靭帯剥離骨折と憩室からの大量下血だが、それらは腎不全のなせる業である。腎不全発症によって骨粗鬆症になったのが骨折の引き金となり、尿毒素によって出血性になった身体から下血したのである。憩室の手術の際、痔も共に手術しなければと云われ、この大変なときにどうして痔の手術をと思ったのだが、出血の可能性のあるところはすべて修復した方が良いとの主治医の命に従った。考えてみれば懸命な処置で、感謝しなければならないのだが、当時は前後の脈絡が分からず、狼狽えるばかりだった。透析をはじめてからさまざまな事柄が一直線に結びついてくる。
それにしても凄まじい病院だった。入院は僅か二日。サンドイッチ、キャラメルなど食べ物は取上げられ、いきなり下剤を飲まされ点滴がはじめられた。二日目に手術が続き、その日は一日中痛みに堪えかねて唸っていた。痛み止めなどなにも効かない。そして術後、血が滴っているにもかかわらず、また痛みの渦中にあって退院だと云う。案の定、駐車場で失神してしまったが、あれが医術なのだと感心させられた。世の中には面白い医師が居ると驚くと同時にこころを動かされた。主治医の紹介でいろんなタイプの医師と出会う、感謝の他なにもなし。
腎不全とは結果的に血液そのものが病に罹ることだが、近い将来IPS細胞が実用化されれば簡便に治療できる病になる。おそらく五、六十年後と思われる。