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文春の取材   一考   

 

 四誌の取材がすべて終わった。いささかの反応があろうかと期待している。君島佐和子さんのために、お薦めのウィスキーの解説を新たにした。過去の書き込みと重複するが、掲示板は流し読みされるもの、何度繰り返しても構わないだろうと思う。

 カリラ '95(ユナイテッド・ディスティラーズ)
 ザ・ディスティラーズ・エディションの一本。モスカテル・シェリー・フィニッシュの12年もの、43度。
 販売は07年から。ミディアム・ボディながら、カリラ特有のかがり火のようなスモーキーさが重量感を持つ。モスカテル・シェリー樽(マスカッット)の爽快な甘味の痕跡は抑えられ、全体に辛口に振られている。ピート、薬草、熟したフルーツの香りを伴う。シナモンを思わせるスパイシーなフィニッシュ。バランスの良さはディアジオ社のお家芸だが、それにしてもモスカテルとは考えたものである。その着想に脱帽。

 アイラ・ストーム・カスクストレングス(ヴィンテージ・モルト)
 58.0度のカスク・ストレングス。蒸留所未公開のアイラモルト、中味は10年ものと思われる。
 ジェームズ&ソンズと記されているが、ヴィンテージ・モルト社の樽をウィスク・イーが販売。ヴィンテージ・モルト社は1992年、ブライアン・クルックによってグラスゴーのバーズデンで創業。ヴァテッド・モルトの「フィンラガン」をボトリング。シングル・モルトはクーパーズ・チョイスの名でボトリングしている。イアン・マクロード社同様、ラガヴーリンを多く所有。スコッチ・モルト・セールスへも卸している。
 微かな甘味を伴うフィニッシュはハイランズ&アイランズ・スコッチ・ウィスキー・カンパニーのアイリーク同様、ラガヴーリンのそれに間違いない。久しぶりの巧緻な味わいのラガヴーリンである。

 クラガンモア・カスクストレングス '93(DB)
 ボデガ・ユーロピアン・オークの10年もの、60.1度のカスク・ストレングスにしてディスティラリー・ボトル。15000本のリミテッド・エディション。
 熟成年とアルコール度数を感じさせない柔らかさを持つ。コーヒーやビターチョコレート、グレインや皮、マディラ酒などの香り。加水すると、スモーキーさからウッディな芳香へ、さらにナッツ系の香りへと変化してゆく。ハーブやスパイス(月桂樹・胡椒の実・ナツメグなど)のキャラクターを内包。さまざまな暗示があり、名状し難い複雑な味わいを呈している。

 クラガンモア・カスクストレングス '88(DB)
 リフィール・アメリカンオーク・ホグスヘッドの17年もの、55.5度のディスティラリー・ボトル。5970本のリミテッド・エディション。
 10年ものより、色は淡く、香味は確実に複雑。スティルの独特な形状により、蒸気中の不純物がローワインに戻され再凝縮する「リフラックス」のよさを最大限に活かす。つねに芳香が変化する様はバルヴィニーのシングル・カスクと双璧。表現力豊かなクラガンモア。
 それにしても、10年ものをスパニッシュ・オークのシェリー樽、17年ものをアメリカン・オークで熟成するところは非凡。10年であればカスク由来の変化に富む香味の力を借り、17年であればこそカスクによる変化を拒む、ブレンダーの卓越した妙技に感服。

 グレンロッシー '78(ヴィンテージ・モルト)
 クーパーズ・チョイスの一本。オーク・カスクの22年もの、43度のシングル・カスク。
 清々しい白檀の香りが特徴。そのミント香とクリーミーなピート香、フレッシュでドライな喉ごし、麦芽とシェリー香のアクセントを得て、フィニッシュは徐々にスパイシーに。ディスティラリー・ボトルをはじめ、既存のグレンロッシーと比して濃厚な噛み心地と切れ上がりの暖かさは絶妙。
 リンクウッドやロイヤル・ロッホナガーと共にソフィスティケーテッドなウィスキーとして識られる。ヘイグとディンプルの重要な原酒モルトで、ブレンダーの間でも高い評価を受ける。
 クーパーズとは樽職人の意。2001年5月にラベルが一新された。

 ノックドゥー21年(DB)
 オーク・カスクのミディアムボディ、57.5度のカスク・ストレングスにして6200本のリミテッド・エディション。
 74年蒸留のゴードン&マクファイル社のボトルは特に秀逸とされるが、本品も二重丸。アン・ノックのブランドで頒されている現行のモルトと比して、遙かに濃厚でパワフル。完熟林檎や西洋梨の香り、スコッチ・バターの艶のある香り、さらにはナッティーな味わい。クリーミーなラスト・ノートを堪能できる。
 ヘイグのキー・モルトとして、またインヴァー・ハウスの主要モルトとして識られる。2002年に23年ものが二種、57.4度と57.5度がそれぞれ3200本限定でボトリングされている。

 ロイヤル・ロッホナガー '98(ジャン・ボワイエ)
 ベスト・カスク・オブ・スコットランドの一本。シェリーカスクの8年もの、43度。
 ジャン・ボワイエ社はフランスのみならずヨーロッパでも最大級のボトラー。設立は1993年だが、1975年にスコットランドからの輸入をはじめ、1985年にはフランス国内屈指の輸入卸業者に成長、スプリングバンクやボウモアなどの正規代理店になる。現在では数種類のレンジ(ラベル)で総計50種類以上に及ぶ多彩なモルトの品揃えを誇る。それにしても、ボトラーズのロイヤル・ロッホナガーはめずらしい。
 ヴィクトリア女王が愛飲した王室御用達ウィスキー。気稟のよさを感じさせる清冽かつ閑雅な味わい。スムースかつクリーミーなフル・ボディ。ペパーミントのエレガントにして涼やかな香り。フィニッシュはややドライ、暖かみのある切れ上がりが長く続く。VAT69やジョン・ベグ・ブルーキャップの原酒モルト。

 リンリスゴー '82(マキロップ)
 マキロップ・チョイスの一本にして17年もの、61.2度のカスク・ストレングス。シングル・カスク。
 マキロップ社はグラスゴーのインデペンデント・ボトラーにして、中味はセント・マグデラン。ちなみに、リンリスゴーとは蒸留所が在した町の名。セント・マグデラン蒸留所が建てられたのは1765年、一方で創業は1797年ともされる。いずれにせよ、リトルミルやローズバンク等と共に、最古参の蒸留所だったが、1983年に閉鎖、現在ではアパートメントになっている。ストックが尽きた段階で永久に飲めなくなるモルト・ウィスキー。
 ローランドの特徴であるソフトでスムースな飲み口、ニートが似合うミディアム・ボディ。フィニッシュは程良く、スイートからドライへ。後口にごく僅かな苦み。アルコール度数を感じさせないのは充実したボディ、バランスが取れた酒質の高さによる。


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2008年03月21日 23:19に投稿された記事のページです。

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