わたしが通うクリニック(分院)の二、三、五階は透析室である。四階は入院者用のフロアになっている。透析患者が合併症を起こすと本院へ入院する。それでは四階の用途はといえば、一人で生活が営まれなくなったひとたちのためである。当然、車椅子生活者が大半を占める。なぜなら、透析患者は透析アミロイド症や異所性石灰化によって脚の自由が確実に奪われてゆく。そして入院に至る理由はさまざまである。独身者、身寄りを失くした者、家族に見棄てられた者、連れ添いが介護に疲れての入院もある。
入院患者の実情はともかく、間がよければ透析室へ帰還することもある。本院へ入院した者は合併症が癒ればともかく、帰還する率が少ない。そう云えば、わたしの真ん前のベッドも空いたままになっている。死ぬときぐらいは自宅でとの願いが透析患者には通用しない。死の直前まで透析は続けられる。