血液検査は無事にクリア、栄養士は挨拶だけで、わたしの前を素通りである。看護師は「何時ものことだけど、どうやってリンと血糖値を減らしたの」答えが出てくるような種類の質問でない。「極力摂取しなかっただけです」としか応えようがない。そのことよりも、最近は除水を一リットルで統一するように心掛けている。一リットルとは八百グラムの体重増である。こちらはいささか高踏技術を要する。透析日の早朝、パンをあと一切れもしくはスクランブルエッグを一箇分、そうでなければ紅茶を半杯と、実に細かい計算が必要になる。
穿刺するひとは毎日替わるが、記録は残されている。松戸のパン屋を教えて下さったベテラン看護師は気付いている。「八百グラムって意識しているんでしょ、遊んでるのよね」。遊びがなきゃあ、透析なんぞやってられませんよ。
何をどのように食べればリンが減るかは実はわたしにも良く分からない。ただ、透析をはじめてからの八箇月で得た経験則がある。それほどに意識して食事を摂っている。日々、体重計と頸っ引きなのである。かつては酒と首っ引きの人生だった。今は体重計がわたしの生き甲斐とでも称すべきか。
今日は僅かにカルシウムが減っている。前述の看護師は馴れたもので、「最近、ビタミンD剤を飲んでないでしょ」「次回の血液検査で戻しますから大丈夫」。低カルシウム血症も困るが高カルシウム血症はさらに困る。指の関節に軽い痺れが出ていたので、ちょいとカルシウムを控えたまで。いま話題の茨城の小女子でも食してカルシウムを摂りましょうか。