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オスロスク   一考   

 

 サントリーが売り出したマクレランズ・スペイサイドは2000円ほどの安価なボトルである。「マクレランズ社のエントリー・ブランド。シェリー樽由来の軽く焼いたプリン、クリームプリュレを思わせる香り、スペイサイド特有のフルーティな味わい。フィニッシュはオスロスクやダフタウンのようにふっと消え入るような風情、さて中味はなんでしょう」とかつて書いたが、中味はオスロスクである。サントリーは秘しているが、間違いない。
 他方、シングルトン10年43度の旧ディスティラリー・ボトルについても書いている。「蒸留所名はオスロスク。シェリーとバーボンの古樽を熟成に用いるダブル・マリッジ方式を採用。フル・ボディでまろやか、豊饒な香りを持つ正統派ウィスキー。トフィー、カラメル、シェリー酒等の潤沢なこくと味わい、長いフィニッシュ、溢れんばかりの心地よい刺激、が売りだったが、年々シェリー香は薄れ、かつてのペティキュラや90年代前半の40度ものと比して見る影もなく、2001年夏に絶版、2002年に花と動物シリーズに引き継がれた。大量生産を基とするディスティラリー・ボトルの悪しき典型」

 オスロスク蒸留所の創設は1974年。250エーカーの農地に建てられた広大な蒸留所。既に数々の品評会で受賞し、国際的な名声を得ている。クラガンモアと共に、スペイサイドのよさをすべて備えた銘酒とされる。ブレンデッド・ウィスキー「J&B」のメーカーであるインターナショナル・ディスティラーズ・アンド・ヴィントナーズ(I.D.V)が親会社。同社は1990年代後半にユナイテッド・ディスティラーズ(U.D)社と合併、現在のディアジオ(U.D.V)社である。
 シングル・モルトの発売は1987年より、翌年には日本市場にも登場。75年蒸留の12年ものは熟成の終わりの二年間をシェリー樽で過ごす。現行のラベルと比してメダルの記載がなく、下方ラベルにヴィンテージが印刷されている。10年ものは下方ラベルにエイジングが印刷され、当時のアルコール度数は40度である。
 シングルトン・マルーン10年の前にブルー・ラベルのシングルトン・パティキュラが頒され、下って2002年初頭からシングルトンに代わるディスティラリー・ボトルとしてオスロスクと名付けられたボトルが花と動物シリーズの一本としてリリースされた。同時頒布はストラスミル、グレン・エルギン、グレン・スペイの計四種だったが、それを最後に花と動物シリーズ二十七種は終了した。そして名称は変ったものの香味になんら変化は認められない。
 この変化は認められないというところに問題がある。上述した二点にかかわることだが、オスロスク蒸留所のディスティラリー・ボトルはとにもかくにも不味い。それと比してボトラーズのボトルはいずれもが旨い。
 ちょいと整理してみると、カスク・ストレングスがクライズデール、ケイデンヘッド、ゴードン&マクファイル、ダグラス・マクギボン、ダグラス・レイン、ブラックアダーから。加水タイプがケイデンヘッド、ドナート、マーレー・マクデヴィッド、イアン・マクロード、スコッチ・モルト・セールスから頒されている。
 その内、スコッチ・モルト・セールスからのボトリングはケルティック・クロスとグレン・ヒースの二種。かつて、グレン・マレイを核としたグレン・ヒースと称するピュア・モルト・ウィスキーが頒されていたが、こちらのグレン・ヒースとは全く異なる。オスロスク蒸留所の10年ものシングル・モルト三樽をボトリング、1000本のリミテッド・エディションである。ディスティラリー・ボトルのシングルトンと比してまろやかさで優る。色は淡く、カラメル香もなく、シェリー酒のテイストが濃厚。
 なお、イアン・マクロード社のボトルはメドックやポート・フィニッシュなど手のこんだものが多い。
 ディアジオ社からは上述の花と動物シリーズの一本としてオスロスク12年ものが、そしてレアモルトも一度だけ、28年もの56.8度をボトリングしている。レアモルトは売り切れたが、ダグラス・レイン社の74年蒸留の27年ものはあと一本在庫がある。43.8度のカスク・ストレングス、246本のシングル・カスクであり、レアモルト同様、蒸留所創設の年のボトルである。
 ケイデンヘッド社は89年蒸留の樽を多量に熟成させている。最新のボトルはシェリー・バットの15年もの、59.5度のカスク・ストレングス、636本のリミテッド・エディションである。かつてオーセンティック・コレクションの一本として、オーク・カスクの8年もの、61.4度のカスク・ストレングスを頒しているが、数多いケイデンヘッド社のボトルの中でも特筆ものだった。
 クライズデールのボトルに替わって頒されたのが、ダグラス・マクギボンのボトル。95年蒸留の5年もの、62.3度のカスク・ストレングスである。
 繰り返すが、ディスティラリー・ボトルは不味い。その消息はノックドゥー蒸留所のディスティラリー・ボトル「アンノック」と似ている。ノックドゥーのどこをどうヴァッティングさせれば、あの不味いアンノックに化けるのであろうか。それにしても、マクレランズ・スペイサイドのカスク・コンディションは素晴らしい。至福のひとときを味わうに大枚はいらない。


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2008年01月08日 12:09に投稿された記事のページです。

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