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Uターン禁止   一考   

 

 トラブルは顕在化する前にいくつもの兆候を持つ。気づけば良し、気づかねば後悔する。気づいたところで、なにもせずに放置すれば同じこと。大概は退っ引きならなくなって初めて事態の深刻さに気づく。わたしが透析に至ったときの消息も似たようなものだった。
 病の場合は担保なり抵当が自分の身体なので自分の枠を超えることはない。しかし、男女の場合にあっては顕在化したときはお仕舞いのケースが多い。恋愛の根底にある強い性的興奮は青年期特有のもので、そのようなものをいつまでも引き摺っているわけでない。恋愛ほど容赦のない対人関係はない。時と共に恋着、追慕、懸想と思っていたものが細かく切り刻まれてゆく。
 家庭の本質は他の侵入や介在を許さない占有者の空間、謂わば縄張りそのものにある。従って、互いのテリトリーを異としはじめたところから既に破綻がはじまっている。ひとつの領域に複数の占有者の空間などあり得ない。夫婦間であれ、親子間であれ、自らの領域を持とうと思った瞬間、家庭は崩壊し、個々は独立した領域を持たなければならなくなる。そうでなければ、テリトリーをめぐって攻撃と防御の行動が生ずることになる。分かり易く云えば戦争である。
 例え、薬物依存であれアルコール依存であれ、または腎不全であったにせよ、それを攻撃や防御の行動の理由にはできない。事情の如何を問わず、家庭内暴力(言葉の暴力を含めて)は許されるものでない。それらは個内部の問題であって、テリトリーの問題ではないからである。
 ごく僅かずつ、時を掛けて歪められて行ったテリトリーの修復は難しい。その歪みは男性の傲慢さに比例する。そして男性は女性ほど寛大でもないし明晰でもない。何時も書いていることだが、男には男の、女には女の明晰さがあって、それらは相容れない。間違いなく云えることは、土壇場に陥ったとき、男の振る舞いは未練がましくなる。わたしも未練がましく、透析に這入り腎移植へと至った。


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2014年05月08日 17:47に投稿された記事のページです。

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