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2008年01月 アーカイブ


2008年01月31日

ウィスキー二題  | 一考   

 ブレッヒン(BALLECHIN)
 エドラダワー蒸留所のセカンドラベル。蒸留は2002年、ボトリングは2006年、4年もの46度。900本のリミテッド・エディションで、日本向けの輸出量は270本。
 2002年に同蒸留所へ赴任した元ラフロイグの蒸留所長、イアン・ヘンダーソンの試みになる。PitlochryにあったBallechin蒸留所(1817-1927)の名前をエドラダワーが取得して復活。50ppm以上のフェノールを含んだ大麦麦芽を使用。ピートの度合いはラフロイグ蒸留所のそれよりも深い。熟成には九種の樽を用い、46%に加水調整。九種とはバーボン、バーガンディー・赤、バーガンディー・白、オロロソシェリー、ポート、クラレット、ソーテルヌ、マデイラ、マンサニーリャ。熟成の過程を見ながら五〜九年の間に順次ボトリング。当ボトルはバーガンディーの赤で熟成されたもの。バーガンディーをフィニッシュに用いたモルト・ウィスキーにグレン・モーレンジがあるが、本品はフィニッシュにではなく熟成に用いる。
 ブルゴーニュはコートドールのバリックと呼ばれるオーク樽に由来する複雑な香味と書けば簡単だが、バーガンディー自体が私にははじめての経験なので、どこまでがウィスキーの香味で、どこからがカスクの影響なのかが定かでない。シグナトリー社が買収してからのエドラダワーの壮大なカスク実験に私は反対である。自己主張の強いウィスキーにさらなるカスクの主張を加えてどうなるというのか。ブレッヒンにしても、最初のボトリングはバーボン樽にしてほしかった。
 エドラダワーが持つパヒューム香は淡い、バニラ香と蜂蜜の甘さを伴うブーケが強く感じられる。アーモンド、シナモン、ナツメグなどのニュアンスと共に薬品臭が漂う、この薬品臭は間違いなくピート香である。ボディは厚く、ココアパウダーもしくは胡瓜のへたのような苦みが感じられる。4年ものにしては後熟は丁寧になされているが、先日飲んだ白州のすっきりした後味はどこにもない。新しいタイプと書けばそれまでだが、ピート香とクリーミーな舌触りとがアンバランス。不味くはないが、奇妙な味である。どうやら、ブレッヒンに馴れるにはいささか時間が掛かりそうである。

クラガンモア・カスクストレングス
 蒸留は1993年、ボトリングは2004年、10年もの60.1度。カスクはBodega European Oak(シェリー)、15000本のリミテッド・エディション。
 こちらはケイデンヘッドやダグラス・レインでお馴染みなので、書くまでもない。ディアジオ・モエ・ヘネシー社によると、最初は香りが閉じられている。熟成年とアルコール度数を感じさせない柔らかさを持つ。コーヒーやビターチョコレート、グレインや皮、マディラ酒などの香りがある。加水(一滴水を垂らす)すると、スモーキーさからウッディな芳香へ、さらにナッツ系の香りへと変化してゆく。ハーブやスパイス(月桂樹・胡椒の実・ナツメグ等)のキャラクターも内包している。このような暗示がありながらも、少し解りにくく、控えめで複雑な味わい、となる。
 スペシャル・エディションとして10年、14年、17年ものが頒されている。


2008年01月30日

白州シングルモルト  | 一考   

 朝の九時から一八時まで歩詰である、とは言っても中休みもあった。白州のシングルモルト25年とヘヴィリー・ピーテッド1993、スパニッシュ・オーク・ボタコルタ1993の試飲会をなかに挿んだのである。東京會舘でチーフブレンダーの輿水精一さんと白州蒸留所工場長の前村久さんとはじめて会った。小柄だが、成一家ひとだけに眼光が鋭い。輿水さんはグラスの脚を持たない、腹を鷲掴みである。脚を持ってグラスを回転させる、あの為種が私は我慢がならない。ワインであれコニャックであれ、なぜに気取ってみせるのか、酒の温度にそこまで過敏になるのなら酒の種類にさらなる気遣いをしろと言いたくなる。味の分からぬひとほど、奇矯な振る舞いに及ぶものである。マッカランの試飲会のときは前列が全員、親指と人差し指でグラスの脚を持ってぐるぐる回していた、興が薄れたのは私だけではあるまい。また、加水とはわずかに一滴、二滴であって、それ以上であっては困る。トワイス・アップのようにアルコール度数が変わるほど水を入れるのは水割りであって加水とは言わない。今回はよい勉強をさせていただいた。
 白州のヘヴィリー・ピーテッド1993はバーボン樽を組み替えたホグスヘッド230リットルを用いる。14年もの、カスク・ストレングスである。前回の山崎と比してボディが厚くなく、白州特有の青林檎のキャラクターが強いので、繊細なヘヴィリー・ピーテッドといったところ。
 スパニッシュ・オーク・ボタコルタ1993は480リットルのカスク。パンチョンと同型で、バットと比してずんぐりしている。甘酸っぱさが濃厚で微かな苦みがあって、フィニッシュはしっかりと伸びる。このボタコルタを私は気に入った。
 原材料の大麦麦芽はスコットランドから調達しているが、ロットが少ないので製麦業者(モルトスター)は決めていないとのこと。シンプソン、モーレイなどにレシピを渡して遣り繰りしているとのことだった。ちなみに、ピートの度合いは各蒸留所で厳格に決められている。
 1ppm マッカラン蒸留所
 35ppm ラガヴーリン蒸留所、ラフロイグ蒸留所
 55ppm アードベッグ蒸留所
 キルン(乾燥塔)の屋根にあるパコダ型の煙突はスコットランドも日本も蒸留所を象徴する飾りであって、ピートの煙を吐き出すパコダはバルヴェニー、ベンリアック、ハイランドパーク、ボウモア、ラフロイグ、スプリングバンクなどごく限られている。

