引越先には魚屋があって、その魚屋が近隣のスーパーへ出店している。東京で刺し身を食するのは諦めていたのだが、ここ三郷の南端では恵まれたことに、毎日千葉方面からの魚が潤沢に踊っている。一昨日はとびうおと鰺、昨日はいさぎ、今日は小振りだがすずきとチヌを買ってきた。西明石と同じく活かっている、しかもほとんどの刺身が三百円から五百円の間で売られている。こりこりしたチヌを食べるのは久しぶり。よいところへ引越したものとほくそ笑んでいる。
全自動の風呂に這入った。窓のがないのにいささかの抵抗はあったが、這入ってみるとすこぶる具合がよい。体温で湯温が下がるとたちどころに燃焼マークが出て設定温度に戻る。湯量はもちろん、なにくれとなく女の声で状況がアナウンスされる。入浴が女人ならば男の声で説明されるのだろうか。ひょっとすれば風呂が好きになりそう。
長らく鏡を見ていなかったが、わが肉体衰えたり、これでは女が逃げ出すのも然もありなんと納得する。新居は旧居にもまして駅から遠い、女人の訪なう心配はまったくない。