サイトメガロウィルスでもっとも恐れているのは腸炎でなく肺炎(間質性肺炎)である。こちらの死亡率は七割を超える。従って予防接種を打っているが、それがまったく当てにならない。それほどに、サイトメガロウィルスは掴み所のない黴菌(かびきん)である。
臓器移植のような免疫を落とす治療を行っている場合、すでに体内に潜んでいたサイトメガロウイルスが暴れることがあり、これを「再燃」と呼ぶ。わたしのサイトメガロウイルスは再燃であって、他人から移されたところのものではない。元々自分のなかにあった菌で、免疫の低下によって活性化したのである。
サイトメガロウイルスの遺伝子に目標とする微生物の遺伝子を載せ、その上に免疫回避機構をなくしたウイルスを作れば、安全性の高いワクチンになるかもしれない。しかしこれはまだ理論段階であって、有効なサイトメガロウイルス用のワクチンは現在のところまだ作られていない。