萩原健次郎さんの影響で大枚4100円を払って写真機を買った。オリンパスのSP-610UZで所謂コンパクトデジタルカメラである。女性の持ち物だったようで、まるで新品である。電源スイッチとシャッターを除けば触るところはひとつしかなく、複雑な操作がなにひとつできない。素人は簡単な入門機から這入らないと後が続かない。電源が単三電池なのも気に入っている。
父親がカメラに凝っていた。そのカメラはレンズ一式を添えて周さんの友人のところへ嫁いだ。その父の影響であろうか、カメラなるものになんの興味も抱かなかった。過去の写真も40枚ほどしか持っていない、記録自体に興味がないのである。ところが、萩原さんによって記録が記録でなく表現になることを知った。要するに、ひとの顔以外のものならよいのである。さて、なにから撮ろうかしら。