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番屋   一考   

 

 流石に音をあげたくなってきた。思いを超えて病が進行しているようである。駐車場までの一キロが歩かれない距離になりつつある。このところ、コルセットを常時離せなくなった、それでもなお、うんうん唸りながら歩いている。今日は雨だったが、何時も歩く清水谷公園側の道は遠慮する。雨宿りするところがないからである。
 愈済なすべきことを片付けなければならない。来月念願の北海道旅行を計画している。間違いなく最後の旅行になる。危険な旅行になるのは分かっている。しかし、積丹をもう一度見たいと去年の七月から思い続けている。今回は走り回ることはできない、渡島半島と積丹半島だけでもよい、北海道の南端だけで結構。一穂が遊び耄けた番屋がもう一度見たい、そして紺青の海を。
 友に話したところ、付き添いなしで行くのはあまりに無謀だと云われた。しかし回りに免許を持った人はいない、そして病弱である。よって予定の立てようがない。体調と相談しながら一人で走るしかないと思う。その友は北海道で死ぬ気かと訊う。明日のことは分からないが、死地が北海道なら願うところ。覚悟は常にしておけ、決して狼狽えるなと、これは父の口癖だった。


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2010年06月05日 04:19に投稿された記事のページです。

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