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TPPと混合診療解禁   一考   

 

 前項で「免疫療法は自由診療分が加算されるのでこの限りでない。わたしの場合、点滴一本分で10万円から18万円、さらに体重比で300万円ほど掛かる」と書いた。現行法では混合診療が認められていないので、一部に自由診療を取り入れると、遡ってすべての診療が健康保険の対象外となる。要するに前述の40万円は133万円に、80万円は270万円になる(3割負担の場合)。
 TPP反対論者の意見だが、医療費の高額化によって差別化がはじまると云うのがある。ついこの間、知己からも云われたが、勘違いも甚だしい。高度医療は結果として高額医療であって、昔も今も受けられるひとがいれば、受けられないひともいる。そして混合診療の禁止が医療費をとんでもない高額に引き上げている。
 例えば歯科医にあっては混合診療が認められている。大都会には保険診療を受け付けない歯医者もいるが、多くは保険診療と自由診療を併用している。保険対応の部分入れ歯はクラスプだけだが、他にもコーヌス・テレスコープ、スマイルデンチャー、シリコーン、ホワイトクラスプ、アタッチメント義歯などがあって、すべて保険外だが、患者は懐具合と相談の上、適宜利用している。わたしは保険対応のみの治療だが、それを医師が差別することはない。
 要するに、歯科医院の場合、患者はさまざまな治療を選択することが可能である。ところが、歯科医院以外の病院や診療所にあって自由診療を一部でも取り入れると、それ以外のすべての診療が保険の対象外となってとんでもない金額を請求される。「医療費の高額化による差別化」が行われているのは現在であって、TPP締結によって混合診療が自由化されると医療費は廉くなり、ひとつひとつの治療は患者が納得した上で選択できるようになる。

 歯科医はともかく、免疫療法のごとくそれしか治療法がない場合が困るのである。例えば大腸癌と膵臓癌の抗癌剤は同じ物だが、大腸に用いる場合は保険対応で、膵臓に用いる場合は保険外になる。わたしが毎日用いている免疫抑制剤は全身性エリテマトーデスには保険対応だが、臓器移植がもたらす拒絶反応の抑制に用いる場合は保険対応外となる。
 現行法下で混合診療を受けようとすると、ふたつ以上の病院を往き来しなければならない。入院中にこの点滴は保険対応外すなわち自由診療ですがと云われると、直ちにA病院からB病院へ移り、そちらで点滴を済ませてA病院へ戻ることになる。すなわち、保険診療専門の病院と自由診療専門の病院とを別けて考えなければならない。そのようなことは現実には不可能に近い。
 過日、クレアチニンを1.2に戻すための免疫抑制剤が300万円ほど掛かるがどうするかと問われて断わった。移植した臓器や組織に対する拒絶反応に限らず、自己免疫疾患による潰瘍性大腸炎の治療にも免疫抑制剤が必須である。こちらは即刻命にかかわることなどで治療を受けた。共にわたしの自由意思である。
 大きな声では云えないが、一部の医師は内緒で混合診療を取り入れている。そうでなければ臓器移植など端から不可能である。治療はおろか、生命を維持する上で健康保険外の治療が必要な患者は多くいる。そのひとたちにとってTPPは一刻も早く締結されなければならない。難病で苦しみ悩むひとびとを健常者はなんと心得ているのだろうか。感情論に基づくTPP反対なんぞ、糞食らえである。

追記
 免疫療法は副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤だけではない、三種混合ワクチンをはじめとするさまざまなワクチンも免疫療法である。


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2013年07月10日 23:54に投稿された記事のページです。

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