 東京駅まで田中屋の栗林さんと同道、進捗しないコニャックの原稿について話し合う。アーリー・ランテッドに力を入れましょうとお願いをして別れた。


2008年01月28日

車通勤  | 一考   

 右手ひじの筋を痛めた、原因は老いと冷えである。単車のアクセル操作ができないので、車での通勤となる。従って帰り途の方は見送り可能。駐車場の関係で、開店は六時半以降になる。


2008年01月22日

ですぺらモルト会  | 一考   

1月26日(土)の19時から新装開店後、初のですぺらモルト会を催します。
会費は11000円、オードブルは簡略に済ませます。ウィスキーのメニューは以下のごとし。
詳しい解説は当日お渡し致します。 参加ご希望の方は事前にお知らせ下さい。
店主も飲みますので、貸し切りということでお願い致します。

ですぺらモルト会(グレンロッシーとロッホナガーを飲む)

01 グレンロッシー '89(マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。10年もの、43度。
02 グレンロッシー10年(ユナイテッド・ディスティラーズ)
 花と動物シリーズの一本。43度のディスティラリー・ボトル。
03 グレンロッシー '81(シグナトリー)
 甘口シェリー樽の17年もの、43度、限定595本のシングル・カスク。
04 グレンロッシー '79(インタートレード)
 オーク・カスクの18年もの、43度のフル・ボディ。
05 グレンロッシー '78(ヴィンテージ・モルト)
 クーパーズ・チョイスの一本。オーク・カスクの22年もの、43度のフル・ボディ。
06 ロイヤル・ロッホナガー12年(DB)
 40度のディスティラリー・ボトル。
07 ロイヤル・ロッホナガー '98(ジャン・ボワイエ)
 ベスト・カスク・オブ・スコットランドの一本。シェリーカスクの8年もの、43度。
08 ロイヤル・ロッホナガー '73(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。29年もの、50.0度のプリファード・ストレングス。276本のリミテッド・エディション。
09 ロイヤル・ロッホナガー '73(ユナイテッド・ディスティラーズ)
 レア・モルト・セレクションの一本。23年もの、59.7度のカスク・ストレングス。
10 ロイヤル・ロッホナガー・セレクテッド・リザーヴ(DB)
  43度のディスティラリー・ボトル。

ですぺら
東京都港区赤坂3-9-15 第2クワムラビル3F
03-3584-4566


ロイヤル・ロッホナガー  | 一考   

 白檀やペパーミントの香りがするウィスキーといえば、グレンロッシーかロイヤル・ロッホナガーである。そのロッホナガー蒸留所は1845年、地元の資産家ジョン・ベグが設立した。1916年にジョン・デュワー&サンズ社に買い取られ、1925年にDCLの手に渡った。1930年からはSMD、現UDの運営となり、現在UDVの傘下にある。蒸留所の由来や詳細は検索していただくとして、ポットスチルはストレート・ヘッド型が二基、年間生産量は37万リットルの小さな蒸留所である。
 蒸留所が頒するロッホナガー・セレクテッド・リザーヴはディアジオ社(UDV)傘下のオフィシャル・ボトルのなかでは最も高額なボトルである。それ故、いままではですぺらでは扱っていなかった。そのようなモルト・ウィスキーはホテルのバーに任せていたのである。今回、某酒屋の協力で少々安く購入できたので、早速モルト会を催すことにした。二十六日(土曜日)はグレンロッシーとロイヤル・ロッホナガーを中心に十種類の植物系ウィスキーの香味を愉しんでいただく。なお、モルト会のため、二十六日は貸切にする。
 序でに、ロイヤル・ロッホナガーの過去のボトルを紹介する。

ロイヤル・ロッホナガー12年 40度(DB)
 ディスティラリー・ボトル。シェリー樽を含むセカンドフィルのカスクで熟成。ヴィクトリア女王が愛飲した王室御用達ウィスキー。気稟のよさを感じさせる清冽かつ閑雅な味わい。VAT69やジョン・ベグ・ブルーキャップ、ジョニー・ウォーカー青、黒の原酒モルト。
 スムースかつクリーミーなフル・ボディ。ペパーミントのエレガントにして涼やかな香り。フィニッシュはややドライ、暖かみのある切れ上がりが長く続く。
ロイヤル・ロッホナガー・セレクテッド・リザーヴ 43度 (DB)
 ディスティラリー・ボトル。年数表示のないプレミアム・エディション。50%がファーストフィルのシェリー樽にて熟成。ただし、熟成に必要な樽の確保が困難になり、現在ではボトリングされていない。熟成年数の表示が無いのは、選ばれた複数の樽から造られており、ボトリング毎に熟成年数が異なるからである。
 シェリー樽由来の芳醇な香り、ファーストフィルを半分に限ったところから苦みは一切ない。香りはリッチで、バニラ香、ナッツ香、ミント香が強くクリーミー。フィニッシュは長く、僅かにスパイシーで非常になめらか。
ロイヤル・ロッホナガー 98年蒸留 06年ボトリング 8年 43度 シェリーカスク(ジャン・ボワイエ)
 ベスト・カスク・オブ・スコットランドの一本。ボトラーズ・ボトルとしてはダグラス・レインに継ぐ。
ロイヤル・ロッホナガー 88年蒸留 15年もの 59.0度(ダグラス・レイン)
 ボトル名はグレンデニー、ハンター・ハミルトンのリリース。
ロイヤル・ロッホナガー 73年蒸留 29年もの 50.0度 276本(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。
ロイヤル・ロッホナガー 73年蒸留 28年もの 50.0度(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。
ロイヤル・ロッホナガー 71年蒸留 01年ボトリング 30年もの 46.4度 212本(ダグラス・レイン)
 オールド&レアの一本。
ロイヤル・ロッホナガー 74年蒸留 04年ボトリング 30年もの 56.2度 リフィール・オーク(UDV)
 レアモルトの一本。ロッホナガーのカスク・ストレングスは本品のみ。
ロイヤル・ロッホナガー 73年蒸留 97年ボトリング 23年もの 59.7度(UDV)
 レアモルトの一本。
ロイヤル・ロッホナガー 72年蒸留 97年ボトリング 24年もの 55.7度(UDV)
 レアモルトの一本。


