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再度顛れる   一考   

 

 2月24日は大変な一日だった。午前3時過ぎ、トイレへゆくが、一挙に200cc近い下血、お襁褓の上端を越えて血が溢れてくる。便器に座り込んだまま動かれなくなる。そのままの状態でストレッチャーに乗り、ナースセンターの診察室へ運ばれる。意識はあるが脂汗と軽い痙攣。同じ病院で立て続けに昏倒するとは。
 泌尿器科の当直の羽田医師が呼ばれ、消化器内科の医師も集まる。10分置きに吹き出す鮮血、医師によると約700cc。医師が同時に輸血(念の為に書いておくが、輸血は臓器移植の基本、何度も輸血するのは身体によろしくない)をはじめるが、袋を絞るような塩梅での緊急輸血。「非常時」「非常時」と呟いている。3単位目からは通常の速度に変わり、8単位の輸血(16日の5単位と合わせて13単位)を済ませる。ところで、4単位目から7単位目までの輸血の記憶が一部脱落している。聞くところにとると血圧が60を切り、おそらくその度に昏睡していたものと思われる。
 ところでこの間、ライン取りで医師は失敗を繰り返していた。そこで羽田医師は股の付け根の静脈から採血。正しい選択だし、それで良いのだが、結構痛みを伴う穿刺だった。
 この間、わたしは半ば失神、半ば覚醒していた。突然痙攣を起こすので両手首はベッドへ固く縛りつけられた。失神のときの注意事項として頭を下げ肢を上げるのはわたしには禁物である。看護師は無視するが、医師が聞き届けるようにと一言。序でに右手はラインがあるので構わないが、左手は自由にしてくれと懇願。こちらも聞き入れられ、縛り方を若干弛くしていただく。失神するには失神するためのスタイルが必要なのである。
 日曜日の早朝なるも、内視鏡で贔屓の羽山弥毅医師が駈け付けてくださり、下血箇所が大腸でなく小腸の奥だと判明。憩室でないことははっきりしたが、小腸の下血の理由がサイトメガロか、他に原因があるのかどうかは判然としない。要は感染症かどうかも分からない。内視鏡検査は7時半から8時過ぎまでかかった。抜き取るときに出血はほとんど止んでいた。なお、非番だった羽山医師の助手の看護師はバイクでご登場。その手の冷たかったこと、さぞかし心が暖かいに違いない。
 大宮の病院に小腸の内視鏡があって貸し出しが可能かどうかの問い合わせ。この内視鏡には麻酔もしくは鎮静剤が必要とか。鎮静剤がいらないカプセル型の小腸内視鏡もあるが、カプセルが小腸内で思うように回転しない。要は傷口を確認できるかどうかは運任せ、また鉗子のような処理を施す小道具もついていない。なんの役にも立たないが、おそらく用途が異なるのであろう。
 戸田中央では放射線による患部を特定した造影検査をはじめる。結核菌確認のため胃液採取。禁食が長期に及ぶため、頸に高栄養剤用(には限らないが)の点滴ラインを拵える、こちらは局所麻酔が必要。
 医師によるとサイトメガロウィルス腸炎による小腸の摘出手術の経験があるらしい。小腸は人間の臓器ではもっとも悶着の少ない箇所、その代わりおかしくなると執拗いようである。そう云えば幼児の小腸出血を耳にしたことがある。ところで、血液と共に腸の粘膜と思しき肉片がたくさん剥がれ落ちていた。腸の粘膜は新陳代謝のもっとも激しい部位のひとつだそうである。

 今回の下血ならびに発作が起きたのが、拙宅であれ屋外であれ間違いなく死んでいた。羽田圭佑医師が「非常時」と呟きながら対処してくださった熱意に感謝。病院内ならではの対応で、下血から輸血までおそらく15分足らずだった。今回もまた、命拾いをした。多くの医師、看護師、日曜日の早朝であるにもかかわらず、駈けつけてくださった瀬戸口医師にも感謝。
 それにしても痼疾(しかも命にかかわる)とも云うべき下血の理由が定かでないとは。理由が分からないままに下血が止まり、身体も落ち着いて退院、数年後に再発というのがもっとも困るパターンである。

追記
 トイレからストレッチャーで運んでくださった角田さんと話す。彼女は移植手術の際、ICUから一般病棟へ運んでくださった看護師でもある。長く看護師をしているが、あんなにひどい下血ははじめての経験だと。あそこまでではないにせよ、通常下血すると一種の錯乱状態もしくは認知症のようになって点滴の管などを抜くケースが多いとか。あなたは暴れるから縛り付けたと云っていたが、あれは暴力的な行為ではなく、いつもの痙攣である、と云っても分かって貰えそうにないが。
 日曜日ゆえ、当直の看護師は3名、霜凍さんと北海道北見の松平さんに感謝。移植手術の折、松平さんには重なる迷惑をお掛けしている。わたしは将軍家の姫と渾名している。


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2013年03月20日 03:00に投稿された記事のページです。

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