日本はアメリカと違って国民皆保険である。しかしながら、これは形式的な問題であって、アメリカと日本の医療の実態はさして変わるものでない。先日も書いたが、もっとも親しくさせていただいた某作家も最後は保険外治療(アメリカの製薬会社による点滴剤)を拒否して逝った。要するに、保険治療だけではどうにもならないのが実状なのである。
透析治療のことも書いたが、30万人の腎不全患者が月45乃至50万円の治療費を使っているが、その総額は癌患者の高額医療費(保険対応)の5パーセントに満たないと聞く。癌とはかくまで金を喰う病なのだが、その癌(に限らないが)自体、最終的に健康保険で手に負える病気でない。言い換えれば、先進医療はおろか、高度医療の大方は保険適用外なのである。
今回の入院でよく分かったが、健康保険の高額医療費で目一杯落としてなお600万円ほどの実費を必要とする。保険治療と保険外治療の乖離を知った。悪口になるが、日本の健康保険に関する費用は安い、従って治療もそれに相応しい安価なものに限られる。
アメリカでは民間保険だが、この保険にはわが国の保険外治療の多くが含まれる。ただし、1000万とか2000万円の上限が設けられている。他方、わが国は前述したように国民皆保険なので、民間保険に重複して這入るひとは極端に少ない。問題は複雑に絡み合っている。さて、あなたならどちらを選ぶだろうか。もっとも、国民に選択肢はない、外資系の民間保険加入者が急速に増えている、とだけ云っておこうか。要するに医療の世界ではとっくにTPPどっぷりなのである。