海螺貝其の肆  | 一考   

 本日、海螺貝(つぶ)が二人前のみ入荷する。聞くところによると、天気の崩れはないものの、今日も寒いとか。なおのこと、海螺が恋しくなる。

 十九日はありがとうございました。員数が少なく、鴨肉が潤沢に当たったようです。大阪からご参加の方もいらして終日関西弁が飛び交いました。鴨のミンチは当日午後に引いたもの、肉屋さんには無理をいって迷惑を掛けました。ハリハリ鍋のため、甘味を抑えておもいっきり薄味で仕上げました。つくねの味が生きたと思っております。


2008年01月21日

年長者  | 一考   

 まだ詳らかにできないが、某社より新しい雑誌が刊行される。そのなかで佐々木幹郎さんがですぺらを紹介してくださる。発売は三月だが、取材は十四日に済ませた。取材の一環で、六十年代、七十年代のアードベッグと三十年ものなど多数のモルト・ウィスキーが試飲された。
 珍しく同じ世代のひとたちの集いとなり、語らいは弾んだ。ひとは若いままに老いる、歳が行ったとの自覚などどこにもない。そのくせ他人をつかまえてはオジン、オバンと言いたい放題である。「記憶はせつないほど懐かしい、はじめてめぐり会った遠い遠い時の爽やかさのままにある」とはそのあたりの消息を指す。
 それにしても、と思う。かつてわれわれが若かったころ、例えば曽根さんや種村さんと知り合ったころの彼等の遇し方、さらには生島さんや耕衣さんの年少者への接し方を顧みるに、われわれにあの寛容さ、キャパシティがあるのだろうかと疑問に思う。確かにとちったときの竹箆は怖かったが、咎はこちらにある。精神の進歩とか進化といった不用意な言葉を発しない限り、向こうから首をチョンと斬られることはなかった。
 幾人かは教師であったにもかかわらず、わが邦の歴史教育のプロパガンダについて声高に話された。歴史観そのものの相対化、すなわち世界観の相対化を教わると同時に、個別の事柄についてそれは大事です、それはどうでもよろしい、と噛み含めるように諭される。「いまどきの若いものは」という前に「いまどきの大人は」と自らの足もとの検証に彼等は余念がなかった。


値上げラッシュ  | 一考   

 円の対ドル相場は高くなっているが、対ポンド、対ユーロは下がり続けている。それが理由で、このところモルト・ウィスキーの値上がりが続く。先だってはカリラ12年がとんでもない値上がりで18年ものとの価格差がなくなった。流通在庫がなくなれば18年ものの値上がりは必至である。当店で売れ筋のストラスアイラは5,000円の大台を越えた。
 今度はグレン・モーレンジとアードベッグである。アードベッグに関しては何度も書いてきたが、70年代のカスク・ストレングスが126,800円から134,300円もする。同じ70年代の加水タイプは44,700円、17年ものは26,800円となった。
 今回は通常に出回っているボトルの値上げである。アリーナムビーストが10,000円から13,000円へ、ウーガダールが7,500円から9,000円へ、10年ものが5,000円から6,500円に改訂される。酒屋での売価はこの価格から1,000円ほど引いているが、定価販売の店も多い。なかには見越して既に高値で販売している店もある。アリーナムビーストは90年蒸留の2006年ボトリング。かつての17年ものに準じてい、ウーガダールとは違ってすこぶる美味である。当店にはアードベッグのファンが多いので影響が大きい。
 ですぺらは大量生産のディスティラリー・ボトル(オフィシャルボトル)の買い置きはしない。これがボトラーズ・ボトルなら話は別だが。ただ、自宅でもウィスキーを飲まれる方がいらっしゃる。それならば、二月中の購入をお薦めする。
 金融関係の客のはなしだと来年の初頭には円安に歯止めがかかるらしい、それまでは更に下がり続けるという。アライド・サントリー社が扱うウィスキーは比較的安価である。このような時はマッカラン、ボウモア、ラフロイグを飲むに越したことはない。


2008年01月17日

たぎち酒  | 一考   

 粉雪舞うなかを単車で帰宅。外気温は二度、室温は九度、その九度に自宅にいることの煖かさを知る。身体が飯を受け付けず、豚汁を肴に熱燗を嗜む。拙宅では普段は冷や酒を飲む。たぎち酒を飲みたくなりしは身を刺す冷たさから逃れんがため。
 高遠さんが坑腓の虫に苛まれて一日ひどく苦しまれたとか、それを懼れて靴下を履いて蒲団に潜り込む。これが二月まで続くかと思うといささか情けなくなる。われ老いを覚ゆ。


