写真は野崎錦正さんの作品、薩摩焼である。作品と一緒に「薩摩焼のしおり」が投げ込まれている。おそらく他の薩摩焼にも同じしおりが添付されているものと思う。
文中、薩摩焼には「白もん」と「黒もん」がある。その二種はそのまま用と美の両面を表現しているとされるが、用と美の意味はそういうものではないだろう。用と美と云うように、対立的概念として捉えるから話はおかしくなる。柳宗悦が唱えたのは「用の美」であって「用と美」ではない。民芸運動を起こした先人の文言を恣意的に改竄するなど以ての外である。
「白もん」とよばれる白い細かな罅り(貫入)の這入った陶磁、植物の宝石と云われる錦蘭(斑入りミヤマウズラ)の美麗な上絵はことのほか気に入っている。本品は蔓が右巻きゆえ野田藤だと思うが、折角の陶磁がつまらないしおりで台無しにされるのが忍びがたい。