わたしの下血は大体1000ミリリットルから2000ミリリットルの間である。そしてわたしの血液量は4300ミリリットルから最大4800ミリリットル。その内、8パーセントは水分である。
輸血はすべて血液製剤。600ミリリットル以下の出血に対しては原則として無輸血とし、600ー1200ミリリットルの出血に対しては濃厚赤血球を、1200ミリリットルを超える場合にはじめて濃厚赤血球と全血を適宜併用する、となっている。なお、輸血の1単位とは140cc、わたしが今回輸血したのは計13単位だから1820ccになる。
今回の下血は、1日から13日間に亙って1500ミリリットル強の血が流れ出た。特に24日は1時間足らずで700ミリリットルを出血、見てる間に血圧が下がり、60を切って痙攣と失神に到った。書いてしまえばこのようになるが、下血は悍ましい。なぜかと云うに、自分が意志するとしないとにかかわらず、血は吹き出てくる。
トイレへ這入るなり、下血がはじまり、お襁褓を下ろす暇さえなかった。穿いているお襁褓の上部から血が溢れ出てくる。一瞬たじろぐ、どうしようかと考える。何等の旨意すらなく、脂汗が出、血圧が低下し続けているのが分かる。このままでは危ない、気を失うのでないだろうか。手に負える状態でなくなりつつある。看護師の手を借りようとトイレのナースコールを押す、と同時に第二波の下血、トイレが血の海と化す。
看護師が現状を把握、相棒を連れてストレッチャーと共に戻る。ストレッチャーを指して防水だから大丈夫、そのまま乗って、と大きな声。ストレッチャーを押して走りながら、Dr.コール、酸素、点滴、ベッドに防水などと適確な指示を出してゆく。
血塗れのわたしをベッドへ移し、看護師が2人がかりで拭き取ってくれるのだが、お襁褓を抜き、パジャマを抜き、尻の血は下半身全体に回っている。そんな中、わたしの掌についた血をきれいに拭き取ってくださるひとがいる。人間というもの、旨意や知覚がまったく関与できない時の情けなさはない。このような悃款が身に滲みるのはそうした時である。
運を天に任せるのは良いのだが、この場合、命をも任せることになる。早急に下血を止める、早急に輸血する、なんらかの手を打たないと死ぬ。ちなみに、循環血液量の約3分の1が失われると血圧が低下して出血性ショックに陥り、生命が脅かされる。2分の1以上失われると心停止をきたす。心停止とは即死を意味する。
(註 お世話になった看護師のお名前は「再度顛れる」で著した。深甚の謝意を表したく思う)
(註 これで直接入院に関する稿はお仕舞い。思い出すことがあれば、改めて著す)