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世界観   一考   

 

 何事によらず考えるに際して、自己と他者、精神と肉体、光と闇、善と悪というように二元的に捉えたがる。なにかしらその方が上等な思考回路のように思われるからであろう。しかし、人はひとつの有機体として一元的に考えるのが自然である。病気になって分かったことと云えば、人間は肉体の各部位が互いに緊密な関わりを持つひとつの統一体であって、単なる部分ないしは要素の寄せ集めでないということ。
 クリニックでは糖尿病から透析に這入った方が多いが、固形物を摂取している状況にあっては好き嫌いが生じるのはやむを得ない。近い将来、食品に対するイメージが大きく変わるに違いないが、その時は糖尿病から透析に這入るというのは昔語りになる。世界観とはおかしなもので、折々の時代、状況から一歩も出られるものでない。
 人工多能性幹細胞(IPS細胞)はまだ細胞レベルの基礎研究であり、実際に移植した際の機能や組織補完能力については良く分かっていないのが現状である。いずれにせよ、IPS細胞が実用化されれば、また新たな世界観が表れると思う。
 わたしが子供の頃、巷には傷痍軍人が濫れていた。片目をを損った父もそうだったが、往時の大人の半数近くはなんらかの障害者だった。わたしが六十歳を出て、手脚のない人は減り、別な意味での障害者が増えた。往時、IPS細胞の実用化がなされておれば、傷痍軍人のイメージも、さらには戦争のイメージもまるで異なったものになっていたに違いない。考えるだに怖ろしくなるが。
 わたしが屡々ひとは時代の子と云うのは、そのような事情による。さて、二元的な考え方だが、花田清輝、石川淳、安部公房、吉本隆明、埴谷雄高、林達夫等々、枚挙に遑がない。そしてそれらは時代の要請であり、時代の必然だったと思う。ひとは過去のなかを彷徨うが、未来を生きることはできない。余談だが、わたしがSFを認めない理由はそこら辺りにある。
 認めないとは云っても、IPS細胞は拒絶反応のない移植用組織や臓器の作製が可能になる。男性から卵子、女性から精子を作るのも可能となり、同性愛者同士による子の誕生も可能になる。世界観と緊密な関わりを持つ倫理観も大きく変化するに違いない。そうしたことは想像するだに楽しい。思うに、夢とは倫理の崩壊が端緒でなかったかと。
 遠い将来、ひとの身体同様、社会、国家、民族、宗教、そうしたものが、全体は要素(あるいは個人)の単なる総和には還元できない独自の存在であるとする考え方が証明されるに違いない。独自の存在であればこそ、闘いは虚しい。なぜなら、違いを違いとして認知するところにしか独自性はない。善悪といった二元的証明は必要でなくなる。(この項に関してはいずれ言葉を補足します)


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2011年02月07日 23:18に投稿された記事のページです。

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