このところ、ヤフオクに素敵な油滴天目茶碗が出品されている。安価なものはそれなりにだが、3万円を超える商品のなかには驚嘆させられるものがある。名前は伏せるが、備前の名のある陶工の息子が父親のコレクションを掻っ払っては小遣いにしていた。事情を承知で引き取る古物商がいたのである。納得ずくでそれらのほぼ盗品と思しい陶磁をわたしは購入していた。その中に数点の天目茶碗が這入っていて、大切にしていたのだが、阪神淡路大震災でなくしてしまった。それゆえ、再度買おうとは思わない。しかし、ヤフオクを観ていると清水千代市さんのところにいらした佐藤さんと備前の窯元を訪ね歩いたのを思い出す。備前に限らない、平織りの丹波布に綾文様の技法を取り入れた福永世紀子さんをはじめ、さまざまな民芸品の紹介に与り、それらは書物の装丁に生かされている。良い時期に出会えたものである。
わたしの好みは柿釉である。今では岐阜県土岐、滋賀県大津などで結構な作品が多く造られているが、わたしは京都の鎌田幸二さんが好みである。それはさておき、写真下段は丹波布、三橋敏雄さんの限定版の表紙に用いた。上段の油滴天目茶碗は美事である。