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須永朝彦追悼特集   一考   

 

 「ユリイカ」の増刊号で須永朝彦さんの追悼特集が頒される。わたしにも原稿依頼があったもののお断りした。コーベブックス時代にはじまる彼との交誼はほぼ50年に及ぶ。往時、半年近く起居をともにした。書くことはいくらでもあるが、オフィシャルな場では御免被りたい。代わりにといっては失礼になるが、岡田夏彦さんと岸田典子さんを紹介しておいた。
 かつて人文書院から夕暮の諧調が上梓され、まもなく三茶書房の目録に夕暮れの階調の肉筆原稿全揃いが掲載。ところが、同書は雑誌発表の稿を集めたもので、諸誌のコピーが元になった。須永さんによると彼が歴史的仮名遣いに改めたとのことだが、当時の人文書院の編輯者は全員が歴史的仮名遣いをよくし、当然編輯部で仮名遣いは訂正された。三茶のご主人(故人)によると原稿を売りにきたのは須永さんとのこと。要するに金欠の須永さんのアルバイトだったわけですが、塚本さんは激怒、出入りを禁止します。これは単なる一例であって、彼によって拵えられた贋作は数多、ひとり塚本さんにとどまらない。種村さんの贋作者列伝に加えればとの誘い水に種さんは嗤っておられた。
 塚本さんの弟子筋は全員が須永さんと絶交しましたが、岸田典子さんだけはその後もお付き合いが続いた。件の原稿は政田岑生さんが購入、闇に葬った。そうした実像をもっとも識るのは中井英夫さんと相澤啓三さん。高橋睦郎さんのお三方だったのですが、睦郎さんはまず書かないでしょう。
 当然のことですが、須永さんのアルバイトと才能とは別物、というよりもアルバイト自体、天晴れな才能とわたしは心得ている。彼の死の渦中にわたしはまだ捕らわれている。おそらく、これからも。

追記
 岸田典子さんは塚本さんを泣かせた唯一の方で、本職は歯医者。泣かせたのは歯の治療である。彼女は苛烈な人生を送られているがゆえ、実に温厚な方。「朱絡」「青琴」の歌集、「黄冠の歌人」評論、「ちぎれ雲」自伝などがある。


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2021年08月24日 06:01に投稿された記事のページです。

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