手に負えない下血で即刻入院となった。憩室や癌だと事は簡単なのだが、もっとも面倒な腸炎からの出血である。それもサイトメガロウィルスの腸炎である。手の施しようがないとはこのことで、とりあえずバリキサとアドナしか服用するものが見当たらない。
内視鏡検査で大腸と小腸の繋ぎ目に腸炎が発生している。ついでだが大腸の憩室の出血箇所はすべてクリップ止め、こちらからの出血は一年間は大丈夫。繰り返すが、憩室もしくは癌の炎症並びに出血の修復は簡単である。
消化器内科医の羽山医師は最初キャンピロバクターを疑っていたようである。しかしわたしは移植手術が決まって以降、禁じられた食事は一切摂っていない、その中には生玉子や生鶏肉も当然這入っている。
余談ながら、内視鏡ではじめて信頼できる医師と出会えた。内視鏡は通常、大腸の検査に用いる。ところが見付かった炎症箇所は小腸である。そして、大腸のポリープや憩室も手早く処理してゆく。二箇所から腸壁標本も採取、こちらは結果が出てから、泌尿器外科の医師と消化器内科の医師、そしてわたしを挟んで話し合おうと云われた。大腸内で見付かった二十箇所ほどの凹みの一つ一つについて説明をしてくださる。過去、このような医師はいなかった。羽山弥毅さんは内視鏡の専門医だそうである。
http://ibdhotnews.exblog.jp/2813657 で以下の記載が見付かった。
「サイトメガロウイルス感染症は基本的に日和見感染症だそうです。サイトメガロウイルスは、免疫機構が健全な時にはおとなしく隠れていて、AIDS(=エイズ。後天性免疫不全症候群)にかかったり免疫抑制剤やステロイド剤を使用したりして免疫力が低下したときに表に出てきて活動を初め、感染者に肝炎、網膜症、大腸炎、肺炎、脳炎などの症状を起こし、それらは重篤に経過する場合も多く、文献によりますと、死亡に至る例もあるようです。
古い医学辞典には「このウイルスに対して有効な薬剤は開発されていないので、発症してしまうとその後の経過は非常に悪い」と書かれていたりします。現在はガンシクロビルという抗ウイルス薬が開発されており有効であるそうですが、投与した全員に効果ありということではないようです。また、投与で症状がおさまったとしても再発する可能性が高いようです」
下血が止まれば、何時退院しても構わないと云われているが、まだ出血は続いている。ちなみに下血時に風呂は禁止である。食事は重湯中心だがいっそ断食した方が止血効果がある。医師に云ったところ、それはそうだが、腸炎からの下血が止まるわけではない、と。
サイトメガロウィルスの腸炎は重篤になる確率が高く、ガンシクロビルは副作用があまりに強い、残念ながら気軽に使用できるという薬剤ではない。同腸炎の快癒は一説によると二、三箇月、一説によると二、三年という。いずれにせよ、明日午前中に退院するつもり。後の治療は医師と話し合う22日以降に決める。難儀はさらに重なる。(1月11日)