移植にはドナーへの多大な迷惑が伴う。感謝だけでは到底収まらない。まず双方の血液検査があって、結果に一箇月かかる。これは抗体の検査らしいが、わたしは大量の輸血を受けているのでかなり煩雑になりそうである。なお、検査は女子医で行われる。ここで適合するとされた場合、次ぎにドナーの健康状態ならびに移植臓器の提供に堪えられるかどうかの検査がある。手術の三箇月前に一週間の検査入院が必要になる。前項で記したように、子宮癌や乳癌などの癌があれば移植は諦めることになる。癌細胞が転位する可能性があるからである。この間に当方は大腸癌ならびにポリープを除去、転移がないかどうかの病理学検査が行われるようである。
レシピアントは手術の一週間前に入院して手術前の検査、血液検査、胸部X線、心電図、心臓超音波検査、肺機能検査、胃の検査、膀胱の検査、目の検査などを受ける。退院は一箇月後。以降、移植後四箇月間の導入期を向かえる。急性拒絶反応、感染症、合併症との闘いである。いずれにせよ、生涯にわたる免疫抑制薬の服用が必要。
移植後の食事制限について聞かされたが、主たるものは塩分制限とカロリー制限である。こちらは問題なし。わたしには元々好き嫌いがなにもない。これは文学についても同じことが云える。みなさん良く好悪を口にされるが、それは読んだ範疇でのこと。喋れば喋るほどに趣味の悪さを露呈する。第一に好き嫌いがあれば編輯者は務まらない。同様に好き嫌いがあれば料理人は務まらない。あるのは面倒か否かだけである。もっとも、その面倒が料理なのだが。