レイアウトが崩れる方・右メニューが表示されない方: >>シンプル・レイアウトへ

« 穿刺 | メイン | 寒鰤 »

留置針   一考   

 

 通常、血流は動脈にあっては身体の端々へ流れ、静脈は心臓へ向かって流れる。ところで内シャントによって静脈を動脈に改造した血管の流れは当然心臓を向いている。要するに透析の際に用いる血管は動脈でありながら心臓へ流れ込む。これが心臓に負担をかける理由である。
 二本穿刺する血管内留置針、すなわち血液を抜き出す側と戻す側は血流に沿って互い違いに刺される。ただし、取血側は血量が十分に取られれば逆でも差し障りはないし、戻す側は静脈であれば全身どこでも構わない。
 穿刺は心臓から離れるほど痛みが増すと云われる。肩より腕、腕より指先の方が痛い。臂の内側のような関節部も痛みは少ないが、血管内留置針は長さが三十ミリほどあって、平坦な部位でないと血量が確保できない。ちなみに血管内留置針は、少々の動きで抜けたり血液が滲んだりしないように、柔軟性があって生体適合性の良い材料で造られている。
 静脈は細く表皮を匍うように流れ、動脈は太く体内深く隠されている。斬り方にもよるが、動脈を截断すれば二、三分で死ぬ、静脈は止血すれば滅多なことで死ぬものでない。リストカットは手首を切る自傷行為だが、切っているのは静脈であって動脈ではない。手首の動脈は十ミリほど深いところにあり、手首を切り落とす覚悟で刳らなければ死ぬのはかなわない。もっとも死んでしまえば自傷行為を通り越し、自殺行為になる。
 今まで透析には穿刺する二箇所共に、動脈に改造した血管を用いてきた。太く発達しているので穿刺しやすいからである。しかし、同じところを使っていると血管が早く傷つく。痛んだ箇所は荒廃し、血管が団子のように膨らむ理由のひとつになる。ゴム製の管を想像していただければ分かるが、いつしか弾性を失って止血が効かなくなる。
 注射針が太いので穿刺の傷跡が消えるのに五、六日はかかる(糖尿病の場合は血管が脆くなっているのでさらに日数がかかる)。動脈側はできるだけ真っ直ぐなところを撰んで使うしかないが、静脈側は幅広く穿刺する方が個々の血管の痛みが少なくて済む。そこで穿刺箇所を他の静脈に変え、血液を戻していた箇所も取血に使おうと思ったのである。そして針を反対側から刺せば、穿刺箇所はさらに拡がる。
 前回「針を反対方向から刺してもらった」と書いた理由である。


←次の記事
「寒鰤」 
前の記事→
 「穿刺」

ですぺら掲示板2.0トップページへ戻る

このページについて...

2011年01月09日 23:21に投稿された記事のページです。

次の記事←
寒鰤

前の記事→
穿刺

他にも
  • メインページ
  • アーカイブページ

  • も見てください。

    アーカイブ

    ケータイで見るなら...


    Google
    別ウィンドウ(orタブ)開きます。

    牛込櫻会館(掲示板1.0他)内
    ですぺらHP(掲示板2.0他)内
    Powered by
    Movable Type 3.34