当店にはM編輯長が二名いらっしゃる。編輯子も入れれば四名になる。同様に佐々木さんは三人、鈴木さんは二人いらっしゃる。2008年06月の「口籠りてはきとは聞こえず」はその鈴木さんについて書いたのだが、佐々木さんから出版社を営む鈴木さんと間違えられた。であるからして、一方の佐々木さんは幹郎さん、「口籠りてはきとは聞こえず」の鈴木さんはケンちゃんと呼ぶことにする。ケンちゃんといっても洗濯屋のそれではない、東大出の土木工学のケンちゃんである。客商売を営んでいてケンちゃんもなかろうと思うのだが、そんなことで怒るケンちゃんではない。しかし、いささかの遠慮があるのでケンさんにしよう。
一昨夜はクリスマス・イヴ、そんな日に店が坊主ではあまりに情けない。落ちこんでいたときにケンさんが女性を伴って来店。お客さんはそれだけだったが、おかげでゆっくりと話ができた。ケンさんは店があまりに暇なのに仰天、昨夜ふたたび来られた。なんでもご子息がバーテンに憬れているとか、しかるべき学校を紹介したのだが、学費が百三十万円と聞いて呆れ返った。運転免許を取得するのに学校が必要かと問われれば必要ないと答える、バーテンになるのに学校はさらに必要ない。その種の学校を私はニッチ産業の一形態と思っている。
バーテン修行でもっとも困るのが調理である。オードブルから軽食そしてデザートぐらいはこなせなければならない。どのように考えても、調理師からソムリエそしてバーテンの世界は一直線に結びついている。どこからはじめるかは勝手だが、やはり難儀なものからはじめるのが順当ではないだろうか、とすれば調理師である。ヒロユキさんの就職について掲示板で書いてきた。ご当人にその覚悟があるのだろうか。