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宝籤   一考   

 

 「見舞い」で書いたお隣さんだが、二人とも糖尿病で血糖値が二百を超えている。それゆえ、日々のインシュリンで大変である。血圧も押し並べて高い。糖尿と云っても、入院するようでは既に末期症状である。透析は時間の問題で、いまさら元に戻る身体でないと思われる。
 クレアチニンは1.0か1.5までなら治りはしないが、進行を停止させることは可能である。そのためには徹底した食事療法が必要だが。2.0を超えるとUターン禁止、腎臓は崩壊へ向けて一直線である。点滴自体は対症療法で、腎臓にとって何の役にも立たない。

 腎不全が大変なのに、大腸の内視鏡検査と云われて「俺は癌で死ぬ」と吹聴している。事ほど左様に癌というのはインパクトがあるようである。糖尿でひとは死なないとでも思っているのかしら。
 ひとりは鼻のかみかたが尋常でない。とんでもなく大きな音を出すのである。これでは耳が悪くなるのは当たり前。注意するひとがなく、そのようなものと思い込んできたか、もしくは親の鼻のかみかたを学習したかのどちらかであろう。いずれにせよ、品のないこと夥しい。
 耳鼻科の女医が補聴器を奨め、指定の業者が来院。音を補強するだけの安物なら十万円も出せばあるが、ちゃんとした補聴器なら三十から五十万円は下らない。本人は「こんなものいるか」と云っているが、ほとんど聞こえていない、どうするつもりかしら。

 他人事なので、わたしは黙することにしている。喧嘩はしたくないからである。わたしは食事を減らしているのに、あちらは量が少なすぎると文句を云っている。揚句、売店から弁当を買ってくる、間食が過ぎるようである。人はここまで覚悟が定まらないものかと呆れている。
 掲示板で何度も触れているように、慢性腎不全に根治療法はなく、あとは死ぬのを待つだけの病である。透析治療との対症療法があるが、これには透析由来の合併症が否応もなく纏わり付いてくる。
 問題はその合併症で、患者はみなさん合併症で死ぬ。死因に腎不全というのはない。死因は心筋梗塞か心不全に決まっている。自殺を試みてすら、わが国では自殺者としてカウントされない、病死扱いである。
 毎年三万人が発症し、うち二万人は一年未満で死ぬ。一万人が人生への居残りを決めるわけだが、そのうちの半数はまた半年ほどで死ぬ。三年を生き延びるのは、千人に満たないとされる。透析技術の発達によって、そこから先の死者は急速に減るが、日々、ロシアンルーレットを転がし続けているようなものである。二十年生きた、三十年生きたとのはなしもあるが、それらは万分の一、十万分の一のはなしである。
 慢性腎不全に罹った患者に宝籤のはなしをしても詮無いことである。宝籤の実体を話すことこそ望まれる。ことの深刻さを弁えずに透析に這入るべきか、それとも強烈な脅しをかけてでも透析導入を遅らせるべきか、自死を防ぐためにもこうした選択は必須だと思うのだが。(1月16日14時)

追記
 大きなお世話かと思ったが、主治医に癌の件を伝えた。去年も大腸の内視鏡検査をしているとのはなしだったので、初期のポリープですねと訊くとそうだと応える。その旨を患者にちゃんと納得させないと駄目ですよ、と伝えたまで。即刻、看護師が説明に走っていた。
 その患者の内視鏡は無事に済んだものの、貧血がひどく、一日置いて胃カメラを飲むことになった。本人は貧血は痔からの出血だと云っているが、それは内視鏡検査によって問題ないことが分かっている。従って、胃からの出血を調べるようだが、わたしが心配しているのは腎機能低下による高血圧、貧血症状である。輸血は予定に這入っているようだが、急いだ方が良いと思われる。
 それにしても、病に対する思い込みは各自それなりに強い。内視鏡は大腸癌を調べるだけではない、憩室から痔に至るまでありとあらゆる炎症や出血の有無を検査をする。看護師は腎性の貧血を匂わせているのだが、患者は聞く耳を持たない。患者にとって、腎臓は病気の因果関係からは遠く外れているかのようである。入院先は内科でなく、循環器科でもなく、腎センターである、そのことを彼はどのように解釈しているのだろうか。
 また、彼は入院に至った自分の身体への恨み辛みをことごとく他人に転嫁する。転嫁されたのは女房である。その喧嘩をわたしは聞きたくないし見たくもない。況や病室は大部屋である。歳をとれば子供に戻るというが、許されない我が儘もある。このようなとき、看護師は見て見ぬ振りをするのだろうが、辛い為事である。


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2012年01月23日 18:00に投稿された記事のページです。

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