2008年01月16日

チーフテンズ  | 一考   

 プレーン・オークで熟成させた後、酒精強化ワインをはじめ、ラムやワインの樽で数箇月から一年ほどフィニッシュをかけるのをダブル・マチュアードという。カスク由来の香味が加味され、ウィスキーはさらに複雑な味わいを持つ。これを歓迎する向きもあれば、小手先の技術として否定なさる方もいる。しかし、ウィスキーは元々シェリー・カスクで熟成されてきた。オロロソ・シェリー樽で十年以上熟成された渋味の強いウィスキーを旨いと思うかどうかは時代と共に変遷する。私などはあの渋味は辞退したい、いっそフィニッシュだけの方が溌溂としたシェリー香が味わえて好ましく思う。それでなくとも、シェリーとウィスキーの生産量が逆転し、シェリー・カスクの入手が難しくなった昨今、いかようのカスクを用いようとも一向に構わないのではと思う。
 元々はグレン・モーレンジ社のお家芸だったが、90年代後半、ユナイテッド・ディスティラーズ社がクラシック・モルト・シリーズのダブル・マチュアード版を発売。続いてイアン・マクロード社がチーフテンズ・チョイスを頒布するに至り、ちょっとしたブームとなった。
 そのイアン・マクロード社について一言。スカイ島の豪族、マクロード家の末裔がオーナーでエディンバラ近郊のブロックスバーンに本拠地を置く。同社はイングランドでのグレンファークラスの発売元。タリスカーをベースに用いたブレンデッド・ウィスキー、マリー・ボーン、アイル・オブ・スカイやクイーンズ・シールでも識られる。同社が関与するボトルのうち、蒸留所名を記載できるボトルはイアン・マクロード社、蒸留所名を記載できないボトルはスコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社というように区分している。他にもドイツ、フランスに実に多くの子会社を持つ。
 1999年に頒された上記「チーフテンズ・チョイス」は2001年に「チーフテンズ」と変更。ラベル、パッケージ共に一新、フルラインナップとなった。ウィスキー・マガジンでも同社のグレンカダムがシルバー・メダルを受賞、日ごとに評価が高まっている。初入荷は十四点だったが、ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」と共に目の離せないシリーズとなった。
 今回はチーフテンズ・セレクションのニュー・ボトルを紹介したい。

アイラ
 ラフロイグ1997 シャトー・ラ・ネルト・フィニッシュ 9年 46度 6,200
 カリラ1990 シャトー・ラ・ネルト・フィニッシュ 17年 48度 9,500
 カリラ1993 マンサニーリャ・フィニッシュ 13年 46度 5,800
 カリラ1996 ホグスヘッド 10年 43度 5,600
 カリラ1996 ラム・フィニッシュ 10年 46度 5,500
 ポートエレン1982 ホグスヘッド 24年 59.4度 24,600
スペイサイド
 オスロスク1994 アメリカン&スパニッシュ・オーク 13年 43度 4,300
 ベンリアック1993 メドック・フィニッシュ 14年 43度 5,400
 グレンロッシー1992 ホグスヘッド 14年 43度 5,400
 リンクウッド1992 フィノ・シェリー・フィニッシュ 14年 46度 5,400
 ロングモーン1994 ホワイトポート・フィニッシュ 13年 43度 5,400
ハイランド
 グレンタレット1993 フレッシュ・オーク・フィニッシュ 13年 43度 4,900
 グレンアギー1981 リフィール・シェリー 22年 52.5度 12,400
 ダルモア1994 ホグスヘッド 10年 63.5度 5,500
キャンベルタウン
 グレンスコシア1974 ラム・バレル 30年 40.2度 26,900
 スプリングバンク1974 リフィール・フィノ・シェリーバット 31年 57.2度 24,800
 スプリングバンク1969 リフィール・フィノ・シェリーバット 36年 57.3度 27,400
アイランズ
 スキャパ1982 アモンティリャード 22年 57.9度 11,400
其他
 シガー・モルト1994/ハイランド シャトー・ラ・ネルト・フィニッシュ 13年 54.4度 9,900
 シガー・モルト・マイルド1996/ハイランド マディラ・フィニッシュ 11年 54.9度 8,900
 シガー・モルト・ロブスト1997/アイラ ホグスヘッド 10年 55.1度 9,700

 シャトー・ラ・ネルトはローヌ南部のトップ生産者の一。シャトー・ヌフのマルゴーとの呼び声も。扱いはエィコーン。値を入れるべきかどうか迷ったが、現在もっとも値の安いボトラーなれば参考になる。エィコーンは個人取引はできないが、目白の田中屋に卸している。


 | 一考   

 丹波で鴨、鹿、猪などを専門に扱う店があって、問い合わせたところ猟師が居ないので勘弁してくれとのこと。他を紹介していただいたが、今年はシベリアからの飛来が少ないとかで、養殖もので間に合わせろと言われた。鹿児島もしくは滋賀の鴨の里の会ならなんとかなりそうだが、到着に五営業日が必要だそうで間に合わない、どうしようかと困惑している。既に予約が入っているのでキャンセルはできないが、鴨肉の仕入れで難産させられるとは思ってもみなかった。いっそ合鴨でどうかしらとも思う。
 ところで、イギリスのチェリバレー種やフランスのバルバリー種、ナント種の鴨肉を真鴨として売っている店がある。それでは芹沢鴨は水戸の野鴨かねえと訊ねたくなる。例え、野鴨でも家禽化すれば合鴨で、識別なんぞかなわない。「日本語と異なり英語のDuckなどヨーロッパの言語では、基礎語彙のレベルでは野生の鴨と家禽のアヒルを区別しないので、翻訳に際して注意が必要」とウィキペディアに書かれている。

