戸井田さんが3連荘(レンチャン)でいらした。忝く思う。彼が和食を食べたいというので、同じ鍛治屋町の扇翠を紹介した。白だしの取り方で定評のある店である。彼はハモを食したようだが、当然、ハモ料理はハモで出汁を取る。ハモに鰹だと興醒めである。割烹は料理に応じて白だしを細かく作り分ける、わたしも10代の頃は幾通りもの出汁を作っていた。鯛や蛤の潮汁は夙に知られるが、カワハギの汁(あら汁のカテゴリーに属する)も旨い。用いる調味料はいずれも塩のみ、吸口に木の芽を浮かべる程度である。吸い物には醤油などを用いるが、潮は塩だけ、まったくの別物である。
東京のラーメンがアゴブームの火付けらしいが、最近、料理屋でマグロやアゴで出汁を取る店が増えている。素人料理ならなにもいわないが、これはいただけない。ゴールデン街のナベサンはアゴで出汁を取っていた。恰度、三平汁のような趣で、北海道の日本海側の郷土料理だった。根菜が多く這入っていて酒の仕上げによかったが、わたしは頂戴していない。子供の頃からアゴだけは遠慮願っている。先日、来住さん来店、彼が勤めている料亭もアゴを用いるといって怒っていたが、確かにアゴが持つ臭みには品というものがまったくない。同じ煮干しを使うならいりこの方が品があって断然旨い。妙なものが流行る時代になった。