今日、公子さんが一足早く退院した。病院では黙っていたが、彼女の身体もまた大きな痛手を負っている。拙宅で一週間ほど泊まって帰ると云っていたが、それが良いと思った。
ICUを出しな、医師の判断で公子さんがわたしのもとを訪れている。手を指し出して涙含んでいたが、わたしは黙って手を握り返したのみ。動揺をきたすと双方が激痛に見舞われるのが分かっていたからである。
あらかじめ想像したとおり、彼女は埼京線の赤羽根駅で顛倒したようである。女子高校生に援けられたようだが、あとは松戸駅まで六人の駅員が車椅子のリレーを繋ぎ、送り届けてくださったと聞き及んだ。ひとの優しさに感謝す。
先だって、拙宅のすぐ根際で高年の主婦が熱中症で倒れた。またたく間に五、六人の住人が駆けつけ、てきぱきと指示を下していた。新興地だが人情には滅法厚い。触れあう先々で嬉しいことが起きる。(7月19日)