 野鴨の抱き身が五千円から八千円ほどする。値が折り合わないので、バルバリー種の合鴨にした。金曜日に到着の予定。江戸時代は鴨には芹が合うとされてきたが、今回は水菜を用いる。セリからアブラナへ、鴨のハリハリ鍋である。


リクエスト  | 一考   

 高遠弘美さんの書き込みの影響か、アクセスログのリクエストが一挙に4225にまで跳ね上がった。畏るべしgooglebot.com。


針聞書別本  | 一考   

 言うまでもなく、目耕は読書家の意。戯れにお付き合いくださってこちらこそ恐縮致しおります。実はマゾヒズムの特効薬として車前子を採り上げようかと思いつつも逸脱し、もっこうからかんぞうへと言葉の遊びになってしまいました。
 永禄から貞享に至る百余年のあいだの刊本には異版、別版の類い引きも切らず、龍珠世宝がごとき類書まで出回っております。お手持ちの針聞書別本、近世の鍼灸流派に影響を与えた名著と聞き及んでおります。
 こむらがえりを過呼吸症候群の一とする考えがございますが、私は無呼吸症候群を患っています。これまで合点がいかなかったのですが、貴兄のご教示によって氷解。さるにても、憎きは坑腓の虫。なまじな治療法では坑腓の槍にはかなわないように思います。


2008年01月14日

アーカイヴに  | 高遠弘美   

さきほど駄文ひとくさり投稿しました。
表には出なくて、「アーカイヴ」にあるやうです。お読みくださる方はそちらをご覧ください。


抗腓  | 高遠弘美   

 一考さま。名前を出してくださつて恐縮してをります。目耕とはさすがに一考さんご推奨の愉快な虫であると思ひました。ところで、わたくしの手もとにある針聞書別本によると、

「坑腓といふ虫あり。膕から踵を常住の住処とす。蘭書に見ゆる小鬼の如く、槍もて小躍りするといふ。この虫、酒を殊の外嫌ひ、体内に酒精入れば、怏々として槍を研ぐ。一方、加児丘母【編者の註にいはく「こはカルキユムのことなり」】を好み、それなくば鬱々として愉しまず。しかして酒精体内にありといへども、加児丘母なくば、槍立て足を踏みならし、小躍りするかのごとく暴れるなり。こむらがへりといふもの、なべてこの虫の暴れるによらざるべからず」

 とあります。昨朝からこの虫に苛まれて、一日ひどく苦しんでをりました。一考さまもお大事に。


2008年01月12日

目耕  | 一考   

 高遠さんご紹介の針聞書を面白く読んだ。いつも佳きご教示を受け感謝する。肺積(はいしゃく)はお気に入りで、虫の特徴、治療法として「鼻は肺の穴である。善悪の臭いが嫌いで、生臭い香りが好き。辛いものが好き。この虫がいると常に悲しい気持ちになる。針は柔らかく浅く打つとよい」と記されている。「鼻は肺の穴」はタルホを連想させ、私などは「悲しい気持ち」に留意する。きっと私のなかにも棲息しているに違いない。
 針聞書は検索していただくとして、このような文章を読むと目耕の虫が疼きはじめる。目耕は眼底に巣食う虫で、美醜の臭いに過敏。体は細長く、尾端に二本の尾角と一本の尾毛がある。体は銀白色の鱗におおわれ、長い触角をもつ。数ある虫のなかでスーパー学歴を誇るのはこやつのみ。ネクラで厭人癖があり、寄生するにひとを撰ぶ。貪慾な食欲で排泄物が目脂となって流れ出る。地方によっては蠹魚とも。
 さて、針聞書に出てくる生薬について一言。事前に断わっておくが以下は甘草の丸呑みである。

木香(もっこう)
インド北部原産のキク科トウヒレン属の多年草の根を乾かした生薬。芳香と著しい苦味があり健胃剤、かつては衣服の賦香、防香にも用いた。唐木香とも。

白朮(びゃくじゅつ)
中国中部原産のキク科オケラ属植物の根茎の周皮をはぎ除いた生薬。健胃、整腸、利尿、止汗薬。屠蘇散にも用いる。蒼朮とも。

縮砂(しゅくしゃ)
ショウガ科の多年草で東南アジア原産。花穂は濃紅色で地下茎から別に生じる。種子には芳香があり、精油部を含み芳香のある白花をつける。健胃剤などに用いる。日本には安政年間以前に輸入、伊豆縮砂はハナミョウガ、ゲットウ、アオノクマタケランの種子で同じく芳香性健胃剤とする。ほざきしゃが、東京縮砂。唐縮砂。ジンジャーとも。

阿魏(あぎ)
セリ科の多年草。イラン・アフガニスタン地方原産の薬用植物。根から得た樹脂を固めた生薬。駆虫、去痰、通経剤などに用いる。そらしとも。

我朮(がじゅつ)
ショウガ科ウコン属の多年草でヒマラヤ東部、インド北東部原産の薬用植物。肥厚した根茎を乾燥したものを芳香性健胃剤として用いる。胃痛、消化不良、腹満、腹痛、嘔吐のみならず、通経剤としても使用する。鹿児島県熊毛郡上屋久町は我朮の栽培で知られる。

大黄(だいおう)
タデ科の多年草で中国華北の原産。根茎は黄色で肥厚し、その外皮を除き乾燥させたものを緩下剤・抗菌剤として用いる。また消炎、解毒作用があり、はれものや湿疹などに外用される。ディオスコリデスの「薬物誌」に記載あり。古来、中国からヨーロッパへと輸出された数少ない生薬の一。

