運転免許証の更新へ行く。普通車と大型車とのあいだに中型車との区分が設けられ、該当車種は車両総重量5トン以上11トン未満となる。平成19年6月2日に施行されたが、それ以前に普通免許を取得した者は車両総重量8トンまでの限定ながら中型免許が与えられる。車両総重量8トンとは最大積載量5トンを指す。要は名称が換わるだけで乗られる車種は以前と変わらない。
そこまではよいとして、私は大型免許を取得済みである。従って免許証に「中型車は8tに限る」との条件は不要である。その旨を伝えたが、記載する決まりになっていますのでと断わられた。お役所仕事の典型かと思われる。
更新へ行くときは朝から目薬を指して目の体操を試みる、目玉をぐるぐる回したり棒切れの先を凝視つつ前後させる。いつものことなのだが心構えとしかるべき準備が必要なのである。ところが、その日に限って目薬が見当たらない。やむを得ず、惚けた目を引っさげて更新に及んだ。視力検査は丸の隙きの開いた方を上下左右と指示するのだが、丸がふたつに見える。いくら目を凝らしたところでやはり丸はふたつである。そこで上の丸は下が開いていますと応える。次のはどうですかと問われたが、丸はやはりふたつ見える。上の丸は右で下の丸は左が開いていますと応じる。担当の婦人警官が「さっきからひとつしか写っていないのですが」と困惑の声。ふざけなさんなとの叱責にも聞こえる。すると視界が明るくなって両眼で見られるようになった。要するに右単眼の検査は端折られたのである。両目で見ると、なるほど丸はひとつである。さらに小さな丸が写し出されたが、私にはなにも見えない。結局、一番大きな丸が両眼視で識別できただけである。
深視力検査は三度繰り返されるが、三度目に件の婦人警官がひとこと。「三度目は誤差が五ミリだったので合格にしときます」このようなお役所仕事なら大歓迎である。十年以上前のはなしだが、西明石では受かるまで検査が繰り返された。とりあえず更新は終了し、久しぶりのゴールド免許を手にしたものの、次回の視力検査はどうなるものやら。