拙宅の干物は出自の明白なものばかりである。とは申せ、魚の見場が熱帯・亜熱帯産であろうがコーラルフィッシュであろうが、わたしは委細構わない。気にしないどころか、面白がるに違いない。温暖化によってこれからはそうしたケースが増えてくるからである。そして、わたしが娯しむのは魚の文様と味のコントラストである。
日本人はいつ頃から食する魚の色を赤、黒、銀、灰と決めたのか。それだけを考えても、琉球の文化は日本のそれとはまるで違っていたことが窺い知れる。ベラとブダイのごく一部を除いて、日本人は箸を触れようともしない。モンガラカワハギやフエダイ、あとウツボ類に手を出すのはスキューバダイビングの心得のある人に限られる。
註・1872年(明治5)の琉球藩設置から79年の廃藩、沖縄県設置にいたる明治政府の一連の措置を琉球処分というが、その過程で、形式上日清両属だった琉球王国は滅亡し、日本に併合される。この武力による併合に結論は出ていない。そして異議を申し立てたのは琉球人にとどまらない。清国もまた・・・。