自分で売っていながら云うのもおかしなはなしだが、オールドワインを国内で買うのはリスクが高すぎる。
クール便がはじまったのは1987年、同じ年に日本でワインセラーが製造販売されるようになった。リーファーコンテナがはじまったのは翌1988年、しかし当初はトラブル続きだった。列車があるいはトラックが火を噴いたとの事故が多発した。詳しくは書かないが、安定するのは2000年に近くなってからである。またリーファーコンテナによる運送はフランスと日本との間の便が最初で、ドイツ、イタリア、スペインのワインはフランス経由でわが国へ輸出された。要するに、今ではクール便が普通になったが、往時はクール便なるものがなかった。
そして気候である。ほぼ温帯湿潤気候に属し、四季がはっきりしていて降水量が多いのを特徴とする。フランスは同じ温帯であっても、地中海性気候に属し乾燥している。海外から届くワインは、輸送時の環境変化や振動でコンディションとバランスが崩れてしまっている。もともと変質しているのが当たり前なのがワインの世界である。それを四季という名の気温の変化が襲うのである。ヴィンテージもので満足なワインなどあろう筈がない。また、1万円以下の価格帯のワインは長期熟成を前提に作っていないので、早めに飲んだ方が旨いに決まっている。
赤坂時代、若い女性がボルドーの高級品は渋いので好きといっていたが、その渋みをなくしていくのが熟成でと説明したものの、考えてみれば、彼女の言い分の方が理にかなっているのかも。なぜなら、わが国の気候で熟成など不可能、だったら、渋いままに新しいワインを飲むのが正しかろう。酒と言えば酎ハイやハイボール、日本酒、焼酎が一般的な日本の世界。普通の店に入って旨い酒なんかにありつくことは絶えてない。ウイスキーであれワインであれ、通常手に這入るようなものはせいぜい酎ハイ程度の味わいでしかない。いわんや、その酎ハイ程度の味わいのかつヴィンテージものとくれば、美味い理由を探そうにもどこにもない。
追記
ワインを購入する際、どこのインポーターの扱いかということに留意していただきたい。同じワインで値の安いものに手を出してはいけない。「ワインの扱いの違いがもたらす味わいの差」こそがもっとも大切なのである。
ワインバーというカテゴリーがない時代に「サヴァサヴァ」から「ヴァン・ヴィーノ・ブリュレ」そして「ル・テロワール」などを立ち上げた今井健夫さんはいま「ワインホリック」を営まれている。日本でワインを買うならここしかないと思うのだが。
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