サマローリやムーン・インポートなど著名なボトラーのボトルは少々古いものでも手に入る。他方、いくら探しても入手が難しいボトルもある。例えば、クレッグホーン・ディスティラリーなどがそれに相応しようか。
クレッグホーン・ディスティラリーはリバプールの元ワイン商。クレッグホーン・ヴァントナーズ社と同資本のカンパニーで、ラナークに本拠地を置き、リバプールに熟成庫を持つ。白ラベルの時代を想わせる透明の角瓶を用い、カスク・ストレングスを専門とする。このオールドボトルを連想させる角瓶を現在用いているのはキングスバリーの関連会社アベイヒルぐらいなものだろう。概してコンディションはよいが、酒名から蒸留所を判断するのはきわめて困難である。例えば、アバフェルディをグレン・クェッチ'、タムドゥーをオーキンドゥー、グレンロセスをブルイマレイ、ダルユーインをベルチャロン、プルトニーをワリゴー、ミルトンダフをプラスカーデンと名付ける。この中でなんとか連想できそうなのはブルイマレイぐらいであろうか。
スコッチ・ モルト・ウイスキー・ソサエティのボトルにみられるヒントやエイコーンが扱う水源地シリーズなどは判りやすい。ラフロイグがキルブライト、ボウモアがザ・リヴァー・ラーガンあたりはさしずめ初級篇である。また、ダグラス・レインのクレディタブルがクラガンモア、グリーミングがグレンキンチー、タクティカルがタリスカー、ローダブルがラフロイグも消息通ならすぐ判る。ところが、クレッグホーンのボトルはひとつひとつ味見するしか手立てはない。
クレッグホーンを取上げるのは、ここのボトルが蒸留所の素顔に近い香味を持っているからである。例えば、オーキンドゥーは色濃いタムドゥーの中にあって珍しいプレーン・タイプであり、グレン・クェッチはディスティラリー・ボトルと比してよりクリーミーにしてリッチなフレーバーを持つ。ベルチャロンは蕃椒の辛さが著しく、ワリゴーはかつてスリーリバーズが扱ったビーン・ア・チェオと似て、結構な甘口。こちらが本来のプルトニーの香味ではないかと私は思っている。
スコッチ・モルト・セールスが扱っていたような記憶もあるが、私が知っているインポーターは武蔵府中酒類販売有限会社で、上記六種類だった。欠点はと云えば、売り出しのときの値が少々高かったことであろうか。94年から95年の販売だったが、当時税抜きで八千四百円から一万円のあいだだったと記憶する。田中屋の栗林さんと高いですねえと喋ったのを思い出す。しかし、その値も今となっては安い。どことは書かないが、某所に在庫があると聞く。当掲示板をご覧の方はしかるべき「某所」へお出掛けあれ。
追記
ですぺらホームページではクレゴーン・ディスティラリーと表記しているので訂正する。スペルはCleghorn Distillers。ちなみに検索では孫引き以外に出てこないボトラーである。