単車に乗ったときの体感温度は無風で五度、風があると七度は下がるといわれる。先週金曜日の気温は六度、木曜日は四度だった。要するに鉄馬の上ではまだまだ真冬が続いている。しかし、随分と楽になった。橋梁ではまだ膝が震うが、それでも八十キロぐらいは出せるようになった。先週までは六十キロで縮み上がっていた。鉄馬に跨がっての六十キロはあまりにも情けない。
先日、幹郎さんと話していて思ったのだが、老いは脚からではなく、皮膚感覚からやって来る。平成のはじめ、腕も露わに百キロ超で北海道を駈け巡っていたころを思い出す。雨天であろうが颱風であろうが平気だった。と言うよりも、パンツまでぐしょ濡れになって駈けずり回るのが快感だった。
それと海水浴がある。隆君と連れ立って山陰の海辺のキャンプ場へ行った。子供のころから水泳には自信がある。十キロでも二十キロでも遠泳ならお任せだった。それが久美浜のかぶと山キャンプ場で死ぬ思いをさせられた。立ち泳ぎで胸元と脚もとの海水の温度差に身体が悲鳴をあげたのである。爾来、海水浴は避けている。
身体は鍛えた方である。にもかかわらず、このところぎしぎしめりめりと音を立てて崩れてゆく。平気だったことが平左衛門でいられなくなる。神経麻痺でなければ、神経痛でもない。ただただ、寒さに身体が疲弊してゆく。何時になれば百キロで走られるのだろうか、という前に、次の冬は鉄馬に跨がることができるのだろうか。