呉茱萸(ごしゅゆ)
ミカン科の落葉小高木で中国中南部原産。果実は香気と辛みがある。鎮痛、健胃、止瀉、駆虫作用があって、頭痛、腹痛、嘔吐、冷え症などの治療に用いる。川薑(かわはじかみ)とも。

車前子(しゃぜんし)
大葉子(おおばこ)科の多年草。生薬では種子を車前子、全草を車前草という。古くから知られる民間薬。去痰、鎮痛、下痢止め、止血剤として用い、膀胱結石、月経過多、眼病などの治療にも。ただし、目耕の虫には効果なし。人によって踏み固められた所に生えるので路上植物と称され、繁殖域は高山帯にまで達しているが、人に踏み付けられないと自然に消滅する。

甘草(かんぞう)
マメ科の多年草で中国北部に自生。根は赤褐色で甘根もしくは甘草と呼び、特殊の甘味をもつ。乾燥させて矯味、緩和、鎮咳、去痰薬として用い、消化器の潰瘍などにも有効。漢方では多用され、丸薬基剤の他、甘草湯、葛根湯などに処方される。あまき、あまくさとも。


2008年01月11日

ふたり連れ  | 一考   

 ですぺらの先代、智佳の客がふたり連れで来られた。この辺りに僕の画が掛かってい、ボトルも二本入れていたのだが、それはどこへ行ったのかと訊ねる。知らないと応えると、店の改装は誰がやったのか、改装した本人なら知らない筈がない、と返す。バックバーの中央部を指して、ここにあったと宣われる。さぞかし値の張るボトルだったに違いない。まるで私が猫糞を決めこんだようである。ずらっと並ぶマッカランの後方から件のボトルがいまにも現れそうな雰囲気だった。
 はなしの内容からひとりは絵描きと覚しい。その執着ぶりから推して高名な絵師に違いなかろう。店内に掛けられた雪岱には一顧だにしない。僕の絵は、僕の絵が、との仰せであった。聞き及ぶところでは智佳のママは亡くなり、二年前の十一月に店は閉められた。閉店に先立つ半年前に臥せったとも聞く。一月に一回でもそれを常連とは言わない。いわんや、一年半の年月を経れば馴染みですらない。愛着があり、思い出深い飲み屋だったと聞かされたが、それなら猶のこと日参すべきでなかったか。飲みしろとは酒の代金ではなく、そのスペースに払われる金数をいう、いわば所場代である。
 一月ほど前にも同様の客が来られたが、こちらは律儀なひとでウィスキーを二杯飲まれた。二人連れは絵もボトルもないのを確認されるとそのまま座りもせずに帰られた。飲み屋には付きものの一齣。


ドメインレポート  | 一考   

アクセスログは31日分が残されている。以下はある日のドメインレポートだが、掲示板スパムが大挙襲来していることが分かる。技術開発担当者によって水際で阻止されているが、困ったものである。押し寄せるのはgooglebot.comだけにしてほしい。

リクエスト件数 ドメイン
1439 .jp (日本)
421 [未解決IPアドレス]
445 .net (ネットワーク)
363 .com (商業組織)
9 .be (ベルギー)
1 .ma (モロッコ)
1 .es (スペイン)
1 .it (イタリア)
2 [未知ドメイン名]
1 .do (ドミニカ共和国)
1 .br (ブラジル)
1 .pl (ポーランド)
1 .org (非営利組織)
1 .ch (スイス)
1 .info (一般(情報))
1 [ドメイン名未付与]
1 .cz (チェコ)


2008年01月10日

人生いろいろ  | 一考   

 「冷たくあってほしいと願う」ここに要点がある。暮れなずむ人生のひと日、さまざまなことを思い浮かべる。かつ消えかつ結びし日々を泡沫とさだめ、地上にとわの憶い出を遺せし人たち、こころならずも密咒を呟き、はからずも白鳥の歌を刻むしかなかった人たち、個々いろいろな人生を刻む。そして記憶はせつないほど懐かしい、はじめてめぐり会った遠い遠い時の爽やかさのままにある。
 冷たくあれとは、自らの情念を指す。「誠意、義理、情を三歩、歩いて忘れてしまうのが渡辺一考」とは石川潤さんの評するところだが、それは正しい。「正しい」ではなく、そうありたいと願っている。生きのびるための方策、それは自らを冷笑し続けるしかない。生きのびることが必ずしもよいとは思わないが、死に至る美学など糞食らえである。美は常にまるごとある。
 かつて「美しい日本」と題する文章を掲示板へ掲げた。「・・・美はそのままで全体である、まるごと、あるがままのものに解析は意味をなさない。言い換えれば、論理演算を苦もなくくぐりぬける能力を美は持ち合わせている。と言うよりは、その能力こそが美の天資なのである・・・個人は全体を構成する部分である、そこまでなら異議はない。しかしながら、個人の一切の活動は全体(この場合は美)の成長、発展(助長、深化でも同じ)のために行われなければならない、とするならばかなり危険な思想に近づいてくる。さらに、美に対する懐疑が喪われ、美が讃美の対象と化したとき、それを全体主義という」
 書いたのは二○○六年九月、Aさんを強く意識しての文章だった。若ければ若いほど、ひとは卓越したもの、超越したものに強く惹かれる。昼とか夜のような相対概念のなかにすら絶対概念を求めようとする、シュプレマティスムやシュルレアリスムの時代ではあるまいに。比較や対立を絶した存在を冀求して、至高を求めてひとは美の渦中へ跳びこんでゆく。美と絶対との相々の道行、その先には死が待ち受けている。もしも死ななければ、懐古の日々を送ることになる。
 思うに、生きるとは俯して僂(かが)まることではないだろうか。眉目の見ぐるしさでも不格好でもよろしいが、しゃがみとまがりのうちにこそ、躊躇いがあり、遁巡があり、佶屈がある。生きるなら、素手で空虚に触れたいと思う。「年新たに、虚無の杯を」とは掴んで離さない空虚、そのひりひりとひろめく小刻みな震動への冷たい讃辞に他ならない。


