佐々木幹郎さんから電話あり。次回の著書「シングルモルト(仮題)」の相談である。八月の二十日ぐらいには動かれるようになると伝える。同書は真当な日本語で書かれた最初の随想集になる。モルト・ウィスキーに関する著書は数多くあるが、なによりも表現がよろしくない。先行する著書の焼き直しばかりで、オリジナリティーに欠ける。個性に欠けるとはリアリティーに欠けると云うことである。
彼のウィスキーとの距離の取り方には独得の呼吸法がある。例えば、わたしはボウモアをもっとも苦手とするが、そのボウモアが彼にかかると美味くおもえてくるから不思議である。詩人による奇想に充ちた、なによりもわたし自身がもっとも必要とする書物である。