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沈粉(じんこ)   一考   

 

 小麦粉は強力粉、中力粉、薄力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉などに別れるが、その内の浮き粉について一言。
 浮き粉は、小麦粉から麩の原料として使われるグルテンを分離した残りの澱粉分のこと。分かり易く書けば、麩(グルテン)を作った後、沈殿した澱粉を精製したもの。
 東京では「沈粉はグルテン粉のこと」とする意見が多いが間違っている。むしろ沈粉は浮き粉とするのが正しい。お好み焼きや明石焼き、和菓子、台湾の大根餅、小ロンポウや蒸し海老餃子の透明な皮などに用いられる。関西の商品名はじん粉だが、関東だと中華の食材店や乾物店で浮き粉の名で売られている。
 最近は関西人が経営するお好み焼き店が東京で増えてきたので、沈粉を使う店も増えた。それとは逆に、大阪のイカ焼きやたこ焼きのように、昔は沈粉を使っていたが、現在はメリケン粉(薄力粉)のみという店が大半になった。
 浮き粉を広辞苑で引くと「小麦粉中の澱粉質を精製したもの。菓子を製し、また紅を凝結させるのに用いる。また、米をこまかく粉状にしたもの」とある。前半は正しいが、後半は沈粉としん粉をごた混ぜにしている。この沈粉としん粉に関しては大辞林も国語大辞典も同じ間違いを犯している。大辞林では「米の粉。また、小麦粉の澱粉を精製したもの。和菓子・糊・医薬品などに用いられる。また、紅を凝結させるのにも用いる」とあり、国語大辞典では「米を粉状にしたもの。和菓子の材料、紅や臙脂(えんじ)を凝結させるのに用いる。また、小麦粉のでんぷんを精製したもの。菓子の材料、かまぼこの増量材、糊の素材として用いる」となっている。国語大辞典は大辞林の語釈を掻っ払っただけで、後半に小麦粉のでんぷんを持ってきたのは誤解を生むだけである。序でながら、関東の和菓子にはしん粉が用いられるが、関西では沈粉の方が多い。
 「 ひがれい」(2007年09月)で書いたが、懐石料理や精進料理で用いる言葉は宮崎、京都、大阪で生れた用語が大方を占める。従って関東人(東北を含む)が編輯した辞書に料理用語はほとんど這入っていない。仮に這入っていても、とんでもない誤解に基づいている。日本古来の食文化に忠実な辞書がそろそろ出てきてもよいのだが。

追記
 ふすま(麩)の語釈でもっとも纏まりがよいのは大辞林、先行する広辞苑の盗作だが、国語大辞典も同様。新しい語釈を書くときはもう少し気を遣っていただきたい。なお、語釈にある洗粉は太平洋戦争前までは最も需要の多い化粧料のひとつ。髪洗粉は洗粉に酸性白土を加えたもの。


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2011年09月28日 14:19に投稿された記事のページです。

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