2008年01月09日

願いの糸  | 一考   

 謎の美少女さんのメールが不通である。よって、こちらで書かせていただく。ちはらさんに彼女のことを話したところ、十九日の鴨鍋を馳走したいとのこと。ご一報を乞う。
 いつか掲示板で著したように「涼やかな眼差し」の訪いを嬉しく思う。そして、いつまでも涼やかで冷たくあってほしいと願う。願いは七夕の竿の先を飾る五色の糸、機織と同じくひとの世の機微にも通じていただきたいとの願い。
 それはいたずらに生きのびし意志弱行の者たちへの誘い、やるせない遠吠えの咽をうるおすために酒はまだある。いのちを断つなんて。


アクセスログ  | 一考   

 一昨日のウェブサーバの統計の一部(アクセスログ)を紹介する。解析対象期間は1月07日00時00分から1月07日23時59分までである。
 リクエストの内、ウインドウズからは1505件、マックからは160件、ユニックスからは2件、リナックスからは2件、其他が511件、ロボット検索が411件となっている。平均すると日々2600から3000件ほどだが、そのようなカウントに興味はない。面白いのは検索の内容である。その一部は以下のごとし。

 ボウモア ウィルソン、賃貸 立ち退き 営業妨害、ですぺら、キングスバリー ヘブリディーズ 18、ムスカデ メテロ、モルトシェリーとは、ラガヴーリン シェリーカスク、ゴードン&マクファイル マッカラン、高遠弘美、スキャパ オイリー、グレンギリー 再操業、泥酔 掲示板、腓返り、香辛料一覧、ロッホインダール17年 ディスティラリーコレクション、ブラッドノック オフィシャル、mail MacOSX データ、エイジング モルト イン、グレンキンチー蒸留所、アンガス ダンディー、シングルモルト カリラ ゲール語 由来、スキャパ12年 販売、自在継手、ローズバンク 92、肉料理 オレガノ、キングスバリー、ザ カスク オブ 山崎、ハーベイ パロ・コルタード、ラフロイグ エイコーン 59.5、スプリングバンク25年etc

 ウィスキーが多いのは当たり前だが、注目を惹くのは香辛料である。項目は異なるが、欠かさず二、三件のリクエストがある。香辛料の項目をさらに充実させろとのご意見かとも思われる。書く気はあっても暇がない、長い夏休みのあいだに処理すべきだった。
 高遠弘美さんや芳賀啓さん、新宿のナベサンが入ってくるのはご愛嬌。文学関係で検索してもですぺら掲示板は引っ掛からないように書き込むときに細工を施している。
 ひとから言われてアイラストームを検索したところ、ですぺら掲示板2.0がトップに躍り出た。これはロボット検索のなせる業だが、それにしても、Googleのロボットはですぺらを目の敵にしているようでもある。一日、四百のリクエストは多すぎる。ロボットの目には訳の分からない泥酔掲示板と映っているのであろう。


2008年01月08日

かも鍋  | 一考   

 十九日の土曜日は恒例の鴨鍋のために店は貸切になる。先着七名様、費用は五千円ほどになると思う。各人飲み物は異なるので、酒代は別である。どうしようかと迷っていたのだが、おっきーさんの要望で催すことにした。予約を乞う。

 ウェブサーバの統計を見ていて、鯛の子の煮付けの作り方で検索なさった方が複数いらした。いつも書いているのだが、濃口醤油1、薄口醤油1、味醂2を鰹と昆布の白出汁で薄める。この場合は四倍ぐらいに薄め、二十分ほど煮付けて、一旦冷やす。照りを出したければその分、出汁を濃くすればよい。砂糖や味の素は無用。鯛の子を事前に二等分に切り、沸騰した出汁のなかへ入れれば花のように拡がる。


オスロスク  | 一考   

 サントリーが売り出したマクレランズ・スペイサイドは2000円ほどの安価なボトルである。「マクレランズ社のエントリー・ブランド。シェリー樽由来の軽く焼いたプリン、クリームプリュレを思わせる香り、スペイサイド特有のフルーティな味わい。フィニッシュはオスロスクやダフタウンのようにふっと消え入るような風情、さて中味はなんでしょう」とかつて書いたが、中味はオスロスクである。サントリーは秘しているが、間違いない。
 他方、シングルトン10年43度の旧ディスティラリー・ボトルについても書いている。「蒸留所名はオスロスク。シェリーとバーボンの古樽を熟成に用いるダブル・マリッジ方式を採用。フル・ボディでまろやか、豊饒な香りを持つ正統派ウィスキー。トフィー、カラメル、シェリー酒等の潤沢なこくと味わい、長いフィニッシュ、溢れんばかりの心地よい刺激、が売りだったが、年々シェリー香は薄れ、かつてのペティキュラや90年代前半の40度ものと比して見る影もなく、2001年夏に絶版、2002年に花と動物シリーズに引き継がれた。大量生産を基とするディスティラリー・ボトルの悪しき典型」

