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ブレンダーは調香師   一考   

 

 「ボウモアはモルト・ウィスキーの夜間飛行である」と書いた。夜間飛行がタブーであろうが、ミス・ディオールであろうが、アルページュであろうが一向に差し支えない。思うに、ボウモアには香水が含まれているのでないだろうか。ボウモアの香りは謎である、と言われ続けてきた。しかし、かの芳香が香水に起因するのであれば、はなしはあまりにも明解である。
 一九二〇年代になってオート・クチュールのシャネルが合成香料のアルデハイドを配合した香水「No.5」を発表し、以後ランバン、ジャン・パトゥ、スキャパレリ、ディオールなど、デザイナー・ブランドの香水が陸続と発売された。どうもこの合成香料が怪しいのではないかと思う。
 古代エジプト、ペルシア、インドなどでは動物性香料(麝香、竜涎香、海狸香、霊猫香)や香木、もしくは没薬や乳香のような香油と香膏が用いられた。十九世紀になると各種の合成香料が用いられるようになり、数種から十種以上の香料が調合され、幻想香料と呼ばれる「みつこ」や「タブー」が誕生する。なにやらボードレールの詩篇めいてきたようである。
 子供のころ、紙石鹸や紙香水でよく遊んだが、ボウモアの匂いはそんな生やさしいものではない。表立ち、中立ち、残立ちという香水固有の流れが明確にあり、中立ちには調香師が作り出したいと考えている香りのイメージがもっとも強く表現されている。香水を英語ではパフュームperfume、フランス語ではパルファンparfumまたはエクストレーextraitといい、月桂樹の葉をラム酒に漬け、蒸留したベイ・ラムと称する頭髪用の香水まである。別にウィスキーに似たものがあっても不思議ではない。
 ボウモアの香味が安定しないのも、オーナーの好みに合わせてその度毎合成方法もしくは香料の成分を変えてきたからではないか。旧カスク・ストレングスを飲んでその思いを強くした。コンデンサーの取換えもしくはコンデンサーの位置替えなどで、こうまで香味が変わるはずがない。
 阿闍梨が仏道修行者の頭に香水を注ぎ、修行が終わったことを証明する儀式を閼伽灌頂というが、おそらくボウモアはシングル・モルトにおける閼伽灌頂のつもりで造られたのではないだろうか。もっとも、この件に関して、オーナーはじめボウモア蒸留所の役員はなんらのコメントも発していない。


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2008年04月11日 16:04に投稿された記事のページです。

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