同室の患者が大腸癌であまりに下血がひどく、総合病院へ緊急搬送されていた。その担当看護師がわたしのところへやって来て、「あなたも本当は総合病院行きなのよ、それを嫌がるから看てるけど、絶対安静面会謝絶なんですよ」と叱りつける。この日、わたしは愛子さんたちと遅くまでラウンジで喋り続けていた。それよりなにより、わたしが川久保病院を気に入った理由はベッドである。いろんな病院へ入院してきたが、病人にとってはベッドがすべてである。寝癖のついたベッドだけは願い下げである。他人のひとがたにわが身を合わせて寝ることほど嫌なことはない。
今朝の血圧は150-85、脈搏は70から66にまで下がっている。わたしの標準値は110-75、脈搏は60-58ぐらいである。ちなみに、テレビの音量レベルを5ポイント落としても聞こえている。要は、心音が聞こえなくなった、急速に元に戻りつつあるということ。
全身のさまざまな感覚が急速に戻ってゆくと書いたが、左掌の感覚だけがまだ戻らない。小指と薬指が痺れたままで、感覚が戻らない。グラスを握るのにまた洗うのに必要である。今まで十数度に及ぶ手脚の骨折や腰痛でリハビリを受けたことがない。水を張ったバケツもしくはコンクリートブロックに棒切れを通したものなどを用いて我流でリハビリをしてきた。それが遠因ではあるまいと思うが、一刻も速く癒ってほしい。グラスが掴めるようになれば店が再開できるのだが。