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大腸憩室症   一考   

 

 ひとの血液量は体重のおよそ十三分の一(男性で約8パーセント、女性で約7パーセント)。従って、体重70キロの場合は5.4キロ、60キロの場合は4.6キロとなる。失血による致死量は半分とされているが、静脈では全体の血液の半分が出血しても処置がよければ生命は助かり、動脈では四分の一で生命の危険にさらされる。
 わたしの憩室からの出血は2リットル強、通常なら失血死に至っている。死なないまでも、意識は朦朧となるはずだった。医師は即刻の入院を命じたが、わたしは車で赤坂を往復。通いの医師なのでなんとかなったが、そうでなければ束縛されていたかもしれない。21単位の輸血によってヘモグロビンは10にまで回復したが、主治医によると交通事故のように一挙に出血した場合は死んでいたらしい。
 入院後の意識ははっきりしているが身体がいうことをきかない。粗相を繰り返したのもはじめての経験だった。御下の面倒が自分で看られないのは最大の苦痛であり屈辱である。済まないと陳謝しつつ汚れたシーツの処理を看護師に頼むのだが、人権を剥奪されたような心持ちだった。身体だけがまるで他人のそれで、老年を逸早く体験させられたと思っている。認知症をはじめ、ひとは歳行けばみな同じになる、まさか自分がと思っていても例外はない。ひとは一人では生きてゆけないと思い知らされた。
 まず思い浮かべたのは私自身が拒否し続けてきた家族である。非常時にならないと思いが及ばないところのものに、わたしも気付かされた。ところが、気付いたときには既に親はいない。家族との概念は晩年のわたしにとって大きな問題として立ちはだかる。
 それにしても、靭帯剥離骨折に末期腎不全、あのような火急の折にどうして大量失血が続いたのか、ただただ不条理を噛み締めるのみ。

追記
 従来、欧米では左側大腸(S状結腸)に好発するのに対し、日本では右側結腸が多いとされる。わたしの場合はまず左側に発生、今では左右一面にに拡がり、立派な大腸憩室症となった。大腸のポリープと共にわたしが抱える爆弾である。


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2011年02月08日 21:09に投稿された記事のページです。

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