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中庸   一考   

 

 本年最後の血液検査に行ってきた。尿タンパクが異常に下りている、腎臓がタンパクを留められないのである。とはいえ、これ以上タンパクを制限すると体内の残留タンパクが危うくなる。悩ましい問題である。
 いずれにせよ、もう少し様子を見ようということで処方箋をもらってくる、一月末までの薬である。血圧が若干高いのだが、降圧剤を50ミリグラムから100ミリグラムに取換えたばかりなので、あまり気にしないでいる。いま処方されている薬剤は身体に馴染むのに四箇月ほどかかるそうである。
 このところ、療養食に飽いてしまい、タンパク、ナトリウム、カリウム、リンは守っているものの、それ以外はかなり自由に食している。例えば、焼き肉は駄目だがステーキの粒胡椒焼きなら大丈夫、白身魚フライはチリペッパーで味付けをする、先日の合鴨も塩抜きで晒した白髪葱を大量に添えて家のメニューに加えようと思っている。どうやら魚と肉に飢えているようである。

 昔、西洋料理店はどことも薄味だった。味が薄いと思う方は自分でソース、醤油、塩、胡椒などを追加して食べていた。そのために、テーブルにはそれら調味料が用意されていた。現在では、そうした中庸の味付けはホテルの食事にのみ残されているとわたしは思ってきた。朝食の目玉焼きやスクランブルエッグにいくらなんでも塩胡椒は振るまいと思っていたのである。ところが行く先々でそうでもないことに気付かされた。乙張の利いた濃厚な味が好まれる、まるでホテルや割烹の料理までが拉麺なみになってきたようである。ちなみに、わたしは拉麺を料理として認めていない。
 子供の頃、料理人になるとは薄味に馴れるのが必定の条件だった。板前が身を持ち崩すのはことごとくが酒を嗜むことによって味付けが濃くなってゆく、もしくは一人住まい故に外食に口が慣らされてゆくのが理由だった。蛙の列なった卵を想起させる蛸の卵(海藤花)を吸い物で頂戴するとき、一緒に入れる浜ぢしゃの新芽と松の実の幽けき香を楽しむのが料理の醍醐味だと聞かされて育った。そうした割烹料理までが時代に取り残されてゆく。
 陸ちり(おかちり、白身魚の薄造り)で一枚の皿に河豚、虎魚、皮剥、平目、鰈と順に並べて、食べ分けられる方が幾人いるのだろうか。日本近海には約五十種の鰺がいる、伊豆のカイワリと福井の寒鰤にとどめを刺すと思うのだがいかが。料理人は客を啓発させるのが仕事であって、決して迎合したり同意を求めてはならない。常にひとりそっぽを向いていなければならないのである。


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2009年12月28日 19:48に投稿された記事のページです。

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