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ですぺらモルト会解説(タリスカー)   一考   

 

 スコットランドは小さな国で、人口は約500万人。車で南北を縦断しても6時間、東西なら2時間掛からない。タリスカー蒸留所はスコットランドの西端、アイランズ最大の島スカイ島にある。気候は本島と異なり海洋性で、湿度が高く、激しい風が吹く。
 冷却工程に近代的なコンデンサーでなく、伝統的なワームタブを使うのがタリスカーの特徴のひとつ。冷却水が入れられた大きな桶の中をパイプが螺旋に走り、蒸留されたニュースピリッツは液化される。コンデンサーと比してワームタブは銅管が短く、銅に触れる時間が短くなる。ウイスキーはよりヘヴィーに、香味は強く残される。
 蒸留所のキャラクターを大事にしようとの姿勢は熟成にも表れている。熟成にはシェリー樽とバーボン樽が用いられるが、カスクの影響を避けるため共にリフィルカスクを使う。樽の役目の「除去すること」と「加える」こととのバランスに常に留意している。

 創業は1830年。スコットランド中で採用されていた伝統的な三回蒸留法が二回蒸留になったのは1928年頃だが、蒸留法の変更がウィスキーに影響を与えなかったとされる。1941年、大麦を食糧として確保するため、戦時下のウィスキー製造が中断される。1960年、火事により蒸留棟が損壊。焼失した五基の蒸留器は厳密に復元され、石炭窯を用いた、元来の外部加熱方式を引き続き採用する。1972年、フロアモルティングを廃止。以降、グレンオード・モルティング工場から麦芽の供給を受ける。ピートレベルは中程度、スモーキーだがアイラモルトほど重くはない。二基のウォッシュスチルと三基のスピリッツスチルの加熱システムは、重油ボイラーを用いた蒸気加熱システムに変更。1989年、通常より高いアルコール度数45.8%でボトリング。この年、タリスカー10年がクラシック・モルト・シリーズのひとつに選ばる。それまでは8年ものをシングルモルトとして販売していた。


01 タリスカー10年(ユナイテッド・ディスティラーズ)※
 クラシック・モルト・シリーズの一本、45.8度のディスティラリー・ボトル。
 スモーキーな潮の香、頭頂に抜けるシャープな辛口。舌の上で火花が弾けるパワフルな後口、妥協を許さない個性。
 ディスティラリー・ボトルは2003年8月からラベルが新しくなったが香味に異同はない。アモロソ・シェリー樽を用いたダブル・マチュアードと10年(フレンド・オブ・クラシック)、15年、18年、20年(蒸留所限定ボトル)、25年(蒸留所限定ボトル)、28年のカスク・ストレングス等々が頒されている。

02 タリスカー '88(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。11年もの、50.0度のプリファード・ストレングス。限定374本のシングル・カスク。

03 アイランド10年(シールダイグ)
 ウィリアム・マックスウェル社のリリースになるタリスカー。43度。
 シールダイグとは西ハイランドにある風光明媚な漁村。アルマニャックのボトルを用い、ギフト用として仏蘭西国内で販売されている。
 ディスティラリー・ボトルと比して、アルコール度数が低い。その分、香りがいささか弱いのは否めないが、シャープで飲みやすいのが利点。

04 タリスカー '90(ハート・ブラザーズ)
 12年もの、46度。
 ラベルにはご丁寧に二箇所にカスク・ストレングスと印字されているが、これはなにかの間違い。甘味が強く、やさしく美味なタリスカー。

05 アズ・ウィ・ゲット・イット8年(イアン・マクロード)
 オーク・カスクの8年もの、59.0度のカスク・ストレングス。中味はタリスカー。
 アズ・ウィ・ゲット・イットの商標をイアン・マクロード社が買収、当初はスペイサイドのモルトをボトリングしていたが、最近はアイラ・モルト、それもラガヴーリンを専門にボトリングしている。
 タリスカーには珍しく微かにミントの香り。

06 マクローズ'89(ハンジアティシィ)
 04年のボトリング。バーボン・カスクの14年もの、46度。384本のリミテッド・エディション。中味はタリスカー。
 ハンジアティシィはイアン・マクロードの独向け。他に85年蒸留の18年もの348本、86年蒸留の17年もの264本あり。素顔のタリスカーを識るに最適。スコマ社のタリスカー同様、胡椒と荒塩の強烈な味わい。ラスト・ノートに烟るが如き甘味。

07 タリスカー・アモロソ '91(ユナイテッド・ディスティラーズ)※
 ザ・ディスティラーズ・エディションの一本。 45.8度。
 U.D社のクラシック・モルト・シリーズのダブル・マチュアード版。本品はアメリカンオークの樽で熟成後、フィニッシュにアモロソ・カスクを用う。

08 ヘブリディーズ '83(キングスバリー)
 02年のボトリング、18年もの。ホグスヘッドの46度、300本のリミテッド・エディション。中味はタリスカー。
 フィニッシュに独得の甘味。

09 タリスカー175周年記念※
 45.8度のディスティラリー・ボトル。
 タリスカー蒸留所は以前スカイ島の北部に位置していましたが、1830、31年に現在の位置へ移動。そこからの175年を記念したオフィシャルボトル。わが国へは600本が入荷。

10 タクティカル '79(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。21年もの、50度のプリファード・ストレングス。312本のリミテッド・エディション。中味はタリスカー。
 オールド・モルト・カスクはタリスカーのような刺激が強いモルトも優しく仕上げる。本品も例外ではなく、ずいぶんと熟れたタリスカーである。

11 タリスカー '92(ジャン・ボワイエ)
 07年のボトリング、15年もの。ワンショット・コレクションの一本、58.7度のカスク・ストレングス。
 ジャン・ボワイエ社はフランスのみならずヨーロッパでも最大級のボトラー。設立は1993年だが、1975年にスコットランドからの輸入をはじめ、1985年にはフランス国内屈指の輸入卸業者に成長、スプリングバンクやボウモアなどの正規代理店になる。現在では数種類のレンジ(ラベル)で総計50種類以上に及ぶ多彩なモルトの品揃えを誇る。同じヴィンテージで14年もの加水タイプあり。

12 タリスカー '81(ユナイテッド・ディスティラーズ)】※
 シェリー・カスクの20年もの、62.0度のカスク・ストレングス。9000本のリミテッド・エディション。ボトリングは2002年末。
 2001年には75年蒸留の25年もの、59.9度のボトルが6000本頒されている。また、1999年には89年蒸留の10年もの、59.3度のカスク・ストレングスがフレンド・オブ・クラシックの一本としてボトリングされている。一連のシリーズのなかでは本品がもっとも美味いが、ちょいと美味すぎて気になる。


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2009年04月25日 19:15に投稿された記事のページです。

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