病院A棟の隣ビルはマンションだった。それが取り壊され、病院の一部として改築に這入った。パワーショベルやクラムシェル、クレーン、ミキサー、ダンプなど、さまざまな重機が入れ替わり立ち替わり送り込まれる。職人から土工、鉄筋工に到るこれまたさまざまな人々が現場に群れる。
かつて福井県のダムサイトで、わたしも働いたことがある。重機のオペレーターとしてである。重機の運転免許証は公道を走らせるためのものであって、現場(閉鎖された特定の地域)では免許証は不要である。わたしも免許証は持っているだけで、現場で叩き上げた人の技術には到底かなわない。
隣のショベル(関東ではユンボと云われる、ユンボはメーカーの商標名)の運転は実に巧い、見惚れるほど鮮やかである。わたしにはそのような腕前の持ち合わせがなく、福井では固定式クレーンの運転を仰せつかった。ちなみに、わたしが持っているのは移動式クレーンの免許証とショベルローダーの掘削、積み込みである。それほどに、有免許と例え無免許であっても現場の人間の実力は違う。
重機の運転はメーカーごとにまったく異なる。わたしが習ったのはKOBELCOだが、確か日立建機とはレバーの位置がことごとく反対だった。隣の現場はKATOとICHIHARAだが、大分違うようである。極端な云い方をすると重機のメーカーごとに免許証が異なるようなものである。この煩雑さが現場の人間の実力をさらに高める。
追記
鉄筋工が持っているきらきら耀く短い指揮棒はなんだろうか。左手に細い鉄線を持ち、右手で持った棒をくるくると回す(左右は単なる癖、どちらでもよい)。鉄筋と鉄筋を結びつける小道具に違いないのだが、その様がまるで手妻遣のように見える。