の出汁、饂飩・蕎麦の出汁、焼きそばソース等々、ことごとく定量の半分を用いている。すっぽんスープも二度に小分けし、水で薄めて雑炊にすればよい。
 病は致し方ないが、それにしても元気だけはとの稲葉さんのお気持ちに感謝したい。彼女には黙っていたが、同世代で何人もの知己が癌で苦しんでいる。なかには余命を宣告された方もいる。過日、人は生きているあいだは元気である、と書いたのには万感の思いが籠められている。死の前日までみんな元気を装って生きている。それが解っているがゆえに、他人の健康状態については口を閉ざそうと思っている。


2009年12月10日

モルト会  | 一考   

 しばらく休んでいたですぺらモルト会の予行演習を今月23日に催します。祭日ゆえ一般客はなく、モルト会の貸切です。
 酒はクライヌリッシュとブローラ、クライヌリッシュ単一のモルト会ははじめてでなかろうかと思います。
 このところ、当店ではなぜかクライヌリッシュの呼声高く、拙宅の在庫を調べたところ三本出て参りました。ブローラは少なからず在庫しておりますが、クライヌリッシュはこれでお仕舞い。こぞってのご参加よろしくお願い致します。詳細は追って掲載します。


2009年12月01日

フルーツ罐  | 一考   

 増田さんからフルーツ罐を大量に頂戴した。それにしても罐詰はどうしてかほどに甘いのか。中に含まれているシロップを捨て、冷蔵庫で二、三日水に晒すとおいしくいただける。特に洋梨やマンゴーにはカリウム・ナトリウム共に0から2ミリグラムしか這入っていない。香味は生には遠く及ばないが、わたしは結構楽しんでいる。
 果物以外にも干しヒジキ、切り干し大根、海苔、昆布、大豆、納豆、ほうれん草、さつまいも、パセリ、筍、きのこなど、カリウムが豊富に含まれた食品は多い。意外なところではベーキングパウダやインスタント珈琲にもかなり含まれている。店に置いているドライフルーツやナッツ類もカリウム含有量は高い。ナッツ類はさらに塩分が加味されているので困りものである。
 近頃、家でお好み焼きをよく作る。辻さんのパスタの向こうを張っているようなものである。塩は用いないとは云っても、出汁を採るのが面倒なので出しの素を少量使う。後は同じだが、焼き上げてからソースとマヨネーズはほとんど塗らない。そのために極端に小麦粉を水で薄める。早いはなしがもんじゃ焼きの厚焼き版である。おかげで屡々失敗し、崩れてしまうときがある。
そのようなものでも、塩分と縁がなくなったわたしにはおいしく頂戴できる。
 前述のフルーツ罐に甘夏があった。みかん罐は総じてライトシロップを用いるので好きなのだが、増田さんご用達の甘夏罐は上白糖使用で本来のほろ苦さが残っていた。同じ仕様で八朔があれば良いのにと思う。

追記
 検索したところ、八朔の罐詰が売られているのが分かった。しかし、普段購入している蜜柑、二十世紀、梨、桃、パイナップルの四種は一罐百円である。近所のバッタ屋はやはり安価である。あるものを喰っていればよいのであって、贅沢は云うまい。それでなくとも子供の頃、パイナップル罐は憧れの高級食品で、中華料理屋の酢豚に必ず這入っていた。それが理由で昨今の黒
酢の酢豚が苦手である。パイナップル、玉葱、ピーマンが添えられた野菜炒めのような酢豚がお気に入りなのである。

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