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珈琲   一考   

 

 以前、山本六三さんについて書いていて、神戸の上島珈琲に触れた。当時の喫茶店はドリップ、サイフォン、パーコレーター、コーヒープレス、エスプレッソ等々、一軒の店で幾通りもの珈琲を飲ませる店があった。なかにはコンコードのようにパーコレーター専門の店から一杯一万円という会員制にしむらのウィンナコーヒー専門店まであった。パーコレーターで立てた珈琲は酸味が強いのであまり好みでなかったが、コンコードのトイレは洋式、1962・3年頃のはなしだから店舗としては神戸初でなかったかと思う。その証拠に客の大半は洋式トイレの使い方を知らず、馬蹄の上にしばしば足跡が残されていた。
 その頃、わたしは珈琲に凝っていてコーヒーミルを各種取り揃え、焙煎は上島珈琲にお願いしていた。コピ・ルアクを教わったのもその頃である。コピ・ルアクはわたしに云わせれば成金趣味の珈琲で、下賎な焙煎の濃い珈琲に凝っていた。コピ・ルアクは独得の香りを楽しむために浅煎りで頂戴する、その浅煎りが気に入らなかったのである。ダージリン・ウバやキームンなどの超高級ゴールデンティップスの淡い香りよりも、強烈な香りに惹かれる、若さゆえの特権にわたしも浸っていたのである。ミルクティーやミルクコーヒーなどは好事家の嗜むものとして却けていた、今思うに勿体ないはなしである。
 これはウィスキーについても云える。飲み始めはアイラモルトのような個性的なウィスキーに惹かれるが、やがてより複雑な香味を求めるようになる。ただ、十五、六歳の頃にコピ・ルアクを味わう機会を与えてくださった上島珈琲には感謝している。あの経験がなければ、後日日本酒の利き酒はできなかったと思う。ウィスキーの味見としてわたしはグラスに一ミリしか飲まないが、一ミリで香味の違いが分かるようになったのもコピ・ルアクのお陰と思っている。


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2010年11月17日 23:27に投稿された記事のページです。

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