 オスロスク蒸留所の創設は1974年。250エーカーの農地に建てられた広大な蒸留所。既に数々の品評会で受賞し、国際的な名声を得ている。クラガンモアと共に、スペイサイドのよさをすべて備えた銘酒とされる。ブレンデッド・ウィスキー「J&B」のメーカーであるインターナショナル・ディスティラーズ・アンド・ヴィントナーズ(I.D.V)が親会社。同社は1990年代後半にユナイテッド・ディスティラーズ(U.D)社と合併、現在のディアジオ(U.D.V)社である。
 シングル・モルトの発売は1987年より、翌年には日本市場にも登場。75年蒸留の12年ものは熟成の終わりの二年間をシェリー樽で過ごす。現行のラベルと比してメダルの記載がなく、下方ラベルにヴィンテージが印刷されている。10年ものは下方ラベルにエイジングが印刷され、当時のアルコール度数は40度である。
 シングルトン・マルーン10年の前にブルー・ラベルのシングルトン・パティキュラが頒され、下って2002年初頭からシングルトンに代わるディスティラリー・ボトルとしてオスロスクと名付けられたボトルが花と動物シリーズの一本としてリリースされた。同時頒布はストラスミル、グレン・エルギン、グレン・スペイの計四種だったが、それを最後に花と動物シリーズ二十七種は終了した。そして名称は変ったものの香味になんら変化は認められない。
 この変化は認められないというところに問題がある。上述した二点にかかわることだが、オスロスク蒸留所のディスティラリー・ボトルはとにもかくにも不味い。それと比してボトラーズのボトルはいずれもが旨い。
 ちょいと整理してみると、カスク・ストレングスがクライズデール、ケイデンヘッド、ゴードン&マクファイル、ダグラス・マクギボン、ダグラス・レイン、ブラックアダーから。加水タイプがケイデンヘッド、ドナート、マーレー・マクデヴィッド、イアン・マクロード、スコッチ・モルト・セールスから頒されている。
 その内、スコッチ・モルト・セールスからのボトリングはケルティック・クロスとグレン・ヒースの二種。かつて、グレン・マレイを核としたグレン・ヒースと称するピュア・モルト・ウィスキーが頒されていたが、こちらのグレン・ヒースとは全く異なる。オスロスク蒸留所の10年ものシングル・モルト三樽をボトリング、1000本のリミテッド・エディションである。ディスティラリー・ボトルのシングルトンと比してまろやかさで優る。色は淡く、カラメル香もなく、シェリー酒のテイストが濃厚。
 なお、イアン・マクロード社のボトルはメドックやポート・フィニッシュなど手のこんだものが多い。
 ディアジオ社からは上述の花と動物シリーズの一本としてオスロスク12年ものが、そしてレアモルトも一度だけ、28年もの56.8度をボトリングしている。レアモルトは売り切れたが、ダグラス・レイン社の74年蒸留の27年ものはあと一本在庫がある。43.8度のカスク・ストレングス、246本のシングル・カスクであり、レアモルト同様、蒸留所創設の年のボトルである。
 ケイデンヘッド社は89年蒸留の樽を多量に熟成させている。最新のボトルはシェリー・バットの15年もの、59.5度のカスク・ストレングス、636本のリミテッド・エディションである。かつてオーセンティック・コレクションの一本として、オーク・カスクの8年もの、61.4度のカスク・ストレングスを頒しているが、数多いケイデンヘッド社のボトルの中でも特筆ものだった。
 クライズデールのボトルに替わって頒されたのが、ダグラス・マクギボンのボトル。95年蒸留の5年もの、62.3度のカスク・ストレングスである。
 繰り返すが、ディスティラリー・ボトルは不味い。その消息はノックドゥー蒸留所のディスティラリー・ボトル「アンノック」と似ている。ノックドゥーのどこをどうヴァッティングさせれば、あの不味いアンノックに化けるのであろうか。それにしても、マクレランズ・スペイサイドのカスク・コンディションは素晴らしい。至福のひとときを味わうに大枚はいらない。


オーバーパンツ  | 一考   

 二十八日は土砂降りのなかを帰宅。雨がレインコートを抜けて、下腹部の大事なところがびしょ濡れになった。レーサータイプのバイクならガソリンタンクの手前が盛り上がっていて下腹部が濡れはしない。しかし、それでは腹が閊えるのと前傾姿勢に身体が耐えられない。
 下腹部は冷たいのを通り越して感覚がまったくない。帰宅後、モノを確認するも純白にちぢまっていた。指も真っ白、髭も真っ白、序でに髪も真っ白、心做しか腹までが白く思われた。二重、三重に重ね着しているのだが、膝は振るえだすと止まらない。ガクガクガタガタのまま、家路をたどる。そろそろオーバーパンツが必要になってきたようである。
 先日、顔の下半分を蔽うマスクと手袋を買った。薄いが空気を完全に遮断する、不思議なことに濡れても冷たくならない。水密式ならぬ風密式、もしくは温密式とでもいうべきか、すこぶる具合良くできている。痛い出費だったが、ウェット‐スーツに用いる材質とかで洗濯も可能である。ゴルフやスキーに用いるスポーツ用品は厚いばかりで、バイクではなんの役にも立たない。
 明石時代にゴアテックスのレインコートを高値で購入したが、百二十キロを超えると雨が突き抜けてくる。二百キロだとコートのなかが暴風雨になる。耐水圧性がすぐれている筈なのだが、それは静止した状態であって高速走行では用をなさないらしい。この件にかんしては石井さんと意見を同じくした。アメリカの科学者W. L. ゴアも案外だらしない。これからは土砂降りに限って車を利用する。

 ソーシャル・ネットワーキングとやらを退会した。一部のひとに迷惑を掛けることになるが、こちらでお詫びしておく。


2008年01月04日

新年  | 一考   

今日は酒を飲むことができる。
年新たに、美酒すこし、虚無の杯を。

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