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蔵の中   一考   

 

 さくら さくら さくらが咲いた くらい くらい お蔵に咲いた

 暗い蔵のなかいっぱいに桜の花が咲く、これは戦慄である。そして詩とはなにかを伝えようとするなら、「くらい くらい お蔵に咲いた」と詩うしか手立てはない。相澤さんと話していて上記の歌に至った。曰く、詩人は自分にしか判らない暗号を以て、誰かに伝えようとして書き綴る。同じ暗号を解する、どこかに居るであろう見知らぬ友へ向けて。
 詩人の原風景とは、かくまで冷たく凍りついたものかと思い知る。エロディヤードを口吟んでいた十代の頃を想い起こす。「息めよ。ただわが前に鏡を支へよ」の一節である。冷え冷えとくまなく澄んでいた遠い遠いあの日、憶いだすことすら拒否したくなる日々。恐怖で、蔵のなかを覗くことすらかなわなかった。闇のなかで花開いた狂気、真っ白な狂気が漆黒を填める、満開のさくら。
 それにしても、相澤さんの詩を誰が読み解くのか。彼の失意の深さを知る。


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2007年12月06日 15:11に投稿された記事のページです。

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