クレイゲラヒのフィニッシュについて「心地よい余韻が長く続く」と書いた。これは蒸留所の説明をそのまま写したまでで、飲んだ結果気付かされたことがあった。
クレイゲラヒのフィニッシュはオスロスクのそれに似て、心地よいのだが幾分ショートである。同じようなフィニッシュにダフタウンがある。「ふっと消え入るような風情」と寡多録に書いているが、そっくりそのままクレイゲラヒにも通用する。
例外はレアモルトのクレイゲラヒで、「クリーミー」は「アイリッシュクリームの味わい」へ、「アップル、ライチ、フレッシュな洋梨」は「オレンジとナッツの風味」へと変化する。そして「最良の食後酒のひとつ」に相応しく、長く濃密なフィニッシュを有する。このフィニッシュは同じユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズにもみられないものである。
何度も書いていることだが、花と動物シリーズは元々ディスティラリー・ボトルを持たない蒸留所のビジターセンター及び近隣での販売用に九十年代に入ってからボトリングされた。それが理由で、蒸留所周辺に棲息する動物や植物の絵柄をラベルにあしらい、土産品としての付加価値を高めた。全部で二十七種類(詳細はホームページのオーナーズ・ボトル一覧を参照)が頒され、蒸留所の売店で売られたところからディスティラリー・ボトルと思い込んでいる人も多い。しかし、オーナーズ・ボトルではあってもディスティラリー・ボトルではない。私は単純にボトラーズ・ボトルの一種と解釈している。
それにしても、レアモルト・セレクションは旨い、あまりにも旨過ぎるのである。ダグラス・レイン社はじめ多くのボトラーへ樽の供給をしていたぐらいだから手持ちの駒は潤沢である。樽の選定からして並のボトラーとは違う。レアモルト・セレクション三十一種類はことごとくがシェリー樽を熟成に用いている。伝統的な熟成法に則った最後のシリーズでなかったかと今にして思う。現行のシグナトリー社のカスクストレングス・コレクション四十四種類(他に未確認有り)と比してもその完成度は水際立っている。
前述のクレイゲラヒにしても、あれがクレイゲラヒだと私は思っていない。ユナイテッド・ディスティラーズ社のレアモルト・セレクションを飲んでいるのである。かかるボトルをボトラーズ・ボトルといわずに何とする。