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叙勲   一考   

 

 わたしは関西出身なのですき焼きといえば牛肉に決まっている。肉といえば牛肉を指し、豚肉は「豚肉」といい、安物の代名詞だった。豚バラが活かされるのはお好み焼の豚玉ぐらいなものである。在日文化のひとつである焼肉は「肉」なので、当然牛肉である。関東のホルモン焼は豚の臓物なので、品種がまったく異なる。昔は牛の臓物は関西へ、豚の臓物は関東へ送られていた。ところが、放射線が理由で牛の値崩れが起こり、同じクラスなら牛肉の方が安くなってしまった。焼肉酒家えびすの問題は論外としても、昨今の牛丼によって牛神話が崩れたのである。
 他方、回転寿司は寿司の権威を崩壊せしめた。元々焼肉同様、車夫馬丁の食い物だったものを一部の料理人が食する順序とか食べ方なるものを拵えて寿司道とした。蕎麦も同様である。
 かような権威主義はどこにでもある。例えば役人が決める叙勲なども気に障ること夥しい。終身年金が支給される文化功労章があって、そのなかから文化勲章受章者が撰ばれる。勲章を授与される場合の服装は、男子は紋付羽織袴、フロックコートまたはモーニングコート、女子は白衿紋付またはローブモンタントである。勲章はとくに和服に似合うようにつくられ、中綬で胸部中央に着用する。製式は、橘の花弁を模様化した章の中央に勾玉を配し、鈕に橘の葉と実を配してある。
 元々、勲章は役人が功績顕著な役人を讃えるためのもので、旭日章、瑞宝章、宝冠章等々がある。叙勲の対象は政治家や自治体の首長、公務員をはじめ、大学教授や経済団体役員などである。勲章以外に賜杯や褒賞(特定分野の民間人を表彰する制度)があるが、それらには原則、年金などの金銭は付加されない。あくまでも名誉賞である。日商会頭や経団連会長のように叙勲まではと居座る例はよく知られているが、役人や財界人はこの種の名誉に滅法弱い。権威権力に弱いのは勝手だが、それは権威権力を欲する気持の裏返しに過ぎない。
 名は伏せるが、わたしの知己で一切の叙勲を拒否しつづけている詩人がいる、一方で勲章を求めて駆けずりまわっている詩人がいる。文学を志す身であれば、名利を求めない姿勢を貫いて辞退するのが当然。どちらが真物の詩人かはいうまでもない。
 文学の苗床は情念である。内に秘めた怒りがなくてなにが文学であろうか。文化勲章であろうが紫綬褒章であろうが、役人に自らの為事を功績と評させるなどあってはならない。デカルトの時代ならいざ知らず、現在では情念は心の盲動でない、身体性をもった具体としての人間そのものを示唆している。


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2011年09月21日 18:16に投稿された記事のページです。

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